「意味性認知症」の版間の差分

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== 鑑別診断 ==
== 鑑別診断 ==


 意味記憶障害による物品呼称の障害や物を見て認識できない症状を、周囲が「物忘れ」と表現する事が多いためアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)と診断されることがある。海馬傍回に強い萎縮を認める事が多いため、側頭極の高度の萎縮を見慣れていないと、高度の海馬萎縮をADの支持的な所見と誤解しうる。意味性認知症では側頭葉極は初期から左右差を持って萎縮するが、ADでは初期から同部位がそのような萎縮を呈することはない。意味性認知症では扁桃核萎縮も初期から明らかで、側頭葉萎縮の左右差と一致した左右差を呈するが、これもADでは初期からは認められない。
 意味記憶障害による物品呼称の障害や物を見て認識できない症状を、周囲が「物忘れ」と表現する事が多いため[[アルツハイマー病]] (Alzheimer’s disease: AD)と診断されることがある。[[海馬傍回]]に強い萎縮を認める事が多いため、側頭極の高度の萎縮を見慣れていないと、高度の海馬萎縮をアルツハイマー病の支持的な所見と誤解しうる。意味性認知症では側頭葉極は初期から左右差を持って萎縮するが、アルツハイマー病では初期から同部位がそのような萎縮を呈することはない。意味性認知症では扁桃核萎縮も初期から明らかで、側頭葉萎縮の左右差と一致した左右差を呈するが、これもアルツハイマー病では初期からは認められない。


 意味性認知症は初期から意味記憶障害以外に前頭葉機能障害による軽度の行動異常を呈する例がしばしばある。このため意味記憶障害や言語の問題の存在を見落とすと行動異常型前頭側頭型認知症(behavioral variant frontotemporal dementia: bvFTD)と診断されうる。
 意味性認知症は初期から意味記憶障害以外に前頭葉機能障害による軽度の行動異常を呈する例がしばしばある。このため意味記憶障害や言語の問題の存在を見落とすと[[行動異常型前頭側頭型認知症]] (behavioral variant frontotemporal dementia: bvFTD)と診断されうる。


 bvFTDの最大50%はその診断の前に自閉症スペクトラム症、あるいは躁うつ病、統合失調症、強迫性疾患、嗜癖などの精神疾患と誤診されているが<ref name=Ducharme2020><pubmed>32129844</pubmed></ref>[29]、svPPAでも精神疾患と診断されている例が20%あるとの報告がある<ref name=Miller2014></ref>[11]。このようにFTLDは精神疾患と誤診されやすい。精神疾患とbvFTDの鑑別には、神経心理学的評価、MRIによる脳萎縮の評価(特に定量的統計解析)、18F-fluorodeoxyglucose PET、髄液中のニューロフィラメント軽鎖濃度が鑑別に有用で、C9orf72遺伝子におけるGGGGCCリピートの異常伸長の検索も重要と考えられているが<ref name=Ducharme2020 />[29]、意味性認知症と精神疾患の鑑別でも同様であると考えられる。
 bvFTDの最大50%はその診断の前に[[自閉症スペクトラム症]]、あるいは[[躁うつ病]]、[[統合失調症]]、[[強迫性疾患]]、嗜癖などの精神疾患と誤診されているが<ref name=Ducharme2020><pubmed>32129844</pubmed></ref>、svPPAでも精神疾患と診断されている例が20%あるとの報告がある<ref name=Miller2014></ref>[11]。このようにFTLDは精神疾患と誤診されやすい。精神疾患とbvFTDの鑑別には、神経心理学的評価、MRIによる脳萎縮の評価(特に定量的統計解析)、[[陽電子断層撮像法#.E8.84.B3.E6.A9.9F.E8.83.BD.E8.A8.88.E6.B8.AC|<sup>18</sup>F-fluorodeoxyglucose PET]]、[[髄液]]中の[[ニューロフィラメント軽鎖]]濃度が鑑別に有用で、C9orf72遺伝子におけるGGGGCCリピートの異常伸長の検索も重要と考えられているが<ref name=Ducharme2020 />、意味性認知症と精神疾患の鑑別でも同様であると考えられる。


== 病因・病態 ==
== 病因・病態 ==

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