「到達運動」の版間の差分

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この領域は頭頂間溝の背側の表面に出ている領域で、中心後回の最も後ろの5野の一部分に相当する。腕の初期位置からのベクトルで運動の方向を表現することから、手先中心座標の表現がある(Bremner & Andersen, 2012)。ニューロン活動に関して、時系列で情報量解析すると、感覚フィードバックを表現するものと[[遠心性コピー]](運動指令のコピー)/[[遠心性コピー|随伴発射]](予測された感覚フィードバック)を表現しているものに分類されるという研究もある(Mulliken et al., 2008)。また、ターゲットの突然の変更による到達運動の軌道修正の際に、その軌道のモニターに関わっている活動も認められる(Archambault et al., 2015)。PEは、[[一次運動野]]との直接の結合も見られることから、運動をモニターしながら運動指令の修正に関わると考えられる。実際、5野のニューロンは、計画された運動と行われた運動の間の内在的なエラーとターゲットと指先の間のエラーの両方が表現することが明らかになっている(Inoue & Kitazawa, 2018)。
この領域は頭頂間溝の背側の表面に出ている領域で、中心後回の最も後ろの5野の一部分に相当する。腕の初期位置からのベクトルで運動の方向を表現することから、手先中心座標の表現がある(Bremner & Andersen, 2012)。ニューロン活動に関して、時系列で情報量解析すると、感覚フィードバックを表現するものと[[遠心性コピー]](運動指令のコピー)/[[遠心性コピー|随伴発射]](予測された感覚フィードバック)を表現しているものに分類されるという研究もある(Mulliken et al., 2008)。また、ターゲットの突然の変更による到達運動の軌道修正の際に、その軌道のモニターに関わっている活動も認められる(Archambault et al., 2015)。PEは、[[一次運動野]]との直接の結合も見られることから、運動をモニターしながら運動指令の修正に関わると考えられる。実際、5野のニューロンは、計画された運動と行われた運動の間の内在的なエラーとターゲットと指先の間のエラーの両方が表現することが明らかになっている(Inoue & Kitazawa, 2018)。


=====''V6A''=====
=====''[[空間知覚|V6A]]''=====
この領域の到達運動ニューロンも、運動の方向や奥行きにも反応選択性を示す。視覚反応も、対側の空間に視覚受容野を持ち、全体として視野の周辺部までカバーする(Galletti et al., 2003)。視覚[[受容野]]は、眼球位置によって影響を受けず、頭部中心座標系における位置情報を表現しているニューロンが認められる(Galletti et al., 1993)。さらに、腕の固有感覚や皮膚感覚など体性感覚刺激に反応するニューロンが認められている。また、近年、この領域で到達運動に関わるニューロン以外に把持運動に関連するニューロン活動が記録されている(Galletti & Fattori, 2017)。これらのニューロンは、到達運動と把持運動の協調的制御を行っていると考えられる。
この領域の到達運動ニューロンも、運動の方向や奥行きにも反応選択性を示す。視覚反応も、対側の空間に視覚受容野を持ち、全体として視野の周辺部までカバーする(Galletti et al., 2003)。視覚[[受容野]]は、眼球位置によって影響を受けず、頭部中心座標系における位置情報を表現しているニューロンが認められる(Galletti et al., 1993)。さらに、腕の固有感覚や皮膚感覚など体性感覚刺激に反応するニューロンが認められている。また、近年、この領域で到達運動に関わるニューロン以外に把持運動に関連するニューロン活動が記録されている(Galletti & Fattori, 2017)。これらのニューロンは、到達運動と把持運動の協調的制御を行っていると考えられる。


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====SLF-IIIによって結ばれる領域====
====SLF-IIIによって結ばれる領域====
[[腹側運動前野]](F4)と頭頂間溝の底部にある[[空間知覚|VIP]]は、SLF-IIIによって結合しており、いずれも身体のある部分の体性感覚受容野とともに、そのすぐ近くの身体周辺空間(ペリパーソナルスペース)に視覚の受容野を持ち、手の届く範囲の身体部分中心座標を表現している(Fogassi et al., 1996; Duhamel et al., 1998)。また[[腹側運動前野]]F5と頭頂間溝の外側壁の{{空間知覚|AIP]]のを結ぶ回路は、主に把持運動に関わっているが、把持運動の対象物の空間的な場所によって、ニューロンの活動が変化することがわかっている。
[[腹側運動前野]](F4)と頭頂間溝の底部にある[[空間知覚|VIP]]は、SLF-IIIによって結合しており、いずれも身体のある部分の体性感覚受容野とともに、そのすぐ近くの身体周辺空間(ペリパーソナルスペース)に視覚の受容野を持ち、手の届く範囲の身体部分中心座標を表現している(Fogassi et al., 1996; Duhamel et al., 1998)。また[[腹側運動前野]]F5と頭頂間溝の外側壁の{{空間知覚|AIP]]のを結ぶ回路は、主に把持運動に関わっているが、把持運動の対象物の空間的な場所によって、ニューロンの活動が変化することがわかっている。
=====''[[腹側運動前野]](F4)''=====
F4には、到達運動に関わるニューロンが見つかっている(Gentilucci et al., 1988)、また向かってくる物体を避けるような運動(手を伸ばして避ける)に関わる(Graziano & Cooke, 2006)。また、視覚情報がある方向に偏位するようなプリズムメガネをかけて到達運動したときに、学習によって適応する課題(プリズム適応)において、感覚情報そのものを表現する活動や運動のゴール(適応後もゴールの位置は変化していない)に依存する活動がkurata 2002が存在する。Inoueらはさらに、腹側運動前野の到達運動ニューロンが、到達運動の結果のエラーを表現することが明らかにした。小脳とともに適応学習に関わると考えられる。
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