DISC1
▪ 英語名 DISC1 ▪ 同義語 Disrupted in schizophrenia 1、Disrupted-In-Schizophrenia 1、Disrupted-in-Schizophrenia-1、Disrupted-in-schizophrenia 1、DISC-1 ▪ 要約 DISC1遺伝子は、染色体1番と11番の間での転座を有する、スコットランドの精神疾患多発家系から見いだされた。この転座によって染色体1番上で2つの遺伝子が破壊されると考えられ、そのうちの1つがDISC1である。DISC1からは複数のアイソフォームが翻訳されるが、主なアイソフォームとして854アミノ酸からなるタンパク質をコードする。DISC1に結合する分子(DISC1 Interactome)として、微小管結合分子やシナプスにおけるシグナル伝達分子など、数多くの分子(GSK3β、NDEL1、PCM1、BBS、Girdin/KIAA1212、PDE4、KAL7、TNIKなど)が報告されている。DISC1は神経系において様々な機能を持つと考えられているが、その代表的な機能として、大脳新皮質や海馬の神経発達や、シナプスの制御が想定されている。 ▪ イントロダクション(背景、歴史的推移など) DISC1遺伝子は、染色体1番と11番の間で均衡型常染色体転座(1;11)(q42.1;q14.3)を遺伝的に有する、スコットランドの精神疾患が集積する家系から見いだされた{St Clair, 1990 #2}{Millar, 2000 #1}。この家系の転座をもつ保因者29名のうち、21名に精神疾患の診断がなされ、そのうち、統合失調症が7名、双極性障害が1名、大うつ病が10名であった{Blackwood, 2001 #3}(Fig. 1)。それに対し、この家系の転座を持たない38名については、5名に精神疾患の診断がなされ、そのうちわけは、1名がアルコール依存、1名は青年期の行為−情緒障害、3名が小うつ病と、精神疾患としては比較的軽度の診断であった{Blackwood, 2001 #3}(Fig. 1)。この家系での転座によって、染色体1番上の遺伝子が2つ破壊されると考えられ、その破壊される遺伝子はDISC1、DISC2と名付けられた{Millar, 2000 #1}。このうち、DISC1は、主なアイソフォームとして854アミノ酸からなるタンパク質をコードする。一方、DISC2はDISC1とは逆方向のノンコーディングRNAをコードする。 なお、この転座は、特定の精神疾患への罹患に直接結びつくのではなく、この転座によって、精神疾患罹患のリスクを高めるエンドフェノタイプが生じると考えられる。実際、この転座を持つ保因者では、同じ家系内の非保因者よりも事象関連電位P300の振幅が有意に低下するとの報告もある{Blackwood, 2001 #3}。