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Hidemimisawa (トーク | 投稿記録) 細 (2015年3月26日加筆部分の表記を既存部分と統一させました。) |
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0127493/?lang=japanese 三澤 日出巳]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0127493/?lang=japanese 三澤 日出巳]</font><br> | ||
''慶應義塾大学 薬学部''<br> | ''慶應義塾大学 薬学部''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年1月15日 原稿完成日:2013年7月22日 原稿改訂日:2017年9月20日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター) | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター) | ||
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nicotinic acetylcholine receptor; nAChR | nicotinic acetylcholine receptor; nAChR | ||
陽イオン選択性の[[イオンチャネル内蔵型受容体]]であり、アセチルコリンやニコチンが結合すると、ごく短時間(ミリ秒単位)にNa<sup>+</sup>, K<sup>+</sup>, Ca<sup>2+</sup>などのイオン透過性が亢進する。nAChRは、神経筋接合部、自律神経節、副腎髄質、中枢神経系などに分布する。ニコチン受容体は、類似構造をもつ複数サブユニットが会合した5量体として機能する。様々な動物種で、α (α1〜10), β (β1〜4), γ, δ, εの17種類のサブユニットが存在し、それらの組み合わせにより骨格筋型(Nm)と神経型(Nn)に大別される。骨格筋型nAChRはα1が2個, β1, δ, γ(またはε) が各1個の5量体からなる。神経型nAChRは、αとβからなるヘテロ5量体、あるいは同一のαからなるホモ5量体の構造をとるが、サブユニット構成により高度に多様性に富み、それぞれ独自のチャネル特性を持つとされる。1つのnAChRには2分子のアセチルコリンが結合してチャネルを開口させる。[[パンクロニウム]]、[[ベクロニウム]]などのNmを遮断する薬物は筋弛緩薬である。[[バレニクリン]] | 陽イオン選択性の[[イオンチャネル内蔵型受容体]]であり、アセチルコリンやニコチンが結合すると、ごく短時間(ミリ秒単位)にNa<sup>+</sup>, K<sup>+</sup>, Ca<sup>2+</sup>などのイオン透過性が亢進する。nAChRは、神経筋接合部、自律神経節、副腎髄質、中枢神経系などに分布する。ニコチン受容体は、類似構造をもつ複数サブユニットが会合した5量体として機能する。様々な動物種で、α (α1〜10), β (β1〜4), γ, δ, εの17種類のサブユニットが存在し、それらの組み合わせにより骨格筋型(Nm)と神経型(Nn)に大別される。骨格筋型nAChRはα1が2個, β1, δ, γ(またはε) が各1個の5量体からなる。神経型nAChRは、αとβからなるヘテロ5量体、あるいは同一のαからなるホモ5量体の構造をとるが、サブユニット構成により高度に多様性に富み、それぞれ独自のチャネル特性を持つとされる。1つのnAChRには2分子のアセチルコリンが結合してチャネルを開口させる。[[パンクロニウム]]、[[ベクロニウム]]などのNmを遮断する薬物は筋弛緩薬である。[[バレニクリン]]はnAChRの部分作動薬で、[[依存症#ニコチン|ニコチン依存症]]に対する[[wj:禁煙補助薬|禁煙補助薬]]として用いられる。重症筋無力症では、筋肉型nAChRに対する自己抗体の産生が報告されている。 | ||
=== ムスカリン性アセチルコリン受容体 === | === ムスカリン性アセチルコリン受容体 === | ||
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アセチルコリンは、[[wikipedia:ja:真性細菌|真性細菌]]などの[[wikipedia:ja:原核生物|原核生物]]を始めとして、ほぼすべての生物での存在が報告されている<ref name=ref14><pubmed>17363003</pubmed></ref>。植物では水や[[wikipedia:ja:電解質|電解質]]、栄養物質などの輸送に関与するとされるが、その生理的役割は不明な点が多い。[[wikipedia:ja:タケノコ|タケノコ]]の先端部には、[[wikipedia:ja:哺乳動物|哺乳動物]]の脳をはるかに超える量のアセチルコリンが含まれている<ref name=ref15><pubmed>12559395</pubmed></ref>。 | アセチルコリンは、[[wikipedia:ja:真性細菌|真性細菌]]などの[[wikipedia:ja:原核生物|原核生物]]を始めとして、ほぼすべての生物での存在が報告されている<ref name=ref14><pubmed>17363003</pubmed></ref>。植物では水や[[wikipedia:ja:電解質|電解質]]、栄養物質などの輸送に関与するとされるが、その生理的役割は不明な点が多い。[[wikipedia:ja:タケノコ|タケノコ]]の先端部には、[[wikipedia:ja:哺乳動物|哺乳動物]]の脳をはるかに超える量のアセチルコリンが含まれている<ref name=ref15><pubmed>12559395</pubmed></ref>。 | ||
[[ヒト]]を含めた[[哺乳動物]]では、様々な非神経細胞や組織でアセチルコリンの合成と放出が確認されている。このうち、[[wikipedia:ja:免疫|免疫]]系細胞、[[wikipedia:ja:血管内皮細胞|血管内皮細胞]]、[[wikipedia:ja:胎盤|胎盤]]、[[wikipedia:ja:ケラチノサイト|ケラチノサイト]]、[[wikipedia:ja:気道上皮細胞|気道上皮細胞]]、[[wikipedia:ja:消化管上皮細胞|消化管上皮細胞]]、[[wikipedia:ja:膀胱上皮細胞|膀胱上皮細胞]]などでは、神経系とは独立した非神経性アセチルコリンが局所の[[細胞間情報伝達]]を担うことが報告されている<ref name=ref16><pubmed> | [[ヒト]]を含めた[[哺乳動物]]では、様々な非神経細胞や組織でアセチルコリンの合成と放出が確認されている。このうち、[[wikipedia:ja:免疫|免疫]]系細胞、[[wikipedia:ja:血管内皮細胞|血管内皮細胞]]、[[wikipedia:ja:胎盤|胎盤]]、[[wikipedia:ja:ケラチノサイト|ケラチノサイト]]、[[wikipedia:ja:気道上皮細胞|気道上皮細胞]]、[[wikipedia:ja:消化管上皮細胞|消化管上皮細胞]]、[[wikipedia:ja:膀胱上皮細胞|膀胱上皮細胞]]などでは、神経系とは独立した非神経性アセチルコリンが局所の[[細胞間情報伝達]]を担うことが報告されている<ref name=ref16><pubmed>28552584</pubmed></ref>。 | ||
== コリン作動性抗炎症反応 == | |||
cholinergic anti-inflammatory pathway | |||
迷走神経の刺激 (vagal nerve stimulation; VNS) により誘導される全身性の抗炎症反応のこと。 | |||
迷走神経には、中枢神経系の情報を末梢臓器に伝える遠心性の副交感神経と、末梢臓器からの感覚情報を中枢神経系に伝える求心性の[[内臓知覚神経]]が走行している。[[齧歯類]]では、迷走神経の実験的切断は敗血症による炎症やショックによる致死率を高めること、電気的にVNSを行うことで[[wj:敗血症|敗血症]]、[[wj:関節リウマチ|関節リウマチ]]、[[wj:炎症腸疾患|炎症腸疾患]]などの疾患モデルでの[[wj:炎症性サイトカイン|炎症性サイトカイン]] ([[wj:TNFα|TNFα]]や[[wj:IL-6|IL-6]]など)の産生が著明に抑制されて病状が緩解することが報告されている<ref name=ref17><pubmed>27059884</pubmed></ref>。この反応経路には、AChと[[α7 ニコチン性アセチルコリン受容体]]が必要であることから”コリン作動性“と呼ばれているが、そのメカニズムは不明な点が多い。 | |||
なお医療現場では、[[迷走神経刺激装置]]VNSシステムは難治性[[てんかん]]や[[うつ病]]の治療法として承認され、すでに各国で多くの臨床実績をもつ。その有用性は高いとされるが、メカニズムは完全には解明されていない。 | |||
==関連項目 == | ==関連項目 == |