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 また、コネクトームに関係したプロジェクトは大きな研究費と多くの研究者の存在が必要となり、そのデータの取得と公開が神経科学者などのコミュニティに広く有用であるため、米国では[[National Brain Observatory]](国立脳天文台)設立の提案がなされている<ref><pubmed>26481036</pubmed></ref>。[[w:Argonne National Laboratory|Argonne National Laboratory]](イリノイ州)などにそのような組織を作ることが計画され始めている<ref>http://www.sciencemag.org/news/2015/10/neuroscientist-team-calls-national-brain-observatory</ref>。  
 また、コネクトームに関係したプロジェクトは大きな研究費と多くの研究者の存在が必要となり、そのデータの取得と公開が神経科学者などのコミュニティに広く有用であるため、米国では[[National Brain Observatory]](国立脳天文台)設立の提案がなされている<ref><pubmed>26481036</pubmed></ref>。[[w:Argonne National Laboratory|Argonne National Laboratory]](イリノイ州)などにそのような組織を作ることが計画され始めている<ref>http://www.sciencemag.org/news/2015/10/neuroscientist-team-calls-national-brain-observatory</ref>。  


 このようなコネクトームのデータは、脳科学、神経科学全般の基礎研究情報として、ヒトと動物の脳の働き、神経回路の構造と機能の理解のために広く利用されることになる<ref name=seung /><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)'''<br>The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists<br> ''Princeton University Press'', 2014, ISBN 069116276X</ref>。
 このようなコネクトームのデータは、脳科学、神経科学全般の基礎研究情報として、ヒトと動物の脳の働き、神経回路の構造と機能の理解のために広く利用されることになる。


 特に、医学領域では、[[認知症]]、[[うつ病]]、[[統合失調症]]を含めた[[精神疾患|精神]]・神経疾患、[[自閉症]]などの[[発達障害]]、神経組織の損傷などに伴う様々な病態や症状の理解の基礎データにもなる。将来はこれらの疾患の客観的な診断への活用が注目されている。そして遺伝子情報を活用した[[精密医療]]とともに、有効な治療法の開発と個々の患者への適用にも貢献するであろう。
 特に、医学領域では、[[認知症]]、[[うつ病]]、[[統合失調症]]を含めた[[精神疾患|精神]]・神経疾患、[[自閉症]]などの[[発達障害]]、神経組織の損傷などに伴う様々な病態や症状の理解の基礎データにもなる。将来はこれらの疾患の客観的な診断への活用が注目されている。そして遺伝子情報を活用した[[精密医療(precision medicine)]]<ref>https://www.nih.gov/precision-medicine-initiative-cohort-program</ref>とともに、有効な治療法の開発と個々の患者への適用にも貢献するであろう。


 更に、脳を神経回路の仕組みを模倣した人工知能の開発のための基礎情報としても役立つと思われる。コネクトームの知見を活用することで、[[心理学]]、[[言語学]]、経済学、商業、犯罪、保険、教育、政治、芸術、倫理学などのヒトの脳活動が関係した分野に、神経回路の観点から、これまでにない概念が提供されることも考えられ、その社会的な影響も大きいとの予想もある。
 更に、脳を神経回路の仕組みを模倣した人工知能の開発のための基礎情報としても役立つと思われる。コネクトームの知見を活用することで、[[心理学]]、[[言語学]]、経済学、商業、犯罪、保険、教育、政治、芸術、倫理学などのヒトの脳活動が関係した分野に、神経回路の観点から、これまでにない概念が提供されることも考えられ、その社会的な影響も大きいとの予想もある<ref name=seung /><ref>'''Gary Marcus, Jeremy Freeman (Eds), May-Britt Moser, Edvard I. Moser (Contributors)'''<br>The Future of the Brain: Essays by the World's Leading Neuroscientists<br> ''Princeton University Press'', 2014, ISBN 069116276X</ref>。


 コネクトームの情報をどのように利用していくのか、その是非を含めて、社会の広い分野での議論の必要性が高まってきている。
 コネクトームの情報をどのように利用していくのか、その是非を含めて、社会の広い分野での議論の必要性が高まってきている。