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英:fragile X | <div align="right"> | ||
<font size="+1">[https://researchmap.jp/t-okazaki 岡崎 哲也]、</font><br> | |||
''鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科''<br> | |||
<font size="+1">[https://researchmap.jp/yujin_4751 中山祐二]、[https://researchmap.jp/adachika 足立香織]</font><br> | |||
''鳥取大学 研究推進機構 研究基盤センター'' | |||
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0015465 難波栄二]</font><br> | |||
''鳥取大学 研究推進機構 研究戦略室'' | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2017年7月14日 原稿完成日:2020年1月21日<br> | |||
担当編集委員:[https://researchmap.jp/hayashi-takagi/?lang=japanese 林(高木)朗子](国立研究開発法人理化学研究所 脳神経科学研究センター)<br> | |||
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英:fragile X syndrome 独:Fragiles-X-Syndrom 仏:syndrome de l'X fragile | |||
{{box|text= 脆弱X症候群はX連鎖性遺伝形式をとる、知的障害、自閉傾向、特有の顔貌などを示す疾患である。X染色体上のFMR1遺伝子の5’非翻訳領域のCGGリピートの伸長(201リピート以上)により引き起こされる。遺伝性の知的障害では、最も研究の進んでいる疾患の一つで、病態、診断、治療などの研究が盛んに行われている。家系内には同じ伸長リピート、あるいは201リピートよりも短い伸長リピートを有する母などがいる。本疾患は、短い伸長リピートが減数分裂・体細胞分裂において複製される過程で伸長することにより、世代と共に発症し、さらには発症年齢が若年化したり症状が重篤化する(表現促進現象)。短い伸長リピートをもつ人では、50代以降で発症する神経変性疾患(fragile-X associated tremor and ataxia syndrome、FXTAS)や早期卵巣不全などの症状を呈する場合がある。これらの遺伝の特徴を踏まえた、遺伝カウンセリングや診療体制が必要となる。}} | {{box|text= 脆弱X症候群はX連鎖性遺伝形式をとる、知的障害、自閉傾向、特有の顔貌などを示す疾患である。X染色体上のFMR1遺伝子の5’非翻訳領域のCGGリピートの伸長(201リピート以上)により引き起こされる。遺伝性の知的障害では、最も研究の進んでいる疾患の一つで、病態、診断、治療などの研究が盛んに行われている。家系内には同じ伸長リピート、あるいは201リピートよりも短い伸長リピートを有する母などがいる。本疾患は、短い伸長リピートが減数分裂・体細胞分裂において複製される過程で伸長することにより、世代と共に発症し、さらには発症年齢が若年化したり症状が重篤化する(表現促進現象)。短い伸長リピートをもつ人では、50代以降で発症する神経変性疾患(fragile-X associated tremor and ataxia syndrome、FXTAS)や早期卵巣不全などの症状を呈する場合がある。これらの遺伝の特徴を踏まえた、遺伝カウンセリングや診療体制が必要となる。}} | ||
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診断における留意点として、未診断の知的障害症例においては、次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子解析が診断率に大きく貢献しているが、現在主流を占めているショートリードを用いた次世代シークエンサー技術では、脆弱X症候群の原因となるCGG繰り返し配列伸長の同定はできない。同様に染色体検査やマイクロアレイ検査でもリピートの長さは評価できないため、現時点では脆弱X症候群の遺伝学的検査は、PCR法あるいはサザンブロット法で実施する必要がある。 | 診断における留意点として、未診断の知的障害症例においては、次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子解析が診断率に大きく貢献しているが、現在主流を占めているショートリードを用いた次世代シークエンサー技術では、脆弱X症候群の原因となるCGG繰り返し配列伸長の同定はできない。同様に染色体検査やマイクロアレイ検査でもリピートの長さは評価できないため、現時点では脆弱X症候群の遺伝学的検査は、PCR法あるいはサザンブロット法で実施する必要がある。 | ||
== 脆弱X症候群関連疾患 == | == 脆弱X症候群関連疾患 == | ||
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==おわりに== | ==おわりに== | ||
その他、脆弱X症候群の病態においてCGGリピート伸長によるメチル化修飾が重要であることを上記病態生理に記した。Liuら<ref name=Liu2018><pubmed>29456084</pubmed></ref> はこのメチル化を除去することにより、伸長したリピート数を保っていてもFMR1の発現が回復することを、脆弱X症候群のiPS神経細胞とCRISPER/Cas9を用いた実験で示している。 | その他、脆弱X症候群の病態においてCGGリピート伸長によるメチル化修飾が重要であることを上記病態生理に記した。Liuら<ref name=Liu2018><pubmed>29456084</pubmed></ref> はこのメチル化を除去することにより、伸長したリピート数を保っていてもFMR1の発現が回復することを、脆弱X症候群のiPS神経細胞とCRISPER/Cas9を用いた実験で示している。 | ||