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Yoshiyamatsuzaka (トーク | 投稿記録) 細 (図1を追加) |
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/hmushiake 虫明 元]、[http://researchmap.jp/read0092785 松坂 義哉]、[http://researchmap.jp/read0149915 中島 敏]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/hmushiake 虫明 元]、[http://researchmap.jp/read0092785 松坂 義哉]、[http://researchmap.jp/read0149915 中島 敏]</font><br> | ||
''東北大学 医学系研究科''<br> | ''東北大学 医学系研究科''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月29日 原稿完成日:2016年1月5日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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=== 霊長類(ヒト、サル) === | === 霊長類(ヒト、サル) === | ||
[[Image: | [[Image:Human-monkey-motor-cortex.png|thumb|right|375px|'''図1.ヒト(左)及びマカクザル(右)における皮質運動野。'''<br>出典: BrainInfo (1991-present), National Primate Research Center, University of Washington, http://www.braininfo.org より一部編集して転載。<br>MI: 一次運動野; SMA proper: 補足運動野; pre-SMA: 前補足運動野; PMDr, PMDc: 背側運動前野吻側部/尾側部; PMVr, PMVc: 腹側運動野吻側部/尾側部。CMAr: 吻側帯状皮質運動野; CMAd: 背側帯状皮質運動野; CMAv: 腹側帯状皮質運動野; FEF: 前頭眼野。cs: 中心溝; cgs: 帯状溝; sfrs: 上前頭溝; ifrs: 下前頭溝; sprs: 上中心前溝; sras: 弓状溝上枝; iras: 弓状溝下枝; prs: 主構。<br>ヒトとサルの帯状皮質運動野の対応・位置関係についてはAmiezらの論文を参照<ref name="Amiez2012"><pubmed> 23131805 </pubmed></ref>。]] | ||
現時点(2015年12月)では、以下の領野が知られている(図1)。なお、各領野の詳細についてはそれぞれの項目を参照すること。<br> | 現時点(2015年12月)では、以下の領野が知られている(図1)。なお、各領野の詳細についてはそれぞれの項目を参照すること。<br> | ||
'''[[運動前野]]'''<br> | '''[[運動前野]]'''<br> | ||
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=== 霊長類以外 === | === 霊長類以外 === | ||
霊長類以外の[[哺乳類]]のうち、[[ラット]]や[[マウス]]、[[ネコ]]については複数の皮質運動野の存在することが知られている。しかし、現時点では、それらの領域が運動の発現において筋活動の制御以外の役割を果たしているかどうかについてはデータが不十分である。従って、これらの領域が霊長類の高次運動野に相当するかどうかは今後の研究課題である。<br> | 霊長類以外の[[哺乳類]]のうち、[[ラット]]や[[マウス]]、[[ネコ]]については複数の皮質運動野の存在することが知られている。しかし、現時点では、それらの領域が運動の発現において筋活動の制御以外の役割を果たしているかどうかについてはデータが不十分である。従って、これらの領域が霊長類の高次運動野に相当するかどうかは今後の研究課題である。<br> | ||
[[Image:Rat_RFA_CFA.png|thumb|right|400px|'''図2.ラット吻側及び尾側前肢領域(rostral and caudal forelimb areas)。'''各領野の座標はNeafsey & Sievert 1982<ref name="Neafsey1982"></ref>を参照。]] | |||
[[Image:CatBrain.png|thumb|right|400px|'''図3.ネコ皮質運動野。'''左はネコ大脳半球の概観。図の左側が前。cruciate s.: 十字溝; presylvian s.: 前シルヴィウス溝。右は左大脳半球の十字溝、前シルヴィウス溝を展開し、電気刺激による誘発運動の局在を示した図。]] | |||
'''ラット・マウス'''<br> | '''ラット・マウス'''<br> | ||
: ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の[[無顆粒皮質]](lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた<ref name="Wise982"><pubmed>6294151</pubmed></ref>。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ[[吻側前肢領域]]rostral forelimb area (RFA)、[[尾側前肢領域]]caudal forelimb areas (CFA)と命名された<ref name="Neafsey1982"><pubmed>7055691</pubmed></ref>。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している<ref name="Tennant2011"><pubmed>20739477</pubmed></ref>。<br> | : ラットの大脳皮質で初めて運動野の存在が報告されたのは1982年に遡る。この年にDonoghue & Wiseによって、ラット前頭葉外側部の[[無顆粒皮質]](lateral agranular cortex)への微小電流刺激によって運動を誘発できることが報告され、この領域が一次運動野に相当すると考えられた<ref name="Wise982"><pubmed>6294151</pubmed></ref>。ところが同じ年にNeafsey & Stevertによって、ラット大脳皮質には電気刺激によって前肢の運動を誘発できる領域が前後に各々1つずつ存在することが判明し、それぞれ[[吻側前肢領域]] rostral forelimb area (RFA)、[[尾側前肢領域]] caudal forelimb areas (CFA)と命名された<ref name="Neafsey1982"><pubmed>7055691</pubmed></ref>。その後、マウスでもラットCFA, RFAに対応する領域の存在が判明している<ref name="Tennant2011"><pubmed>20739477</pubmed></ref>。<br> | ||
'''ネコ'''<br> | '''ネコ'''<br> | ||
: ネコ大脳皮質では[[十字溝]] (cruciate sulcus)の入口部を取り囲むように存在する[[4γ野]]が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている<ref name="Ghosh1997"><pubmed>9100132</pubmed></ref>。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち[[4δ野]]( | : ネコ大脳皮質では[[十字溝]] (cruciate sulcus)の入口部を取り囲むように存在する[[4γ野]]が霊長類でいう一次運動野に相当すると見なされている<ref name="Ghosh1997"><pubmed>9100132</pubmed></ref>。これに対して高次運動野と考えられる領域は複数存在し、このうち[[4δ野]](十字溝後壁で4γ野のすぐ後方の領域)、[[6aα野]](十字溝前壁で4γ野のすぐ内側)、[[6aγ野]]([[presylvian sulcus]]外側壁に位置する領域)には[[皮質脊髄路]]ニューロンが分布しており、微小電気刺激で反対側の体部位の運動が誘発される<ref name="Ghosh1997"></ref>。[[6aβ野]](6aα野の更に内側)、[[6iffu野]](6aα野の後方)には皮質脊髄路ニューロンがほとんど存在せず、微小電気刺激で運動を誘発することは難しいが<ref name="Ghosh1997"></ref>、この2領域及び前出の6aα、6aγ野においては[[橋延髄網様体]](姿勢・歩行制御に関与)に投射するニューロンが同定されている<ref><pubmed> 9368839 </pubmed></ref>。このように組織学的、および電気刺激による知見から、高次運動野と思しきところは複数あるものの、ネコを行動生理学研究に用いた例は少なく、現在のところ、ネコ大脳皮質の高次運動野についての知見は限定的である。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == |
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