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<font size="+1">佐藤 啓介、[http://researchmap.jp/nana 寺田 純雄]</font><br> | <font size="+1">佐藤 啓介、[http://researchmap.jp/nana 寺田 純雄]</font><br> | ||
''東京医科歯科大学 医歯薬学総合研究科 神経機能形態学分野''<br> | ''東京医科歯科大学 医歯薬学総合研究科 神経機能形態学分野''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年10月31日 原稿完成日:2014年4月28日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | ||
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{{box|text= | {{box|text= | ||
MAP2は、[[wj:脊椎動物|脊椎動物]]の[[ニューロン]]に豊富に存在する[[微小管]]結合タンパク質である。古典的MAPs(Microtubule Associated | MAP2は、[[wj:脊椎動物|脊椎動物]]の[[ニューロン]]に豊富に存在する[[微小管]]結合タンパク質である。古典的MAPs(Microtubule Associated Proteins)、もしくは構造的MAPsと呼ばれる一群の微小管結合タンパク質のグループに属する。MAP2遺伝子にコードされ、複数の[[wj:スプライシング変異体|スプライシング変異体]]が存在する。MAP2自身の微小管への直接的な作用および他のタンパク質を微小管にリクルートすることによる間接的な作用により、微小管の重合状態や構造安定性を調節する機能を持つ考えられている。[[神経前駆細胞]]から[[分化]]すると発現し始め、成熟したニューロンでは[[軸索]]には殆ど存在せず[[樹状突起]]と[[細胞体]]にほぼ特異的に局在する。}} | ||
{{PBB|geneid=4133}} | {{PBB|geneid=4133}} | ||
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哺乳類には少なくともMAP2A、B、C、Dの4つのスプライシング変異体が存在する<ref><pubmed> 15642108 </pubmed></ref>。MAP2AとMAP2Bは高分子量でそれぞれ280 kDaと270 kDa、MAP2CとMAP2Dは低分子量でそれぞれ70 kDaと75 kDaである<ref><pubmed> 18473367 </pubmed></ref>。C末端領域は微小管結合領域を持ち、それより上流はprojection domainと呼ばれる(図参照)。高分子量MAP2と低分子量MAP2の大きさの違いは、主にprojection domainの長さの違いによる。 | 哺乳類には少なくともMAP2A、B、C、Dの4つのスプライシング変異体が存在する<ref><pubmed> 15642108 </pubmed></ref>。MAP2AとMAP2Bは高分子量でそれぞれ280 kDaと270 kDa、MAP2CとMAP2Dは低分子量でそれぞれ70 kDaと75 kDaである<ref><pubmed> 18473367 </pubmed></ref>。C末端領域は微小管結合領域を持ち、それより上流はprojection domainと呼ばれる(図参照)。高分子量MAP2と低分子量MAP2の大きさの違いは、主にprojection domainの長さの違いによる。 | ||
微小管結合領域は、[[リン酸化]]部位となるKXGS | 微小管結合領域は、[[リン酸化]]部位となるKXGS motifを含む微小管結合反復配列を持つ。そのすぐN末端側に[[プロリン]]に富む領域(Proline-rich domain; PRD)がある。殆どの領域は[[wj:二次構造|二次構造]]を形成しないと考えられているが、N末端に存在する[[cAMP依存性タンパク質リン酸化酵素]] (protein kinase A, [[PKA]])の調節サブユニットとの結合部位は両親媒性の[[へリックス]]を形成する<ref><pubmed> 12535652 </pubmed></ref>。 | ||
==発現と局在== | ==発現と局在== | ||
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===細胞内局在=== | ===細胞内局在=== | ||
成熟したニューロンでは、MAP2は[[樹状突起]]と[[細胞体]]にほぼ特異的に局在し、[[軸索]]には殆ど存在しない。このため、[[免疫染色]] | 成熟したニューロンでは、MAP2は[[樹状突起]]と[[細胞体]]にほぼ特異的に局在し、[[軸索]]には殆ど存在しない。このため、[[免疫染色]]などで樹状突起を軸索と区別するマーカーとしてよく用いられる。ただし発生初期段階のニューロンにおいて、MAP2Cは細胞体と樹状突起に加えて軸索にも存在する<ref><pubmed> 8341422 </pubmed></ref>。 | ||
ニューロンのマーカーとして使用されるが、ニューロン以外にも下垂体後葉の[[星状膠細胞]]([[astrocyte]])や発現量は低いが[[希突起膠細胞]]([[oligodendrocyte]])にも発現がみられる<ref><pubmed> 11955719 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 9082959 </pubmed></ref>。また神経系以外でも[[wj:精巣|精巣]]、[[wj:卵巣|卵巣]]などにも発現する <ref><pubmed> 8924511 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 15056665 </pubmed></ref>。 | |||
==機能== | ==機能== | ||
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===ノックアウトマウス=== | ===ノックアウトマウス=== | ||
個体レベルでのMAP2の機能については、MAP2のノックアウトマウスが作製、解析されている<ref name=ref11581286 ><pubmed> 11581286 </pubmed></ref><ref name=ref12163474 ></ref>。MAP2ノックアウトマウスでは脳の形態に異常は見られなかったが、[[海馬]]ニューロンの樹状突起の短縮や小脳[[プルキンエ細胞]]の樹状突起における微小管の密度の低下が観察された。ただし、このノックアウトマウスでは、失われたMAP2の機能が機能的重複を持つ他の古典的MAPsで補償されている可能性がある。これを支持する知見として、古典的MAPsの一つ[[MAP1B]]を同時にノックアウトしたMAP2MAP1Bダブルノックアウトマウスでは、出生後間もなく致死となり、脳の[[層構造]]の形成や神経突起の伸長に異常が見られるなど、MAP2やMAP1Bの単独ノックアウトマウスと比べて重篤な障害を呈したと報告されている<ref name=ref11581286 ></ref>。 | |||
==関連項目== | ==関連項目== |