「視覚系の発生」の版間の差分

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<ref name="ref9"><pubmed>22704732</pubmed></ref>  
<ref name="ref9"><pubmed>22704732</pubmed></ref>  


[[Image:10 視覚系の発生.png|thumb|280px|<b>図10.網膜細胞の分化に関わる様々な転写因子</b><br />マウス網膜では最初に神経節細胞が形成され(胎生11日から)、最後にミューラーグリア細胞が形成される(胎生16日から)。文献<ref name=ref9 />の図を改変。]]
[[Image:10 視覚系の発生.png|thumb|280px|<b>図10.網膜細胞の分化に関わる様々な転写因子</b><br />マウス網膜では最初に神経節細胞が形成され(胎生11日から)、最後にミュラーグリア細胞が形成される(胎生16日から)。文献<ref name=ref9 />の図を改変。]]


 神経網膜から様々な形態と機能をもった網膜細胞が分化するしくみの解明は、1980年代後半の網膜細胞系譜に関する研究にさかのぼる。すなわち、神経網膜の細胞である[[網膜前駆細胞]][[retinal progenitor cells]] ([[RPCs]])は、[[wikipedia:ja:多分化能|多分化能]]をもっており(multipotent)、全ての網膜細胞がRPCsから分化することが、[[wikipedia:ja:レトロウイルス|レトロウイルス]]や[[wikipedia:ja:蛍光|蛍光]]物質を用いた細胞標識法により明らかにされた。網膜細胞分化には、細胞外からの因子(extrinsic factors)と細胞内の自律的なしくみ(intrinsic factors)の両方が重要であることは、他の細胞や組織の発生分化と同様である。網膜細胞分化を左右する細胞自律的なしくみとして、様々な転写調節因子が同定されている(図10)。[[BHLH因子|塩基性ヘリックスループヘリックス]] ([[basic-helix-loop-helix]], [[bHLH]])、[[ホメオドメイン]] ([[homeodomain]])、[[フォークヘッド]] ([[forkhead]])などのモチーフをもつものが多い。
 神経網膜から様々な形態と機能をもった網膜細胞が分化するしくみの解明は、1980年代後半の網膜細胞系譜に関する研究にさかのぼる。すなわち、神経網膜の細胞である[[網膜前駆細胞]][[retinal progenitor cells]] ([[RPCs]])は、[[wikipedia:ja:多分化能|多分化能]]をもっており(multipotent)、全ての網膜細胞がRPCsから分化することが、[[wikipedia:ja:レトロウイルス|レトロウイルス]]や[[wikipedia:ja:蛍光|蛍光]]物質を用いた細胞標識法により明らかにされた。網膜細胞分化には、細胞外からの因子(extrinsic factors)と細胞内の自律的なしくみ(intrinsic factors)の両方が重要であることは、他の細胞や組織の発生分化と同様である。網膜細胞分化を左右する細胞自律的なしくみとして、様々な転写調節因子が同定されている(図10)。[[BHLH因子|塩基性ヘリックスループヘリックス]] ([[basic-helix-loop-helix]], [[bHLH]])、[[ホメオドメイン]] ([[homeodomain]])、[[フォークヘッド]] ([[forkhead]])などのモチーフをもつものが多い。
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| Sox2  
| Sox2  
| [[ミュラーグリア細胞]]、網膜[[アストロサイト]]
| [[Müllerグリア細胞]]、網膜[[アストロサイト]]
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| [[nestin]]  
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<br>  網膜細胞形成retinogenesisは、[[魚類]]や[[両生類]]において生涯にわたっておこり、その細胞の供給は[[毛様体辺縁部]](ciliary marginal zone: CMZ)(図5)と呼ばれる周辺部網膜からなされる。魚類では、中心部網膜の[[Müllerグリア]]系の細胞から[[桿体]][[視細胞]]が付加的に形成されることから、Müller(ミューラー)グリア細胞も動物や環境によって網膜前駆細胞に変化すると考えられている。鳥類もCMZ類似の増殖性周辺部網膜をもつが、孵化後2-3週間までに細胞分裂しなくなり、分化する網膜神経細胞の種類も限られている。マウスのCMZ様領域の細胞は、グリア細胞または後期分化型網膜細胞([[双極細胞]]、桿体)にのみ分化し、生後1週間までにこの能力は失われ、生後2週間までに網膜細胞形成が見られなくなる。2000年に、成体[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]の分化した[[毛様体]][[色素上皮]]が、培養下で高い増殖能力を持って網膜前駆細胞様に脱分化して、様々な網膜神経細胞に分化できることが報告された。その後研究が進み、毛様体以外にも様々な眼の細胞が、[[増殖因子]]添加や創傷時など、いろいろな条件下で脱分化して網膜神経細胞へと分化できることがわかった(表4)<ref name="ref10" />。  
<br>  網膜細胞形成retinogenesisは、[[魚類]]や[[両生類]]において生涯にわたっておこり、その細胞の供給は[[毛様体辺縁部]](ciliary marginal zone: CMZ)(図5)と呼ばれる周辺部網膜からなされる。魚類では、中心部網膜の[[Müllerグリア]]系の細胞から[[桿体]][[視細胞]]が付加的に形成されることから、Müller(ミュラー)グリア細胞も動物や環境によって網膜前駆細胞に変化すると考えられている。鳥類もCMZ類似の増殖性周辺部網膜をもつが、孵化後2-3週間までに細胞分裂しなくなり、分化する網膜神経細胞の種類も限られている。マウスのCMZ様領域の細胞は、グリア細胞または後期分化型網膜細胞([[双極細胞]]、桿体)にのみ分化し、生後1週間までにこの能力は失われ、生後2週間までに網膜細胞形成が見られなくなる。2000年に、成体[[wikipedia:ja:齧歯類|齧歯類]]の分化した[[毛様体]][[色素上皮]]が、培養下で高い増殖能力を持って網膜前駆細胞様に脱分化して、様々な網膜神経細胞に分化できることが報告された。その後研究が進み、毛様体以外にも様々な眼の細胞が、[[増殖因子]]添加や創傷時など、いろいろな条件下で脱分化して網膜神経細胞へと分化できることがわかった(表4)<ref name="ref10" />。  


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