16,039
回編集
細 (→疾患との関わり) |
細編集の要約なし |
||
7行目: | 7行目: | ||
| ImageSize1 = 200px | | ImageSize1 = 200px | ||
| ImageName1 = Ball-and-stick model of the zwitterion | | ImageName1 = Ball-and-stick model of the zwitterion | ||
| | | SystematicName = 2-Aminopentanedioic acid | ||
| OtherNames = | | OtherNames = 2-Aminoglutaric acid | ||
| Section1 = {{Chembox Identifiers | | Section1 = {{Chembox Identifiers | ||
| UNII_Ref = {{fdacite|correct|FDA}} | | UNII_Ref = {{fdacite|correct|FDA}} | ||
36行目: | 36行目: | ||
| MeltingPt = 199 °C decomp. | | MeltingPt = 199 °C decomp. | ||
| Solubility = 8.64 g/l (25 °C) <ref>http://hazard.com/msds/mf/baker/baker/files/g3970.htm</ref> | | Solubility = 8.64 g/l (25 °C) <ref>http://hazard.com/msds/mf/baker/baker/files/g3970.htm</ref> | ||
| SolubleOther = 0.00035g/100g ethanol 25 degC <ref>http://books.google.ch/books?id=xteiARU46SQC&pg=PA15&lpg=PA15&dq=methionine+solubility+in+ethanol&source=bl&ots=HzHueOPPoB&sig=KjMXxDNgjSvG1CddED9lfaYEhKQ&hl=en&sa=X&ei=2-26T-bZK-mX0QWt3I2ACA&redir_esc=y#v=onepage&q=methionine%20solubility%20in%20ethanol&f=false</ref> | | SolubleOther = 0.00035g/100g ethanol 25 degC <ref>Belitz H.-D., Grosh, W., Schieberle P.<br>Food Chemistry 4th revised and extended Edition<br>Springer Verlag Berlin Heidelberg, 2009 [http://books.google.ch/books?id=xteiARU46SQC&pg=PA15&lpg=PA15&dq=methionine+solubility+in+ethanol&source=bl&ots=HzHueOPPoB&sig=KjMXxDNgjSvG1CddED9lfaYEhKQ&hl=en&sa=X&ei=2-26T-bZK-mX0QWt3I2ACA&redir_esc=y#v=onepage&q=methionine%20solubility%20in%20ethanol&f=false Google Books]</ref> | ||
}} | }} | ||
| Section7 = {{Chembox Hazards | | Section7 = {{Chembox Hazards | ||
| NFPA-H = 1 | |||
| NFPA-F = 1 | |||
| NFPA-R = 0 | |||
| EUIndex = | | EUIndex = | ||
| FlashPt = | | FlashPt = | ||
44行目: | 47行目: | ||
}} | }} | ||
英語名:glutamic acid 独:Glutaminsäure 仏:acide glutamique 略称:Glu, E | |||
タンパク質を構成する[[wikipedia:ja:アミノ酸|アミノ酸]]の一つであり、[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]を初めとする動物においては[[wikipedia:ja:非必須アミノ酸|非必須アミノ酸]]、即ち他の[[wikipedia:ja:有機化合物|有機化合物]]から合成する事が出来るアミノ酸である。[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]][[中枢神経系]]での主要な[[神経伝達物質]]である。また、[[wikipedia:ja:節足動物|節足動物]]では、[[神経筋接合部]]に於ける神経伝達物質である。[[イオンチャネル型グルタミン酸受容体|イオンチャネル型]]、[[代謝活性型グルタミン酸受容体|代謝活性型]]の2種類の[[グルタミン酸受容体]]を介して作用し、主要な[[興奮性伝達]]を担う。一方で、過剰な活性は[[神経細胞死]]を引き起こす。またグルタミン酸性シナプスの異常により[[統合失調症]]、[[自閉症]]が引き起こされるとも考えられている。 | タンパク質を構成する[[wikipedia:ja:アミノ酸|アミノ酸]]の一つであり、[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]を初めとする動物においては[[wikipedia:ja:非必須アミノ酸|非必須アミノ酸]]、即ち他の[[wikipedia:ja:有機化合物|有機化合物]]から合成する事が出来るアミノ酸である。[[wikipedia:ja:脊椎動物|脊椎動物]][[中枢神経系]]での主要な[[神経伝達物質]]である。また、[[wikipedia:ja:節足動物|節足動物]]では、[[神経筋接合部]]に於ける神経伝達物質である。[[イオンチャネル型グルタミン酸受容体|イオンチャネル型]]、[[代謝活性型グルタミン酸受容体|代謝活性型]]の2種類の[[グルタミン酸受容体]]を介して作用し、主要な[[興奮性伝達]]を担う。一方で、過剰な活性は[[神経細胞死]]を引き起こす。またグルタミン酸性シナプスの異常により[[統合失調症]]、[[自閉症]]が引き起こされるとも考えられている。 | ||
175行目: | 178行目: | ||
===興奮毒性=== | ===興奮毒性=== | ||
[[ファイル:PSD proteins.jpg|thumb|right|300px|'''図4 シナプス後肥厚部の蛋白質'''<ref name=sheng_ann_rev_biochem><pubmed> 17243894 </pubmed></ref><br>Reprinted, with permission, from the Annual Review of Biochemistry, Volume 76 © 2007 by Annual Reviews www.annualreviews.org]] | [[ファイル:PSD proteins.jpg|thumb|right|300px|'''図4 シナプス後肥厚部の蛋白質'''<ref name=sheng_ann_rev_biochem><pubmed> 17243894 </pubmed></ref><br>Reprinted, with permission, from the Annual Review of Biochemistry, Volume 76 © 2007 by Annual Reviews www.annualreviews.org]] | ||
神経細胞の過剰な興奮は過剰なカルシウムの細胞内流入を引き起こし、細胞死を引き起こす。脳虚血では、シナプス前部からグルタミン酸が異常に流出し、神経細胞が死滅すると考えられている<ref><pubmed>12559388</pubmed></ref>。 | |||
''詳細は、[[興奮毒性]]の項目参照。'' | ''詳細は、[[興奮毒性]]の項目参照。'' | ||
また、[[wikipedia:ja:ムラサキガイ|ムラサキガイ]]のもつ毒である[[ドウモイ酸]] | また、[[wikipedia:ja:ムラサキガイ|ムラサキガイ]]のもつ毒である[[ドウモイ酸]]は徳之島では駆虫薬としても用いられる興奮性アミノ酸の一つであり、カイニン酸型受容体のアゴニストとして機能する。珪藻により産生されるが、生物濃縮がかかりムラサキガイを初めとする海産生物に多量に含まれる事がある。これを食すると神経細胞死を引き起こす<ref><pubmed> 2540893 </pubmed></ref>。これが[[wikipedia:ja:貝毒|貝毒]]による[[wikipedia:ja:食中毒|食中毒]]の病態機序と考えられている。1987年11~12月、カナダ東岸で中毒が発生し、[[記憶喪失性貝毒]]として知られるようになった<ref>'''Aurélie Lelong, Hélène Hégaret, Philippe Soudant, and Stephen S. Bates'''<br>Pseudo-nitzschia (''Bacillariophyceae'') species, domoic acid and amnesic shellfish poisoning: revisiting previous paradigms.<br>''Phycologia'' 51: 168-216(2012)</ref> 。 | ||
一方、かつて[[wikipedia:ja:中華料理店症候群|中華料理店症候群]](Chinese restaurant syndrome)の原因としてグルタミン酸が疑われた事があったが、通常食物に含まれる程度のグルタミン酸はかなりの部分が、[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]での局所のエネルギー源として使用されてしまう<ref>'''鳥居邦夫、三村亨'''<br><small>L</small>-グルタミン酸塩類のラットにおける吸収と排泄について<br>''医薬品研究'' (1990)21: 242-256</ref>。また、血中へ入っても脳血液関門を越える事がないので、生理的条件下で中枢神経細胞に影響を与えるとは考えにくい。日本国内外での公的機関による[[wikipedia:ja:食品添加物|食品添加物]]としての安全性評価の結果では毒性は否定され、現在では摂取量には特に上限を設けられていない。 | 一方、かつて[[wikipedia:ja:中華料理店症候群|中華料理店症候群]](Chinese restaurant syndrome)の原因としてグルタミン酸が疑われた事があったが、通常食物に含まれる程度のグルタミン酸はかなりの部分が、[[wikipedia:ja:腸管|腸管]]での局所のエネルギー源として使用されてしまう<ref>'''鳥居邦夫、三村亨'''<br><small>L</small>-グルタミン酸塩類のラットにおける吸収と排泄について<br>''医薬品研究'' (1990)21: 242-256</ref>。また、血中へ入っても脳血液関門を越える事がないので、生理的条件下で中枢神経細胞に影響を与えるとは考えにくい。日本国内外での公的機関による[[wikipedia:ja:食品添加物|食品添加物]]としての安全性評価の結果では毒性は否定され、現在では摂取量には特に上限を設けられていない。 | ||
===自閉症=== | ===自閉症=== | ||
[[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解析の結果より、[[自閉症関連遺伝子]]が同定された。それの中に[[Shank]]、[[neuroligin]]、[[neurexin]] | [[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]解析の結果より、[[自閉症関連遺伝子]]が同定された。それの中に[[Shank]]、[[neuroligin]]、[[neurexin]]といった、グルタミン酸性シナプスの構成要素が見いだされている<ref><pubmed>22503632</pubmed></ref><ref><pubmed>20531469</pubmed></ref><ref><pubmed>17173049</pubmed></ref><ref><pubmed>18923512</pubmed></ref>。Shankはシナプス後部で[[Homer]]と共に[[シナプス後膜肥厚]]のframeworkを形成する。Neuroliginは、[[GKAP]]と[[PSD-95]]を介し、Shankと結合し、一方、[[シナプス前部]]のneurexinと結合する(図2)。また、モデル動物においても、社会性の異常などが認められ、それは薬理学的なグルタミン酸伝達の増強によって是正される。この事は、中枢神経系におけるグルタミン酸性シナプス伝達の異常が[[自閉症]]を引き起こしている事を示唆する。ただし、これはごく一部の患者でしか認められず、自閉症全体を説明するものではない事に注意を要する。 | ||
===統合失調症=== | ===統合失調症=== |