「コネクトーム」の版間の差分

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 そして、1990年代になると、[[蛍光顕微鏡]]に加えて、[[共焦点レーザー顕微鏡]]が普及し始め、デジタル画像として大規模なデータの保存と解析が行われるようになった。コネクトーム研究の観点から、このような組織学的解剖と染色によって得られた知見をまとめた重要な研究が、1991年、FellemanとDavid van Essenらによる[[マカクサル]]の[[視覚系]]の結合性マッピングの概念の提出であった<ref><pubmed>1822724</pubmed></ref><ref><pubmed>1734518</pubmed></ref>。
 そして、1990年代になると、[[蛍光顕微鏡]]に加えて、[[共焦点レーザー顕微鏡]]が普及し始め、デジタル画像として大規模なデータの保存と解析が行われるようになった。コネクトーム研究の観点から、このような組織学的解剖と染色によって得られた知見をまとめた重要な研究が、1991年、FellemanとDavid van Essenらによる[[マカクサル]]の[[視覚系]]の結合性マッピングの概念の提出であった<ref><pubmed>1822724</pubmed></ref><ref><pubmed>1734518</pubmed></ref>。


 このような研究手法は、[[w:Allen_Institute_for_Brain_Science#Allen_Mouse_Brain_Connectivity_Atlas|Allen Mouse Brain Connectivity Atlas]]([[wj:アレン脳科学研究所|Allen Brain Institute]])、[http://www.mouseconnectome.org/ Mouse Connectome Project] ([[wj:南カリフォルニア大学|南カリフォルニア大学]])、マカクサルの[http://cocomac.g-node.org/ CoCoMac](ドイツ)などで、まとめられているようなコネクトーム収集プロジェクトにつながっている。これらは、神経系の解剖学的知見と組織学的研究を組み合わせたものであり、解像度的には&micro;mからサブ&micro;mレベルの'''「メソスケール Mesoscale」'''のコネクトームの情報となっている。このレベルのコネクトーム構築のもう一つのアプローチとしては、このような形態学的なアプローチとともに、電気生理学的アプローチ、更に[[光遺伝学]]、神経活動を間接的あるいは直接的に観察する細胞、組織レベルのアプローチ([[カルシウム]]、[[活動電位]]、血流変化など)もある。しかし、現時点では、これらの方法論の多くは、大規模アプローチとしては適さず、局所的な回路に焦点を当てているか、あくまで予備的な解釈に用いられているのが現状である。
 このような研究手法は、[[w:Allen_Institute_for_Brain_Science#Allen_Mouse_Brain_Connectivity_Atlas|Allen Mouse Brain Connectivity Atlas]]([[wj:アレン脳科学研究所|Allen Brain Institute]])、[http://www.mouseconnectome.org/ Mouse Connectome Project] ([[wj:南カリフォルニア大学|南カリフォルニア大学]])、マカクサルの[http://cocomac.g-node.org/ CoCoMac](ドイツ)などで、まとめられているようなコネクトーム収集プロジェクトにつながっている。これらは、神経系の解剖学的知見と組織学的研究を組み合わせたものであり、解像度的には&micro;mからサブ&micro;mレベルの'''「メソスケール Mesoscale」'''のコネクトームの情報となっている。このレベルのコネクトーム構築のもう一つのアプローチとしては、このような形態学的なアプローチとともに、生理学的アプローチもある(「細胞レベルのコネクトームとコネクトミクス 生理学的方法」の項参考)。しかし、現時点では、生理学的アプローチの多くは、大規模アプローチとしては適さず、局所的な回路に焦点を当てているか、あくまで予備的な解釈に用いられているのが現状である。


 メソスケールのコネクトーム情報は、神経線維の走行や終末部位についての情報を大雑把に収集したものであり、[[シナプス]]レベルでの'''「ミクロスケール Microscale」'''の神経細胞間の結合性を記述したものではない。[[化学シナプス]]および[[電気シナプス]]を形態的に観察するためには、ナノメーターレベルの解像度がある[[電子顕微鏡]]が必要である。
 メソスケールのコネクトーム情報は、神経線維の走行や終末部位についての情報を大雑把に収集したものであり、[[シナプス]]レベルでの'''「ミクロスケール Microscale」'''の神経細胞間の結合性を記述したものではない。[[化学シナプス]]および[[電気シナプス]]を形態的に観察するためには、ナノメーターレベルの解像度がある[[電子顕微鏡]]が必要である。


 電子顕微鏡レベルで、ほぼ完全なコネクトーム解読に成功したのは、[[wj:シドニー・ブレンナー|Sydney Brenner]]の大学院生であったJohn Whiteらによる線虫''Caenorhabditis elegans''の神経系である(1986年)<ref><pubmed>22462104</pubmed></ref>。線虫の場合、体のサイズが小型で、神経細胞の数が少なく(雌雄同体で302個)、その結合性も個体差が少なくステレオタイプである(75%再現性があると言われる)ので、コネクトームの構築が可能であった。一方、神経系のサイズが大きく、非常に多くの細胞と、その結合性に多様性がある脊椎動物の神経系のコネクトームの構築は極めて困難である。
 電子顕微鏡レベルで、ほぼ完全なコネクトーム解読に成功したのは、[[wj:シドニー・ブレンナー|Sydney Brenner]]の大学院生であったJohn Whiteらによる線虫''Caenorhabditis elegans''の神経系である(1986年)<ref><pubmed>22462104</pubmed></ref>。線虫の場合、体のサイズが小型で、神経細胞の数が少なく(雌雄同体で302個)、その結合性も個体差が少なくステレオタイプである(75%再現性があると言われる<ref><pubmed>21304930</pubmed></ref>)ので、コネクトームの構築が可能であった。一方、神経系のサイズが大きく、非常に多くの細胞と、その結合性に多様性がある脊椎動物の神経系のコネクトームの構築は極めて困難である。


 ミクロスケールなコネクトーム構築には、電子顕微鏡で観察するための多数の連続切片を失うことなく作製し、撮影し、その画像を保存し、結合性を解析していくための技術開発が行われてきている(後述)。その結果、[[マウス]][[網膜]]、[[ショウジョウバエ]]視覚系、マウス[[大脳]][[視覚野]]の部分的なコネクトームなどが構築された。これらの情報を総合的に収集しているのは、[http://www.openconnectomeproject.org/ Open Connectome project]である。
 ミクロスケールなコネクトーム構築には、電子顕微鏡で観察するための多数の連続切片を失うことなく作製し、撮影し、その画像を保存し、結合性を解析していくための技術開発が行われてきている(後述)。その結果、[[マウス]][[網膜]]、[[ショウジョウバエ]]視覚系、マウス[[大脳]][[視覚野]]の部分的なコネクトームなどが構築された。これらの情報を総合的に収集しているのは、[http://www.openconnectomeproject.org/ Open Connectome project]である。

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