「アクチビン」の版間の差分

36行目: 36行目:


== 構造 ==
== 構造 ==
 アクチビンは、アクチビンβA鎖あるいはアクチビンβB鎖のホモ二量体あるいはヘテロ二量体である。前駆体ペプチドがS-S結合で二量体を形成した後にプロセシングを受けて約26 kDaの二量体の成熟型が生成される。アクチビンはTGF-β(transforming growth factor-β)ファミリーに属する細胞増殖因子である(下記サブファミリーの項目を参照)。主要な二量体のアクチビンはアクチビンA、B、ABである('''図1''')。立体構造も解明されており、各サブユニットは、複数の[[βシート構造]]と[[αヘリックス構造]]からなり、全体として、二量体はバタフライ様の構造を取る('''図2''')。いわば両手を組合わせたような構造であり、リスト部分のα-ヘリックス構造、4本の指に相当する4つのβ-シート部分が逆並行に配置され、先端は[[システイン・ノット]]と称される結び目構造を取る。アクチビンは他のTGF-βファミリーに比べて、受容体に結合していない状態では、比較的柔軟な構造を取りうる<ref name=Greenwald2004><pubmed>15304227</pubmed></ref><ref name=Thompson2003><pubmed>12660162</pubmed></ref><ref name=Thompson2005><pubmed>16198295</pubmed></ref>。バタフライ構造がより引き寄せられた構造やより開いた構造も取る。
=== サブユニット構成 ===
 アクチビンは、アクチビンβA鎖あるいはアクチビンβB鎖のホモ二量体あるいはヘテロ二量体である。前駆体ペプチドがS-S結合で二量体を形成した後にプロセシングを受けて約26 kDaの二量体の成熟型が生成される。アクチビンはTGF-β(transforming growth factor-β)ファミリーに属する細胞増殖因子である(下記サブファミリーの項目を参照)。主要な二量体のアクチビンはアクチビンA、B、ABである('''図1''')。
 
 インヒビンは、2種の異なった遺伝子由来のα鎖サブユニットとβ鎖サブユニットの前駆体が二量体を形成し、プロセシングを受けて、カルボキシル末端の成熟型の二量体として成熟体インヒビンが産生される.インヒビンAとインヒビンBが存在する('''図1''')。インヒビンもTGF-βファミリーに属する細胞増殖分化因子である。
=== 立体構造 ===
 立体構造も解明されており、各サブユニットは、複数の[[βシート構造]]と[[αヘリックス構造]]からなり、全体として、二量体はバタフライ様の構造を取る('''図2''')。いわば両手を組合わせたような構造であり、リスト部分のα-ヘリックス構造、4本の指に相当する4つのβ-シート部分が逆並行に配置され、先端は[[システイン・ノット]]と称される結び目構造を取る。アクチビンは他のTGF-βファミリーに比べて、受容体に結合していない状態では、比較的柔軟な構造を取りうる<ref name=Greenwald2004><pubmed>15304227</pubmed></ref><ref name=Thompson2003><pubmed>12660162</pubmed></ref><ref name=Thompson2005><pubmed>16198295</pubmed></ref>。バタフライ構造がより引き寄せられた構造やより開いた構造も取る。


 アクチビン・I型受容体・II型受容体複合体は、1:2:2の比率で複合体を形成する。I型受容体はアクチビン二量体のくぼみの部分に、II型受容体にはナックル領域に結合する<ref name=Greenwald2004><pubmed>15304227</pubmed></ref><ref name=Thompson2003><pubmed>12660162</pubmed></ref>。フォリスタチンとの結合はフォリスタチンの項を参照されたい。
 アクチビン・I型受容体・II型受容体複合体は、1:2:2の比率で複合体を形成する。I型受容体はアクチビン二量体のくぼみの部分に、II型受容体にはナックル領域に結合する<ref name=Greenwald2004><pubmed>15304227</pubmed></ref><ref name=Thompson2003><pubmed>12660162</pubmed></ref>。フォリスタチンとの結合はフォリスタチンの項を参照されたい。


 インヒビンは、2種の異なった遺伝子由来のα鎖サブユニットとβ鎖サブユニットの前駆体が二量体を形成し、プロセシングを受けて、カルボキシル末端の成熟型の二量体として成熟体インヒビンが産生される.インヒビンAとインヒビンBが存在する('''図1''')。インヒビンもTGF-βファミリーに属する細胞増殖分化因子である。インヒビンAは[[アクチビンII型受容体]]に結合し、[[βグリカン]]を共受容体とすることでアクチビンのII型受容体への結合を抑制しアクチビンに拮抗する。インヒビンBのアクチビンII型受容体への結合は下垂体前葉の性線刺激ホルモン産生細胞([[ゴナドトロフ]])に特異的に発現する[[transforming growth factor beta receptor 3 like]] ([[TGFBR3L]])を[[共受容体]]とすることで高まりアクチビンと拮抗する<ref name=Brule2021><pubmed>34910520</pubmed></ref><ref name=Lewis2000><pubmed>10746731</pubmed></ref>'''(表1)'''。
 インヒビンAは[[アクチビンII型受容体]]に結合し、[[βグリカン]]を共受容体とすることでアクチビンのII型受容体への結合を抑制しアクチビンに拮抗する。インヒビンBのアクチビンII型受容体への結合は下垂体前葉の性線刺激ホルモン産生細胞([[ゴナドトロフ]])に特異的に発現する[[transforming growth factor beta receptor 3 like]] ([[TGFBR3L]])を[[共受容体]]とすることで高まりアクチビンと拮抗する<ref name=Brule2021><pubmed>34910520</pubmed></ref><ref name=Lewis2000><pubmed>10746731</pubmed></ref>'''(表1)'''。
 
{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
|+表1. アクチビンの受容体の構成
|+表1. アクチビンの受容体の構成