「アラキドン酸」の版間の差分

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=== エポキシゲナーゼ経路 ===
=== エポキシゲナーゼ経路 ===
 エポキシゲナーゼ(EOX)経路では、遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより複数のHETEやエポキシエイコサトリエン酸(Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換され、さらにEETはエポキシド加水分解酵素(epoxide hydrolase; EH)により多様なジヒドロキシエイコサトリエン酸(dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換される<ref name=Spector2015b><pubmed>25093613</pubmed></ref><ref name=Arita2012><pubmed>22923733</pubmed></ref> 。EETは、血管拡張、血管新生制御、抗炎症作用、さらに虚血再灌流への保護作用を有することが報告されている。しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明な点が多い。
 エポキシゲナーゼ(EOX)経路では、遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより複数の[[HETE]]や[[エポキシエイコサトリエン酸]](Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換され、さらにEETは[[エポキシド加水分解酵素]](epoxide hydrolase; EH)により多様な[[ジヒドロキシエイコサトリエン酸]](dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換される<ref name=Spector2015b><pubmed>25093613</pubmed></ref><ref name=Arita2012><pubmed>22923733</pubmed></ref>


 脳機能との関連では、ラットの[[洞毛|ひげ]]刺激に伴う感覚野での機能性充血がEOXの二つの異なる阻害薬であるMS-PPOHとmiconazoleにより阻害される<ref name=Peng2002><pubmed>12384482</pubmed></ref> 。一方、神経細胞の過興奮に続く抑制が次第に広がるcortical spreading depressionの病態のモデルとして、アストロサイトでのCa<sup>2+</sup>上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究が行われており、この脳血管収縮がPLA2を阻害するMAFPや、血管収縮活性を持つ20-HETEの生合成酵素であるEOXの一種CYP4Aを阻害するHET0016の処置により消失することが示されている<ref name=Mulligan2004><pubmed>15356633</pubmed></ref> 。
 EETは、血管拡張、[[血管新生]]制御、[[抗炎症作用]]、さらに虚血再灌流への保護作用を有することが報告されている。しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明な点が多い。
 
 脳機能との関連では、ラットの[[洞毛|ひげ]]刺激に伴う[[感覚野]]での機能性充血がEOXの二つの異なる阻害薬である[[MS-PPOH]]と[[ミコナゾール]]により阻害される<ref name=Peng2002><pubmed>12384482</pubmed></ref> 。一方、神経細胞の[[過興奮]]に続く抑制が次第に広がる[[cortical spreading depression]]の病態のモデルとして、[[アストロサイト]]でのCa<sup>2+</sup>上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究が行われており、この脳血管収縮がPLA2を阻害する[[MAFP]]や、血管収縮活性を持つ[[20-HETE]]の生合成酵素であるEOXの一種[[CYP4A]]を阻害する[[HET0016]]の処置により消失することが示されている<ref name=Mulligan2004><pubmed>15356633</pubmed></ref> 。


 これらの研究は、神経活動に伴う脳血管制御へのEOX代謝物の関与を示唆するが、いずれも薬理学的な解析に留まっており、受容体同定を含めた作用機序の解明が不可欠である。
 これらの研究は、神経活動に伴う脳血管制御へのEOX代謝物の関与を示唆するが、いずれも薬理学的な解析に留まっており、受容体同定を含めた作用機序の解明が不可欠である。

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