「エンドカンナビノイド」の版間の差分

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| IUPACName = (5''Z'',8''Z'',11''Z'',14''Z'')-''N''-(2-hydroxyethyl)icosa-5,8,11,14-tetraenamide
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| OtherNames = ''N''-arachidonoylethanolamine<!-- amine is actually correct here, despite pubchem (see talk page) --><br>arachidonoylethanolamide
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| IUPACName = 1,3-Dihydroxy-2-propanyl (5Z,8Z,11Z,14Z)-5,8,11,14-eicosatetraenoate
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| OtherNames = 2-AG, 2-arachidonoylglycerol
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同義語:内因性カンナビノイド  
同義語:内因性カンナビノイド  


 エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)とは生体内で作られる[[カンナビノイド受容体]]のリガンドの総称である。[[wikipedia:ja:大麻|大麻]]草(学名:''Cannabis sativa'')に含まれる生理活性成分の総称名[[カンナビノイド]]に対して内因性のカンナビノイドであることから名付けられた。いわゆる脳内[[マリファナ]]類似物質である。主要なものとして[[アナンダミド]]と[[2—アラキドノイルグリセロール]](2-AG)があり、どちらも[[アラキドン酸]]を含む脂質性の物質である(図1)。  
 エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)とは生体内で作られる[[カンナビノイド受容体]]のリガンドの総称である。[[wikipedia:ja:大麻|大麻]]草(学名:''Cannabis sativa'')に含まれる生理活性成分の総称名[[カンナビノイド]]に対して内因性のカンナビノイドであることから名付けられた。いわゆる脳内[[マリファナ]]類似物質である。主要なものとして[[アナンダミド]]と[[2-アラキドノイルグリセロール]](2-AG)があり、どちらも[[アラキドン酸]]を含む脂質性の物質である(図1)。  


[[Image:Yukihashimotodani fig 1.jpg|thumb|right|300px|'''図1.エンドカンナビノイドの構造''']]
[[Image:Yukihashimotodani fig 1.jpg|thumb|right|300px|'''図1.エンドカンナビノイドの構造''']]
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== 種類  ==
== 種類  ==


 初めに発見されたエンドカンナビノイドはアナンダミド(またはN-アラキドノイルエタノールアミド)で1992年に[[wikipedia:ja:ブタ|ブタ]]の脳から抽出・同定された<ref><pubmed>1470919</pubmed></ref>。アナンダミド(anandamide)という名は[[wikipedia:ja:サンスクリット|サンスクリット]]語で「至福」を意味するanandaから取られた。2番目のエンドカンナビノイドとして1995年に[[wikipedia:ja:イヌ|イヌ]]の腸および[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]の脳から2-AGが同定された<ref><pubmed>7605349</pubmed></ref><ref><pubmed>7575630</pubmed></ref>。この他にも、[[ノラジンエーテル]]、[[''N''-アラキドノイルドーパミン]]など数種類がエンドカンナビノイドとして報告されているが生理的に機能しているかどうか明らかでない。現在のところアナンダミドと2-AGが生理的に主要なエンドカンナビノイドと考えられている。脳内の含有量は2-AGがアナンダミドに対しておよそ数十から数百倍多い。アナンダミドはカンナビノイド受容体以外にも[[バニロイド受容体]]のアゴニストとしても働くため、[[エンドバニロイド]]としても知られる。  
 初めに発見されたエンドカンナビノイドはアナンダミド(またはN-アラキドノイルエタノールアミド)で1992年に[[wikipedia:ja:ブタ|ブタ]]の脳から抽出・同定された<ref><pubmed>1470919</pubmed></ref>。アナンダミド(anandamide)という名は[[wikipedia:ja:サンスクリット|サンスクリット]]語で「至福」を意味するanandaから取られた。2番目のエンドカンナビノイドとして1995年に[[wikipedia:ja:イヌ|イヌ]]の腸および[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]の脳から2-AGが同定された<ref><pubmed>7605349</pubmed></ref><ref><pubmed>7575630</pubmed></ref>。この他にも、[[ノラジンエーテル]]、[[N-アラキドノイルドーパミン|''N''-アラキドノイルドーパミン]]など数種類がエンドカンナビノイドとして報告されているが生理的に機能しているかどうか明らかでない。現在のところアナンダミドと2-AGが生理的に主要なエンドカンナビノイドと考えられている。脳内の含有量は2-AGがアナンダミドに対しておよそ数十から数百倍多い。アナンダミドはカンナビノイド受容体以外にも[[バニロイド受容体]]のアゴニストとしても働くため、[[エンドバニロイド]]としても知られる。  


== 生合成と分解  ==
== 生合成と分解  ==
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=== アストロサイトを介した経路  ===
=== アストロサイトを介した経路  ===


 ニューロンから放出されたエンドカンナビノイドは直接ニューロンのCB1受容体に作用するだけでなく[[アストロサイト]]のCB1受容体にも作用し、[[シナプス伝達]]を調節することが最近明らかになってきた。アストロサイトのCB1受容体の活性化によってアストロサイトから[[グルタミン酸]]が放出されシナプス前終末、あるいはシナプス後部の[[グルタミン酸受容体]]([[NMDA受容体]]または代謝型グルタミン酸受容体)を活性化し[[シナプス可塑性]]を引き起こすことが海馬や大脳皮質で報告されている<ref><pubmed>20920795</pubmed></ref><ref><pubmed>22385967</pubmed></ref><ref><pubmed>22446881</pubmed></ref>。  
 ニューロンから放出されたエンドカンナビノイドは直接ニューロンのCB1受容体に作用するだけでなく[[アストロサイト]]のCB1受容体にも作用し、[[シナプス伝達]]を調節することが最近明らかになってきた。アストロサイトのCB1受容体の活性化によってアストロサイトから[[グルタミン酸]]が放出されシナプス前終末、あるいはシナプス後部の[[グルタミン酸受容体]]([[NMDA型グルタミン酸受容体]]または代謝活性型グルタミン酸受容体)を活性化し[[シナプス可塑性]]を引き起こすことが海馬や大脳皮質で報告されている<ref><pubmed>20920795</pubmed></ref><ref><pubmed>22385967</pubmed></ref><ref><pubmed>22446881</pubmed></ref>。  


=== TRPV1依存性LTD  ===
=== TRPV1依存性LTD  ===


 海馬歯状回、[[側座核]]、[[分界条床核]]の興奮性シナプスにおいてアナンダミドが仲介するLTDが報告されている<ref><pubmed>21076423</pubmed></ref><ref><pubmed>21076424</pubmed></ref><ref><pubmed>22057189</pubmed></ref>。シナプス後部で作られたアナンダミドが細胞外に放出されずに、細胞内でシナプス後部のTRPV1を活性化することで引き起こされる。TRPV1を介した細胞内へのカルシウム流入が引き金となって[[AMPA受容体]]のエンドサイトーシスが起こると考えられている。  
 海馬歯状回、[[側座核]]、[[分界条床核]]の興奮性シナプスにおいてアナンダミドが仲介するLTDが報告されている<ref><pubmed>21076423</pubmed></ref><ref><pubmed>21076424</pubmed></ref><ref><pubmed>22057189</pubmed></ref>。シナプス後部で作られたアナンダミドが細胞外に放出されずに、細胞内でシナプス後部のTRPV1を活性化することで引き起こされる。TRPV1を介した細胞内へのカルシウム流入が引き金となって[[AMPA型グルタミン酸受容体]]のエンドサイトーシスが起こると考えられている。  


== 2-AGかアナンダミドか  ==
== 2-AGかアナンダミドか  ==

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