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英語名:Nissl staining | 英語名:Nissl staining | ||
{{box|text=ニッスル染色は、塩基性色素を用いた[[wj:粗面小胞体|粗面小胞体]]や[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]に親和性が高い[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]組織染色法で、神経組織の染色に用いられる。[[大脳皮質]]や[[海馬]]の[[錐体細胞]]、[[小脳]]の[[プルキンエ細胞]]、[[脊髄]]や[[脳幹]]の[[運動ニューロン]]など、大型[[投射ニューロン]]の[[wj:ポリゾーム|ポリゾーム]]細胞質が顆粒状に強く染色される。この特性は、ニューロンの高いタンパク質合成能と関連している。}} | |||
==ニッスル染色とは== | |||
[[image:ニッスル染色.jpg|thumb|250px|'''図.ニッスル染色'''<br>紫に濃染するニッスル小体が観察される<br>([[前庭神経核]]の大型ニューロン)]] | |||
ニッスル染色は、粗面小胞体やポリゾームに親和性が高い組織染色法で、神経組織の染色に用いられる。 | |||
[[ | ニューロンが、塩基性色素で特異的に染色されることを最初に示したのは、ドイツの[[w:Franz Nissl|フランツ・ニッスル]]フランツ・ニッスルである。19世紀末、[[wj:ミュンヘン大学|ミュンヘン大学]]の医学生であったニッスルは、病理学教授の出した懸賞論文「大脳皮質の神経細胞の病的変化」で一等を獲得し、ニッスルの考案した染色法により染め出される[[ニッスル小体]]([[虎斑物質]])をニューロンの特性の1つと考えた。20世紀の半ばに[[wj:電子顕微鏡|電子顕微鏡]]が登場し、ニッスル小体は粗面小胞体の集まりであることが明らかとなった。 | ||
ニッスル染色液という固有の染色剤があるのではなく、[[wj:クレシルバイオレット|クレシルバイオレット]]、[[wj:トルイジンブルー|トルイジンブルー]]、[[wj:チオニン|チオニン]]などの[[wj:塩基性アニリン色素|塩基性アニリン色素]]が用いる染色の総称がニッスル染色である。ニッスル染色を施すと、特に大脳皮質や海馬の錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞、脊髄や脳幹の運動ニューロンなど、大型投射ニューロンの細胞質が顆粒状に強く染色される(図を参照)。また、ニッスル染色に[[髄鞘]]を染める[[ルクソールファストブルー]]と組み合わせた[[クリューバー・バレラ染色]]も頻用される。 | |||
==細胞学的背景== | |||
ニッスル染色でニューロンが濃染されるという細胞特性は、ニューロンの高いタンパク質合成能と関連している。他の細胞と異なり、ニューロンは[[軸索]]という長い突起を有している。このため、同じ直径の細胞であっても、ニューロンの場合は、細胞体の占める体積は全体積の一部に過ぎない。特に、太い軸索を遠くまで投射する大型ニューロンでは、軸索の体積は細胞体体積の数十倍から数百倍に及ぶ。しかし、[[リボゾーム]]が存在しない軸索では、タンパク質合成を行うことができない。これは、ニューロンの細胞体は、他の体細胞の数十倍から数百倍のタンパク質合成を行ない、軸索での情報伝達や代謝に必要なタンパク質を軸索輸送により供給していることを意味する。これが、粗面小胞体やポリゾームがニューロンで著明に発達している理由であり、塩基性アニリン色素で濃染される原因となる。 | |||
一方、活発なタンパク質合成には[[wj:ATP|ATP]]の大量消費を伴う。さらに、[[情報伝達]]に不可欠な[[イオンチャネル]]などの折りたたみの難しい巨大タンパク質の大量合成は小胞体にさらなる負荷をかけ、生じた異常蛋白の修復にもエネルギーが消費される。このようなタンパク質合成に伴う細胞への代謝的負荷を[[小胞体ストレス]]とよび、[[虚血]]や[[パーキンソン病]]などの病態における神経細胞死の原因となる。情報伝達に特殊化したニューロンが背負った宿命ともいえる。 | |||
==関連項目== | |||
*[[ニッスル小体]] | |||
==参考文献== | |||
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