手続き記憶

2016年2月1日 (月) 16:02時点におけるWikiSysop (トーク | 投稿記録)による版

川﨑 伊織
東北大学高次機能障害学
藤井 俊勝
東北福祉大学
DOI:10.14931/bsd.2596 原稿受付日:2016年1月24日 原稿完成日:2016年月日
担当編集委員:田中 啓治(国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:procedural memory

 生物体は様々な種類の情報を記憶しており、それぞれの異なる種類の情報の記憶には別個の記憶システムが働くと考えられている。一般的に長期記憶の内容による区分として、陳述記憶 (同義語に宣言的記憶または顕在記憶がある)と非陳述記憶 (同義語に非宣言的記憶と潜在記憶がある)の2つに大別される[1]。手続き記憶は、意識上に内容を想起できない記憶として非陳述記憶に分類される。非陳述記憶には他に、プライミングや連合学習 (古典的条件付け、オペラント条件付けなど)、非連合学習 (慣れと感作)が含まれる。編集部コメント:こちらには一段落程度で手続き記憶とは何か分かるように、項目全体の内容に対する抄録をお願いいたします。様々の記憶の中での位置付けはイントロへ持って行ってはと思います。

定義

 手続き記憶は、自転車に乗れるようになるとか、うまく楽器の演奏ができるようになるというような記憶で、同じような経験の繰り返しにより獲得される。しかしその情報をいつ、どこで獲得したかについての記憶は消失する。編集部コメント:文献をお願いいたします。

 運動性、知覚性、認知性 (課題解決)の3種が区別されており編集部コメント:それぞれどのようなものか例を挙げ解説していただければと思います。、いずれの場合も意識ではなく、行動に記憶が反映されることが特徴とされている[2]。また記憶が一旦形成されると、意識的な処理を伴わず自動的に機能し、長期間保存されることも特徴の一つとして知られている編集部コメント:文献をお願いいたします。。参考までに、いくつかの辞書に記載されている手続き記憶の辞書的意味を表に載せた (表1)編集部コメント:表1は似た内容の重複で不必要ではないかと思います

表1.手続き記憶の辞書による意味
「有斐閣 心理学辞典 (初版第12刷 2006)」

認知・行動レベルにおける情報処理過程の記憶。

「朝倉書店 脳科学大事典 (初版第1刷 2000)」

継続的な処理様式の記憶で、水泳など運動的なものから暗算など認知的なものまで、いろいろなことができる場合に働く手続きの記憶である。

「医学書院 神経心理学事典 (初版第1刷 2007)」

技能や直接意識できないある種の知識を獲得する際に用いられる記憶過程であり、その存在は行動でしか示すことができない。どのようにするかについての記憶。

「Oxford Dictionary of Psychology (2009)」

一連の操作を行う方法についての情報についての記憶

「The Penguin Dictionary of Psychology (2001)」

精緻に自動化され、意識にのぼらずに実行される手順や複雑な行動についての記憶 (自動車の運転や自転車に乗ることなど)。

神経基盤

 これまでの研究から、手続き記憶には大脳基底核小脳が中心的役割を果たすと考えられている[3]。このことは、エピソード記憶の障害を中心とする健忘症候群のような大脳皮質病変 (例えば、海馬間脳前脳基底部などの障害)を有する疾患では手続き記憶が保たれる一方[4] [5] [6]パーキンソン病ハンチントン病小脳変性症といった大脳基底核疾患・小脳疾患では手続き記憶が障害されることから示唆されている[7] [8]

 またさらに、手続き記憶内において獲得する技能の種類 (運動性技能・知覚性技能・認知性技能)によっても、異なる脳領域の関与が考えられている。例えば、運動性技能は、黒質線条体、小脳、前頭前野補足運動野などの関与が示唆されている。また知覚性技能も同様に黒質―線条体、小脳が重要な役割を担っているとされ、認知性技能に関しても黒質から線条体、その主要な出力先である前頭前野が中心的な役割を果たすと考えられている[2]

編集部コメント:動物実験から得られた知見などについてはどうでしょうか。

関連項目

参考文献

  1. Squire, L.R., & Zola, S.M. (1996).
    Structure and function of declarative and nondeclarative memory systems. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 93(24), 13515-22. [PubMed:8942965] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  2. 2.0 2.1 山鳥重
    記憶の神経心理学
    医学書院、東京、2002, pp. 110-126.
  3. Gazzaniga M, Ivry RB, Mangun GR.
    Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind (Paperback). 4th ed.
    W. W. Norton & Company, New York・London, 2013, pp. 390-391.
  4. Corkin S.
    Acquisition of motor skill after bilateral medial temporal-lobe excision.
    Neuropsychologia. 1968; 6: 255-265.
  5. Cohen, N.J., & Squire, L.R. (1980).
    Preserved learning and retention of pattern-analyzing skill in amnesia: dissociation of knowing how and knowing that. Science (New York, N.Y.), 210(4466), 207-10. [PubMed:7414331] [WorldCat] [DOI]
  6. Cohen, N.J., Eichenbaum, H., Deacedo, B.S., & Corkin, S. (1985).
    Different memory systems underlying acquisition of procedural and declarative knowledge. Annals of the New York Academy of Sciences, 444, 54-71. [PubMed:3860122] [WorldCat] [DOI]
  7. Pascual-Leone, A., Grafman, J., Clark, K., Stewart, M., Massaquoi, S., Lou, J.S., & Hallett, M. (1993).
    Procedural learning in Parkinson's disease and cerebellar degeneration. Annals of neurology, 34(4), 594-602. [PubMed:8215247] [WorldCat] [DOI]
  8. Saint-Cyr, J.A., Taylor, A.E., & Lang, A.E. (1988).
    Procedural learning and neostriatal dysfunction in man. Brain : a journal of neurology, 111 ( Pt 4), 941-59. [PubMed:2969762] [WorldCat] [DOI]