「セリンラセミ化酵素」の版間の差分

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 動物型SRは、[[wikipedia:JA:補因子|補因子]]として[[wikipedia:JA:ピリドキサール|ピリドキサール5-リン酸]](PLP)を必要とし、Mg<sup>2+</sup>、Ca<sup>2+</sup>などの2価カチオンや[[wikipedia:JA:ATP|ATP]]により活性が上昇する<ref><pubmed>12393813</pubmed></ref><ref><pubmed>12515328</pubmed></ref>。 SRは[[wikipedia:JA:翻訳後修飾|翻訳後修飾]]を受けており、[[リン酸化]]により酵素が活性化され、[[wikipedia:JA:S-ニトロシル化|S-ニトロシル化]]により酵素活性が抑制される<ref><pubmed>20493854</pubmed></ref> <ref><pubmed>17293453</pubmed></ref>。SRは様々な蛋白質との結合により活性制御を受ける。[[Glutamate receptor interacting protein]] (GRIP)および[[protein interacting with C kinase 1]] (PICK1)との結合はSRを活性化し、[[Golgi-localized protein]] (Golga 3)との結合は、SRの[[ユビキチン化]]を低下させることで、その分解を抑制する<ref><pubmed>16314870</pubmed></ref><ref><pubmed>12515328</pubmed></ref><ref><pubmed>16714286</pubmed></ref>。[[wikipedia:JA:細胞膜|細胞膜]]に存在する[[ホスファチジルイノシトール#PI.284.2C5.29P2|ホスファチジルイノシトール 4,5-二リン酸]] (PlP2)はSRと結合し、SRの活性を抑制する<ref><pubmed>19380732</pubmed></ref><ref><pubmed>19193859</pubmed></ref>。
 動物型SRは、[[wikipedia:JA:補因子|補因子]]として[[wikipedia:JA:ピリドキサール|ピリドキサール5-リン酸]](PLP)を必要とし、Mg<sup>2+</sup>、Ca<sup>2+</sup>などの2価カチオンや[[wikipedia:JA:ATP|ATP]]により活性が上昇する<ref><pubmed>12393813</pubmed></ref><ref><pubmed>12515328</pubmed></ref>。 SRは[[wikipedia:JA:翻訳後修飾|翻訳後修飾]]を受けており、[[リン酸化]]により酵素が活性化され、[[wikipedia:JA:S-ニトロシル化|S-ニトロシル化]]により酵素活性が抑制される<ref><pubmed>20493854</pubmed></ref> <ref><pubmed>17293453</pubmed></ref>。SRは様々な蛋白質との結合により活性制御を受ける。[[Glutamate receptor interacting protein]] (GRIP)および[[protein interacting with C kinase 1]] (PICK1)との結合はSRを活性化し、[[Golgi-localized protein]] (Golga 3)との結合は、SRの[[ユビキチン化]]を低下させることで、その分解を抑制する<ref><pubmed>16314870</pubmed></ref><ref><pubmed>12515328</pubmed></ref><ref><pubmed>16714286</pubmed></ref>。[[wikipedia:JA:細胞膜|細胞膜]]に存在する[[ホスファチジルイノシトール#PI.284.2C5.29P2|ホスファチジルイノシトール 4,5-二リン酸]] (PlP2)はSRと結合し、SRの活性を抑制する<ref><pubmed>19380732</pubmed></ref><ref><pubmed>19193859</pubmed></ref>。


== 結晶構造 ==
== 構造 ==
   
   
 動物型SRは、fold-type II型のPLP酵素であり、二つのドメインからなるダイマー構造をとる<ref><pubmed>20106978</pubmed></ref>。PLPを含む大ドメインは10本の[[wikipedia:JA:α-へリックス|αへリックス]]に囲まれた7本の[[wikipedia:JA:βシート|βシート]]をコアとしてもつ。小ドメインは、コアとなる4本のβシートと3本のα-へリックスからなる構造をとる。小ドメインの動きは、基質認識部位の形成と酵素の触媒作用において重要な役割を担っている。
 動物型SRは、fold-type II型のPLP酵素であり、二つのドメインからなるダイマー構造をとる<ref><pubmed>20106978</pubmed></ref>。PLPを含む大ドメインは10本の[[wikipedia:JA:αへリックス|αへリックス]]に囲まれた7本の[[wikipedia:JA:βシート|βシート]]をコアとしてもつ。小ドメインは、コアとなる4本のβシートと3本のαへリックスからなる構造をとる。小ドメインの動きは、基質認識部位の形成と酵素の触媒作用において重要な役割を担っている。


== 脳内発現 ==
== 脳内発現 ==
   
   
 マウス脳におけるSRの発現は発達過程に伴って変化し、脳部位によって異なる。[[大脳皮質]]および[[海馬]]では、生後7日から徐々に発現量が増加し、生後28日で成体レベルに達する。[[小脳]]では、生後14日から28日まで一過性に発現が増加した後、急速に減少する<ref><pubmed>18698599</pubmed></ref>。成体マウス脳では、大脳皮質、海馬、[[線条体]]、[[嗅球]]などの[[終脳]]においてSRが強く発現する。細胞レベルでは、SRは主に[[神経細胞]]に発現し、大脳皮質や海馬では[[グルタミン酸]]作動性[[錐体細胞]]、線条体では[[GABA作動性]][[中型有棘ニューロン]]、小脳ではGABA作動性[[プルキンエ細胞]]に発現する。一方、マウス海馬の[[初代培養系]]では、SRは神経細胞と[[アストロサイト]]の両方に発現する。  
 [http://mouse.brain-map.org/experiment/show/74357621 マウス脳におけるSRの発現]は発達過程に伴って変化し、脳部位によって異なる。[[大脳皮質]]および[[海馬]]では、生後7日から徐々に発現量が増加し、生後28日で成体レベルに達する。[[小脳]]では、生後14日から28日まで一過性に発現が増加した後、急速に減少する<ref><pubmed>18698599</pubmed></ref>。成体マウス脳では、大脳皮質、海馬、[[線条体]]、[[嗅球]]などの[[終脳]]においてSRが強く発現する。細胞レベルでは、SRは主に[[神経細胞]]に発現し、大脳皮質や海馬では[[グルタミン酸]]作動性[[錐体細胞]]、線条体では[[GABA作動性]][[中型有棘ニューロン]]、小脳ではGABA作動性[[プルキンエ細胞]]に発現する。一方、マウス海馬の[[初代培養系]]では、SRは神経細胞と[[アストロサイト]]の両方に発現する。  


== 生理機能 ==
== 生理機能 ==