「電位依存性カルシウムチャネル」の版間の差分

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=== Ca<sub>v</sub>2 (N, P/Q, R型)  ===
=== Ca<sub>v</sub>2 (N, P/Q, R型)  ===


 N、P/Q、R型は主に神経系に発現し、神経伝達物質放出を始めとする神経機能を制御する<ref name="ref24"><pubmed>7901765</pubmed></ref><ref name="ref25"><pubmed>7832825</pubmed></ref>。[[活動電位]]が[[シナプス前終末]]に達すると、N、P/Q、R型などのVDCCを介したCa<sup>2+</sup>流入が引き起こされ、神経伝達物質が放出される。シナプス前終末において神経伝達物質放出を効率的に制御するため、[[シナプス小胞]]の[[膜融合]]を制御する[[SNARE]] (soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor ) タンパク質 ([[syntaxin]]、[[SNAP-25]]、[[VAMP/synaptobrevin]])やCa<sup>2+</sup>センサーと考えられている[[synaptotagmin]]、足場タンパク質として働く[[RIM]] ([[Rab]]-3 interacting molecule) ファミリー、CAST、Munc13、Bassoon、Piccoloといったタンパク質群とVDCCは巨大タンパク質複合体である、[[アクティブゾーン]]を形成している。N、P/Q型のα<sub>1</sub>サブユニットのII-IIIリンカーにはアクティブゾーンに存在するタンパク質との相互作用部位 (Synprint&nbsp;; synaptic protein interaction) が保存されており、syntaxinやSNAP-25、CSP (cysteine string protein)、RIM、synaptotagminと相互作用する (図4) <ref name="ref4" /><ref name="ref26"><pubmed>16942804</pubmed></ref>。syntaxinやSNAP-25はsynprint領域を介してVDCCと相互作用し、チャネルの不活性化状態を安定化させることでチャネル活性を抑制することが報告されている<ref name="ref26" />。また、βサブユニットもCASTやRIM、synaptotagminといったアクティブゾーンに存在するタンパク質と相互作用する (図4) <ref name="ref27"><pubmed>22577167</pubmed></ref><ref name="ref28"><pubmed>17496890</pubmed></ref><ref name="ref29"><pubmed>16525042</pubmed></ref>。これらのタンパク質との相互作用は、神経伝達物質放出複合体を形成し、VDCCの機能修飾も担う。RIM1のα型バリアント (RIM1α) はシナプス小胞のRab-3と相互作用する足場タンパク質であることから、VDCCとシナプス小胞の距離を規定する分子である可能性が高い<ref name="ref30"><pubmed>    9252191</pubmed></ref>。4種類のRIM (RIM1~4) はどれもVDCCの不活性化を著しく遅らせることでCa<sup>2+</sup>流入量を増加させる<ref name="ref28" />。このように、VDCCはアクティブゾーンのタンパク質と共役して働くことで、高効率的に神経伝達物質放出やシナプス可塑性を制御すると考えられる。<br>  
 N、P/Q、R型は主に神経系に発現し、神経伝達物質放出を始めとする神経機能を制御する<ref name="ref24"><pubmed>7901765</pubmed></ref><ref name="ref25"><pubmed>7832825</pubmed></ref>。[[活動電位]]が[[シナプス前終末]]に達すると、N、P/Q、R型などのVDCCを介したCa<sup>2+</sup>流入が引き起こされ、神経伝達物質が放出される。シナプス前終末において神経伝達物質放出を効率的に制御するため、[[シナプス小胞]]の[[膜融合]]を制御する[[SNARE]] (soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor ) タンパク質 ([[syntaxin]]、[[SNAP-25]]、[[VAMP/synaptobrevin]])やCa<sup>2+</sup>センサーと考えられている[[synaptotagmin]]、[[足場タンパク質]]として働く[[RIM]] ([[Rab]]-3 interacting molecule) ファミリー、CAST、Munc13、Bassoon、Piccoloといったタンパク質群とVDCCは巨大タンパク質複合体である、[[アクティブゾーン]]を形成している。N、P/Q型のα<sub>1</sub>サブユニットのII-IIIリンカーにはアクティブゾーンに存在するタンパク質との相互作用部位 (Synprint&nbsp;; synaptic protein interaction) が保存されており、syntaxinやSNAP-25、CSP (cysteine string protein)、RIM、synaptotagminと相互作用する (図4) <ref name="ref4" /><ref name="ref26"><pubmed>16942804</pubmed></ref>。syntaxinやSNAP-25はsynprint領域を介してVDCCと相互作用し、チャネルの不活性化状態を安定化させることでチャネル活性を抑制することが報告されている<ref name="ref26" />。また、βサブユニットもCASTやRIM、synaptotagminといったアクティブゾーンに存在するタンパク質と相互作用する (図4) <ref name="ref27"><pubmed>22577167</pubmed></ref><ref name="ref28"><pubmed>17496890</pubmed></ref><ref name="ref29"><pubmed>16525042</pubmed></ref>。これらのタンパク質との相互作用は、神経伝達物質放出複合体を形成し、VDCCの機能修飾も担う。RIM1のα型バリアント (RIM1α) はシナプス小胞のRab-3と相互作用する足場タンパク質であることから、VDCCとシナプス小胞の距離を規定する分子である可能性が高い<ref name="ref30"><pubmed>    9252191</pubmed></ref>。4種類のRIM (RIM1~4) はどれもVDCCの不活性化を著しく遅らせることでCa<sup>2+</sup>流入量を増加させる<ref name="ref28" />。このように、VDCCはアクティブゾーンのタンパク質と共役して働くことで、高効率的に神経伝達物質放出やシナプス可塑性を制御すると考えられる。<br>  


=== Ca<sub>v</sub>3 (T型)<br>  ===
=== Ca<sub>v</sub>3 (T型)<br>  ===


 T型は、一過的にCa<sup>2+</sup>を流入させることで、活動電位の発生パターンを調節する。心臓の洞房結節に存在するペースメーカー細胞における拍動の形成や<ref name="ref31"><pubmed>16690884</pubmed></ref>、[[睡眠]]時の特徴的な[[脳波]]を形成する[[視床]]のリレー細胞における周期的な発火に関わっている<ref name="ref32"><pubmed>9570789</pubmed></ref>。<br> <br>
 T型は、一過的にCa<sup>2+</sup>を流入させることで、活動電位の発生パターンを調節する。心臓の洞房結節に存在するペースメーカー細胞における拍動の形成や<ref name="ref31"><pubmed>16690884</pubmed></ref>、[[睡眠]]時の特徴的な[[脳波]]を形成する[[視床]]のリレー細胞における周期的な発火に関わっている<ref name="ref32"><pubmed>9570789</pubmed></ref>。<br>


== 疾患との関係<br>  ==
== 疾患との関係<br>  ==


 Ca<sub>v</sub>1.1遺伝子 (''CACNA1S'') は、骨格筋の機能不全から発作的な筋力低下症状を示す低カリウム性周期性四肢麻痺、Ca<sub>v</sub>1.2遺伝子 (''CACNA1C'') は、心臓のQT延長や、合指、[[自閉症]]といった症状を示すTimothy症候群の原因遺伝子である<ref name="ref4" /><ref name="ref33"><pubmed>15000527</pubmed></ref>。Ca<sub>v</sub>2.1遺伝子 (''CACNA1A'') は、様々な遺伝子疾患、運動失調を呈する[[脊髄小脳失調症]]6型、家族性偏頭痛1型、発作性小脳失調を呈する反復発作性失調症2型などの原因遺伝子である。また、運動失調や[[てんかん]]症状を呈する変異マウスtottering、leaner、rolling Nagoyaの原因遺伝子でもある<ref name="ref31" />。Ca<sub>v</sub>3.1遺伝子 (''CACNA1G'') は、若年ミオクロニーてんかん、Ca<sub>v</sub>3.2遺伝子 (''CACNA1H'') は、小児欠神てんかんや突発性全般てんかん、また自閉症スペクトラム障害との関連が示唆されている<ref name="ref34"><pubmed>    19071165</pubmed></ref>。<br>  
 Ca<sub>v</sub>1.1遺伝子 (''CACNA1S'') は、骨格筋の機能不全から発作的な筋力低下症状を示す低カリウム性周期性四肢麻痺、Ca<sub>v</sub>1.2遺伝子 (''CACNA1C'') は、心臓のQT延長や、合指、[[自閉症]]といった症状を示すTimothy症候群の原因遺伝子である<ref name="ref4" /><ref name="ref33"><pubmed>15000527</pubmed></ref>。Ca<sub>v</sub>2.1遺伝子 (''CACNA1A'') は、様々な遺伝子疾患、運動失調を呈する[[脊髄小脳失調症]]6型、家族性偏頭痛1型、発作性小脳失調を呈する反復発作性失調症2型などの原因遺伝子である。また、運動失調や[[てんかん]]症状を呈する変異マウスtottering、leaner、rolling Nagoyaの原因遺伝子でもある<ref name="ref31" />。Ca<sub>v</sub>3.1遺伝子 (''CACNA1G'') は、若年ミオクロニーてんかん、Ca<sub>v</sub>3.2遺伝子 (''CACNA1H'') は、小児欠神てんかんや突発性全般てんかん、また自閉症スペクトラム障害との関連が示唆されている<ref name="ref34"><pubmed>    19071165</pubmed></ref>。<br><br>


== その他のCa<sup>2+</sup>チャネル<br>  ==
== その他のCa<sup>2+</sup>チャネル<br>  ==
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