16,014
回編集
細 (→歴史・背景) |
|||
(同じ利用者による、間の3版が非表示) | |||
8行目: | 8行目: | ||
英略称:HMT | 英略称:HMT | ||
{{box|text= | {{box|text= ヒストンメチル基転移酵素はヒストンは特定のアミノ酸残基をメチル化する。それにより、遺伝子発現、細胞周期、ゲノムの安定性、核構造の調節など、細胞の重要な機能が制御される。ヒストンメチル基転移酵素はヒストンリジンメチル基転移酵素(KMT)とタンパク質アルギニンメチル基転移酵素(PRMT)の2つに分類され、ヒストンリジンメチル基転移酵素はさらにSETドメイン型と非SETドメイン型に分類される。神経系では、ヒストンメチル基転移酵素はニューロンの発生、成熟、機能、維持に関与しており、その異常な活性化または不活性化は、神経疾患に繋がる。}} | ||
== 歴史・背景 == | == 歴史・背景 == | ||
32行目: | 32行目: | ||
共通のメチルトランスフェラーゼ(MTase)ドメインを持つ。また一部には、[[リン酸化]]や[[酸化]]などの修飾を介してシグナル伝達に関与するドメインを持つものも存在する<ref name=Lee2005><pubmed>16051612</pubmed></ref><ref name=Iwasaki2007><pubmed>17971302</pubmed></ref>。 | 共通のメチルトランスフェラーゼ(MTase)ドメインを持つ。また一部には、[[リン酸化]]や[[酸化]]などの修飾を介してシグナル伝達に関与するドメインを持つものも存在する<ref name=Lee2005><pubmed>16051612</pubmed></ref><ref name=Iwasaki2007><pubmed>17971302</pubmed></ref>。 | ||
メチル化機構の様式によりタイプI([[PRMT1]]~[[PRMT4|4]], [[PRMT6|6]], [[PRMT8|8]]; PRMT4は[[CARM1]]とも呼ばれる)、タイプII(PRMT5, | メチル化機構の様式によりタイプI([[PRMT1]]~[[PRMT4|4]], [[PRMT6|6]], [[PRMT8|8]]; PRMT4は[[CARM1]]とも呼ばれる)、タイプII(PRMT5, [[PRMT9|9]])、タイプIII([[PRMT7]])に分類される。タイプIとIIの タンパク質アルギニンメチル基転移酵素のみが、モノメチル化されたアルギニンをさらに二次メチル化する触媒作用を持ち、タイプIIIタンパク質アルギニンメチル基転移酵素はモノメチル化活性のみが知られている<ref name=Hashimoto2021><pubmed>33127433</pubmed></ref>。タイプIとIIの違いは、タイプIは非対称型ジメチルアルギニンを形成し、タイプIIは対称型ジメチルアルギニン(SDMA)を形成する点である('''図2''')。タイプI タンパク質アルギニンメチル基転移酵素のうち,PRMT1は[[哺乳類]]において85%の非対称型ジメチルアルギニンの生合成を担っている<ref name=Tang2000><pubmed>10713084</pubmed></ref>。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
90行目: | 90行目: | ||
|- | |- | ||
!rowspan="3"|ヒストンリジンメチル基転移酵素(SETドメイン型) | !rowspan="3"|ヒストンリジンメチル基転移酵素(SETドメイン型) | ||
|rowspan="3"|H4K20 ||[[SETD8]](me1) | |rowspan="3"|H4K20 ||[[SETD8]] (me1) | ||
|- | |- | ||
||[[SUV420H1]] (me2, me3) | ||[[SUV420H1]] (me2, me3) | ||
214行目: | 214行目: | ||
一方、Setdb1遺伝子が欠損すると、[[シナプス形成]]に重要な[[IL1RAPL1]](Interleukin-1 receptor accessory protein-like 1)遺伝子の[[エンハンサー]]が活性化され、その発現が亢進する<ref name=Sun2018><pubmed>30103804</pubmed></ref><ref name=Markouli2021><pubmed>33279625</pubmed></ref>。この遺伝子の発現亢進が[[自閉スペクトラム症]]を含む精神・神経疾患の原因である可能性が示されている。 | 一方、Setdb1遺伝子が欠損すると、[[シナプス形成]]に重要な[[IL1RAPL1]](Interleukin-1 receptor accessory protein-like 1)遺伝子の[[エンハンサー]]が活性化され、その発現が亢進する<ref name=Sun2018><pubmed>30103804</pubmed></ref><ref name=Markouli2021><pubmed>33279625</pubmed></ref>。この遺伝子の発現亢進が[[自閉スペクトラム症]]を含む精神・神経疾患の原因である可能性が示されている。 | ||
また、[[レット症候群]]の原因遺伝子[[Mecp2]]との関与も報告されており、レット症候群のモデル動物であるMecp2ノックアウトマウスの、ニューロンにおけるSetdb1を介したH3K9の過度なメチル化は、MeCP2の欠損のみによる表現型を、さらに悪化させることがわかっている<ref name=Jiang2011><pubmed>20869373</pubmed></ref>。 | |||
====タンパク質アルギニンメチル基転移酵素ファミリー==== | ====タンパク質アルギニンメチル基転移酵素ファミリー==== |