「物体探索」の版間の差分

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===物体の永続性===
===物体の永続性===
 指標が注視時間か探索行動かによる遂行成績の不一致は、永続性の概念についての一連の研究においても議論となった<ref>'''J・ ヴォークレール 著 明和政子 監訳/鈴木光太郎 訳'''<br>乳幼児の発達 運動・知覚・認知<br>''新曜社(東京)'':2012</ref> <ref>''''U・ゴスワミ 著 岩男 卓実, 上淵 寿, 古池 若葉, 富山 尚子, 中島 伸子訳'''<br>子どもの認知発達<br>''新曜社(東京)'':2003</ref>。物体認知発達心理学者であるPiaget(1896年-1980年)は、ヒトの誕生から2年間の期間を感覚運動段階と呼び、この期間に乳幼児は自己の運動と外界に存在する物体との関係を学習していくと考えた。その代表的な認知として物体の永続性(object permanence)が挙げられる。永続性とは物体が見えなくなっても存在し続けることの認知であり、隠された物体の探索行動が生じる場合に永続性が確立されたとみなされる。この物体探索行動は発達とともに段階的に変化していく。誕生から2カ月までは物体が視界から消えても反応しない。4カ月から8カ月の乳児では物体が視界から消えると驚く反応を見せるものの探索行動は生じない。しかし、8カ月から12ケ月の乳児では、布や衝立で隠された物体を積極的に探索するようになる。したがって、物体の永続性の概念の獲得には1年程度を要するのであると考えられた。ところが、注視時間を指標とするBaillargeonの実験「跳ね橋実験」<ref>'''R Baillargeon'''<br>Object permanence in 3 l/2- and 4 l/2-month-old Infants.<br>''Developmental Psychology'':1987,23,655-664</ref>では、物体の永続性の認知そのものは3.5カ月で獲得されることが示された。この実験では、物体とそれに向かって移動する衝立の映像が“ありえる条件”と“ありえない条件”の2条件で提示され、それぞれに対する注視時間が測定された。“ありえる条件”では、衝立が物体にぶつかって止まるのに対して、“ありえない条件”では衝立が物体を通り越して移動を続ける。3.5カ月齢の乳児において“ありえない条件”での注視時間が“ありえる条件”よりも長くなったことから、3.5カ月ですでに物体が存在し続けるという永続性の認知が可能であることを示している。したがって、物体の永続性の認知と消えた物体に対する探索行動の発現の時期は必ずしも対応するわけでない。
 指標が注視時間か探索行動かによる遂行成績の不一致は、永続性の概念についての一連の研究において議論となった<ref>'''J・ ヴォークレール 著 明和政子 監訳/鈴木光太郎 訳'''<br>乳幼児の発達 運動・知覚・認知<br>''新曜社(東京)'':2012</ref> <ref>''''U・ゴスワミ 著 岩男 卓実, 上淵 寿, 古池 若葉, 富山 尚子, 中島 伸子訳'''<br>子どもの認知発達<br>''新曜社(東京)'':2003</ref>。物体認知発達心理学者であるPiaget(1896年-1980年)は、ヒトの誕生から2年間の期間を感覚運動段階と呼び、この期間に乳幼児は自己の運動と外界に存在する物体との関係を学習していくと考えた。その代表的な認知として物体の永続性(object permanence)が挙げられる。永続性とは物体が見えなくなっても存在し続けることの認知であり、隠された物体の探索行動が生じる場合に永続性が確立されたとみなされる。この物体探索行動は発達とともに段階的に変化していく。誕生から2カ月までは物体が視界から消えても反応しない。4カ月から8カ月の乳児では物体が視界から消えると驚く反応を見せるものの探索行動は生じない。しかし、8カ月から12ケ月の乳児では、布や衝立で隠された物体を積極的に探索するようになる。したがって、物体の永続性の概念の獲得には1年程度を要するのであると考えられた。ところが、注視時間を指標とするBaillargeonの実験「跳ね橋実験」<ref>'''R Baillargeon'''<br>Object permanence in 3 l/2- and 4 l/2-month-old Infants.<br>''Developmental Psychology'':1987,23,655-664</ref>では、物体の永続性の認知そのものは3.5カ月で獲得されることが示された。この実験では、物体とそれに向かって移動する衝立の映像が“ありえる条件”と“ありえない条件”の2条件で提示され、それぞれに対する注視時間が測定された。“ありえる条件”では、衝立が物体にぶつかって止まるのに対して、“ありえない条件”では衝立が物体を通り越して移動を続ける。3.5カ月齢の乳児において“ありえない条件”での注視時間が“ありえる条件”よりも長くなったことから、3.5カ月ですでに物体が存在し続けるという永続性の認知が可能であることを示している。したがって、物体の永続性の認知と消えた物体に対する探索行動の発現の時期は必ずしも対応するわけでない。


===探索エラー===
===探索エラー===
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