「オリゴデンドロサイト」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/katsuhikoono 小野 勝彦]</font><br>
''京都府立医科大学''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年3月30日 原稿完成日:2012年5月6日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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英語:oligodendrocyte 独:Oligodendrozyt 仏:oligodendrocyte
英語:oligodendrocyte 独:Oligodendrozyt 仏:oligodendrocyte


同義語:稀突起膠細胞
同義語:稀突起膠細胞


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 オリゴデンドロサイトは中枢神経系内の[[グリア細胞]]の一つで、[[ミエリン]](髄鞘)形成を担う。オリゴデンドロサイトは、ミエリン形成により[[跳躍伝導]]を誘導し[[活動電位]]の伝導速度を高めることが主な機能である。中枢神経系全体に広く分布するが、存在する場所によって[[白質]]内のものはintrafascicular oligodendrocyte(束間オリゴデンドロサイト)、[[灰白質]]内に位置して[[ニューロン]]の[[細胞体]]と密着しているものはperineuronal oligodendrocyte(衛星オリゴデンドロサイトもしくは傍神経オリゴデンドロサイト)に分けられる。ミエリンを形成しないオリゴデンドロサイトで神経細胞とコンタクトを持っている物は、ニューロンの代謝にかかわると考えられている<ref name=ref1><pubmed>20846325</pubmed></ref>。
 オリゴデンドロサイトは中枢神経系内の[[グリア細胞]]の一つで、[[ミエリン]](髄鞘)形成を担う。オリゴデンドロサイトは、ミエリン形成により[[跳躍伝導]]を誘導し[[活動電位]]の伝導速度を高めることが主な機能である。中枢神経系全体に広く分布するが、存在する場所によって[[白質]]内のものはintrafascicular oligodendrocyte(束間オリゴデンドロサイト)、[[灰白質]]内に位置して[[ニューロン]]の[[細胞体]]と密着しているものはperineuronal oligodendrocyte(衛星オリゴデンドロサイトもしくは傍神経オリゴデンドロサイト)に分けられる。ミエリンを形成しないオリゴデンドロサイトで神経細胞とコンタクトを持っている物は、ニューロンの代謝にかかわると考えられている<ref name=ref1><pubmed>20846325</pubmed></ref>。
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== 歴史 ==
== 歴史 ==


[[image:図1 成体マウスの脳で見られるオリゴデンドロサイト.png|thumb|300px|'''図1 成体マウスの脳で見られるオリゴデンドロサイト''']]
[[image:図1 成体マウスの脳で見られるオリゴデンドロサイト.png|thumb|300px|'''図1.成体マウスの脳で見られるオリゴデンドロサイト''']]


 オリゴデンドロサイトは、[[wikipedia:es:P%C3%ADo_del_R%C3%ADo_Hortega|Pio Del Rio-Hortega]] が、炭酸銀法と呼ばれる[[鍍銀染色]]法を開発して見出した。当時、すでにニューロンと[[アストロサイト]]は見つかっており、アストロサイトより少ない突起を持つグリア細胞という意味で名前が付けられた<ref name=ref2>'''工藤佳久'''<br>脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092<br>''技術評論社'', 2011</ref><ref name=ref3>'''Verkhratsky A, and Butt A.'''<br>Glial Neurobiology, a textbook.<br>''Wiley'', 2007</ref>。現在では、発見されていた当時に考えられていたより多くの突起を持つことが明らかにされている(図1)。
 オリゴデンドロサイトは、[[wikipedia:es:P%C3%ADo_del_R%C3%ADo_Hortega|Pio Del Rio-Hortega]] が、炭酸銀法と呼ばれる[[鍍銀染色]]法を開発して見出した。当時、すでにニューロンと[[アストロサイト]]は見つかっており、アストロサイトより少ない突起を持つグリア細胞という意味で名前が付けられた<ref name=ref2>'''工藤佳久'''<br>脳とグリア細胞 知りたいサイエンス092<br>''技術評論社'', 2011</ref><ref name=ref3>'''Verkhratsky A, and Butt A.'''<br>Glial Neurobiology, a textbook.<br>''Wiley'', 2007</ref>。現在では、発見されていた当時に考えられていたより多くの突起を持つことが明らかにされている(図1)。
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=== 微細形態 ===  
=== 微細形態 ===  


[[image:図2 成体マウス脊髄で見られるオリゴデンドロサイト(OL)とアストロサイト(AS).png|thumb|300px|'''図2 成体[[wikipedia:ja:マウス|マウス]][[脊髄]]で見られるオリゴデンドロサイト(OL)とアストロサイト(AS)'''<br>OLのは、ミエリンと連続性があり、また電子密度も高い。ASには[[中間系フィラメント]]が含まれている(矢頭)。下は、OLの細胞質の拡大。層板状の[[粗面小胞体]]と腔のやや広い[[Golgi装置]]がみられる。]]
[[image:図2 成体マウス脊髄で見られるオリゴデンドロサイト(OL)とアストロサイト(AS).png|thumb|300px|'''図2.成体[[wikipedia:ja:マウス|マウス]][[脊髄]]で見られるオリゴデンドロサイト(OL)とアストロサイト(AS)'''<br>OLのは、ミエリンと連続性があり、また電子密度も高い。ASには[[中間系フィラメント]]が含まれている(矢頭)。下は、OLの細胞質の拡大。層板状の[[粗面小胞体]]と腔のやや広い[[Golgi装置]]がみられる。]]


 電子顕微鏡観察に基づく典型的なオリゴデンドロサイトは、細胞質も[[wikipedia:JA:核|核]]も電子密度が高く暗調である(図2)。ゴルジ装置、粗面小胞体、[[微小管]]はよく発達しており(図1B)、[[中心体#構造および性質|中心小体]]がみられることもある。しかし、アストロサイトでみられる[[wikipedia:JA:グリコーゲン|グリコーゲン]]顆粒や中間系フィラメントは、オリゴデンドロサイトは持たないとされている。オリゴデンドロサイトには、ミエリンを形成しないものがあることやミエリンを形成していても、細胞体から離れたところに位置するため、ミエリンの有無は必ずしも微細形態上の特徴とはならない。核内の異染色質および正染色質ともに暗調であること、粗面小胞体が層板状に見られること、ゴルジ装置は比較的大きい腔を持つことなどが形態的特徴である(図2B)。一方、ミエリン形成を始めたばかりのオリゴデンドロサイトは、電子密度は低く明調である<ref name=ref6>'''Peters A, Palay SL, Webster H de F'''<br>Fine structure of the nervous system. 3rd ed., <br>[[Oxford Univ. Press]], 1991</ref><ref name=ref7>'''森司郎'''<br>稀突起膠細胞、小膠細胞.「神経:人体組織学8」(橋本、山元 編)<br>''朝倉書店'', 1984, pp117-132.</ref>。
 電子顕微鏡観察に基づく典型的なオリゴデンドロサイトは、細胞質も[[wikipedia:JA:核|核]]も電子密度が高く暗調である(図2)。ゴルジ装置、粗面小胞体、[[微小管]]はよく発達しており(図1B)、[[中心体#構造および性質|中心小体]]がみられることもある。しかし、アストロサイトでみられる[[wikipedia:JA:グリコーゲン|グリコーゲン]]顆粒や中間系フィラメントは、オリゴデンドロサイトは持たないとされている。オリゴデンドロサイトには、ミエリンを形成しないものがあることやミエリンを形成していても、細胞体から離れたところに位置するため、ミエリンの有無は必ずしも微細形態上の特徴とはならない。核内の異染色質および正染色質ともに暗調であること、粗面小胞体が層板状に見られること、ゴルジ装置は比較的大きい腔を持つことなどが形態的特徴である(図2B)。一方、ミエリン形成を始めたばかりのオリゴデンドロサイトは、電子密度は低く明調である<ref name=ref6>'''Peters A, Palay SL, Webster H de F'''<br>Fine structure of the nervous system. 3rd ed., <br>[[Oxford Univ. Press]], 1991</ref><ref name=ref7>'''森司郎'''<br>稀突起膠細胞、小膠細胞.「神経:人体組織学8」(橋本、山元 編)<br>''朝倉書店'', 1984, pp117-132.</ref>。


=== 突起の数 ===  
=== 突起の数 ===  
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<references />
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(執筆者:小野勝彦 担当編集委員:村上富士夫)