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=== リポキシゲナーゼ経路 === | === リポキシゲナーゼ経路 === | ||
リポキシゲナーゼ (LOX)経路では、遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるLOXにより複数の[[ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸]](Hydroperoxyeicosatetraenoic acid; HpETE)に変換され、さらに酵素的・非酵素的な反応を介して[[ロイコトリエン]](leukotriene)や[[ヒドロキシエイコサテトラエン酸]](Hydroxyeicosatetraenoic acid; HETE)などの多様な生理活性脂質に変換される<ref name=Funk2001><pubmed>11729303</pubmed></ref><ref name=Back2014><pubmed>24588652</pubmed></ref><ref name=Ghosh2016><pubmed>27542570</pubmed></ref> 。 | |||
主には[[12-LOX]]や[[15-LOX]]を介して[[8-HpETE]]、[[12-HpETE]]、[[15-HpETE]]が産生され、[[5-LOX]]と[[5-lipoxygenase-activating protein]] (FLAP)を介して[[5-HpETE]]が産生される。5-HpETEは速やかに脱水反応により[[LTA4]]となり、LTA4は[[LTA4加水分解酵素]](LTA4 hydrolase)により速やかに[[LTB4]]を生ずるか、[[LTC4合成酵素]](LTC4 synthase)により[[LTC4]]を生ずる。LTC4はさらに[[LTD4]]、[[LTE4]]になる。LTA4を産生する酵素を持たない細胞でも、近傍の細胞からLTA4の供給を受けて、LTC4を産生する場合がある。この現象を[[細胞間生合成経路]](transcellular biosynthesis)と呼ぶ。 | |||
LTA4・LTB4とLTC4・LTD4・LTE4は、[[システイン]]残基の有無により構造が大きく異なることから、作用する受容体も異なる。[[BLT1受容体|BLT1]]と[[BLT2受容体|BLT2]]はLTA4・LTB4をリガンドとするGタンパク質共役型受容体として同定された。しかし、BLT1の親和性がBLT2に比してはるかに高く、BLT2には親和性のはるかに高い[[12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸]] (12-hydroxyheptadecatrienoic acid; 12-HHT)というリガンドが存在する<ref name=Yokomizo2015><pubmed>25480980</pubmed></ref> 。 | |||
LTC4・LTD4・LTE4からなる[[システィニルロイコトリエン]](cysteinyl leukotrienes; Cys-LT)は主に[[CysLT受容体]]の[[CysLT受容体I型|I型]]([[CysLT1R]])と[[CysLT受容体II型|II型]]([[CysLT2R]])に結合して作用を発揮する。 | |||
ロイコトリエンは、[[好中球]]の[[走化性]]・[[凝集]]・[[細胞接着]]・[[脱顆粒化]]、平滑筋収縮、血管の透過性や収縮の調節、粘液分泌の増強、[[免疫制御]]、[[炎症性疼痛]]、[[喘息]]、[[アレルギー性鼻炎]]、[[アレルギー性結膜炎]]、[[アトピー性皮膚炎]]、[[嚢胞性線維症]]、[[慢性閉塞性肺疾患]]、[[糸球体腎炎]]、[[麻痺性関節炎]]、[[乾癬]]、[[炎症性腸疾患]]、[[間質性肺疾患]]などの様々な生理的機能や疾患に関与する。また、ロイコトリエンは、脳損傷、[[多発性硬化症]]、[[アルツハイマー病]]、[[パーキンソン病]]、[[ハンチントン舞踏病]]、てんかん、[[うつ]]、加齢など多様な脳疾患との関連が示唆されている<ref name=Ghosh2016><pubmed>27542570</pubmed></ref> 。 | |||
ロイコトリエンの生合成や作用については、他の総説もご参照いただきたい<ref name=Funk2001><pubmed>11729303</pubmed></ref><ref name=Back2014><pubmed>24588652</pubmed></ref><ref name=Ghosh2016><pubmed>27542570</pubmed></ref> 。 | |||
=== エポキシゲナーゼ経路 === | === エポキシゲナーゼ経路 === |