「分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ8相互作用タンパク質」の版間の差分

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 [[分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ]] ([[mitogen-activated kinase]], [[MAPK]])に属する[[タンパク質リン酸化酵素]]は上流の[[MAP2K]]に属するタンパク質リン酸化酵素によりリン酸化されることで活性化し、MAP2Kはさらに上流の[[MAP3K]]に属するタンパク質リン酸化酵素によりリン酸化されることで活性化する。このシグナル伝達機構は[[酵母]]から[[哺乳類]]まで保存されており[[MAPキナーゼカスケード]]と呼ばれている。
 [[分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ]] ([[mitogen-activated kinase]], [[MAPK]])に属する[[タンパク質リン酸化酵素]]は上流の[[MAP2K]]に属するタンパク質リン酸化酵素によりリン酸化されることで活性化し、MAP2Kはさらに上流の[[MAP3K]]に属するタンパク質リン酸化酵素によりリン酸化されることで活性化する。このシグナル伝達機構は[[酵母]]から[[哺乳類]]まで保存されており[[MAPキナーゼカスケード]]と呼ばれている。


 酵母でこういったリン酸化を介したシグナル伝達の効率を高める[[足場タンパク質]]として、[[STE5]]が同定された<ref name=Choi1994><pubmed>8062390</pubmed></ref>。哺乳類においても、MAPKの一つである[[c-Jun N-terminal kinase]] ([[JNK]])と結合してこれを阻害するタンパク質として同定された[[JNK-interacting protein 1]] ([[JIP1]]、現在は[[MAPK8IP1]]と呼ばれる) <ref name=Dickens1997><pubmed>9235893</pubmed></ref>が、STE5様の足場タンパク質として機能する(ホモログではない)と考えられるようになった<ref name=Whitmarsh1998><pubmed>9733513</pubmed></ref>。さらにMAPK8IP1はJNKのみならず、JNKの上流であるMAP2KやMAP3Kとも結合することが示された。
 酵母でこういったリン酸化を介したシグナル伝達の効率を高める[[足場タンパク質]]として、[[STE5]]が同定された<ref name=Choi1994><pubmed>8062390</pubmed></ref>。哺乳類においても、MAPKの一つである[[c-Jun N-terminal kinase]] ([[JNK]])と結合してこれを阻害するタンパク質として同定された[[JNK-interacting protein 1]] ([[JIP1]]、現在は[[MAPK8IP1]]と呼ばれる) <ref name=Dickens1997><pubmed>9235893</pubmed></ref>が、後にJNKの上流にあるMAP2KやMAP3Kとも結合することが判明したことから、STE5様の足場タンパク質として機能する(ホモログではない)と考えられるようになった<ref name=Whitmarsh1998><pubmed>9733513</pubmed></ref>


 線虫やショウジョウバエの[[MAPK8IP3]]ホモログである[[UNC16]] <ref name=Byrd2001><pubmed>11738026</pubmed></ref>や[[sunday driver]] (SYD) <ref name=Bowman2000><pubmed>11106729</pubmed></ref>が神経細胞における[[軸索輸送]]に係ることが示されたことに加え、MAPK8IP1,2のC末端部に[[キネシン軽鎖]]結合配列が見つかった<ref name=Verhey2001><pubmed>11238452</pubmed></ref>ことにより、これらMAPK8IPファミリータンパク質の細胞内輸送における機能についても注目を集めている。
 線虫やショウジョウバエの[[MAPK8IP3]]ホモログである[[UNC16]] <ref name=Byrd2001><pubmed>11738026</pubmed></ref>や[[sunday driver]] (SYD) <ref name=Bowman2000><pubmed>11106729</pubmed></ref>が神経細胞における[[軸索輸送]]に係ることが示されたことに加え、MAPK8IP1,2のC末端部に[[キネシン軽鎖]]結合配列が見つかった<ref name=Verhey2001><pubmed>11238452</pubmed></ref>ことにより、これらMAPK8IPファミリータンパク質の細胞内輸送における機能についても注目を集めている。
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 MAPK8IP1 (JIP1)、MAPK8IP2 (JIP2)が属する。
 MAPK8IP1 (JIP1)、MAPK8IP2 (JIP2)が属する。


 MAPK8IP1はインスリン受容体からのシグナル伝達を制御する因子としても独立に発見されており、その発現パターンから[[islet brain-1]] ([[IB1]])とも呼ばれている<ref name=Bonny1998><pubmed>9442013</pubmed></ref>。そのパラログとしては[[MAPK8IP2]]は[[IB2]]としても知られている<ref name=Yasuda1999><pubmed>10490659</pubmed></ref>。
 MAPK8IP1はインスリン受容体からのシグナル伝達を制御する因子としても独立に発見されており、その発現パターンから[[islet brain-1]] ([[IB1]])とも呼ばれている<ref name=Bonny1998><pubmed>9442013</pubmed></ref>。そのパラログとして同定された[[MAPK8IP2]]は[[IB2]]としても知られている<ref name=Yasuda1999><pubmed>10490659</pubmed></ref>。


=== MAPK8IP3および4 ===
=== MAPK8IP3および4 ===
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=== MAPK8IP3, 4 ===
=== MAPK8IP3, 4 ===
 JNKグループに属するMAPKの活性化に関わるキナーゼカスケードの足場としても機能する<ref name=Ito1999><pubmed>10523642</pubmed></ref>
 JNKグループに属するMAPKの活性化に関わるキナーゼカスケードの足場として機能する<ref name=Ito1999><pubmed>10523642</pubmed></ref>
<ref name=Kelkar2000><pubmed>10629060</pubmed></ref>他、MAPK8IP4については[[p38]]と呼ばれるグループに属するMAPK ([[MAPK14]])の活性化にも関わる<ref name=Lee2002><pubmed>12391307</pubmed></ref><ref name=Kelkar2005><pubmed>15767678</pubmed></ref>。線虫のUNC16及びショウジョウバエのSYDのホモログであり、キネシンやダイナクチン-ダイニンと結合することにより[[リソソーム]]や[[オートファゴソーム]]を含む様々な種類の小胞の輸送を支えるアダプターとして機能する<ref name=Celestino2022><pubmed>35829703</pubmed></ref><ref name=Gowrishankar2021><pubmed>33788575</pubmed></ref>。さらに、MAPK8IP3, 4はダイニンモーターを活性化することに加え、輸送の制御に関わる[[低分子量Gタンパク質]]の一つ[[ARF6]]のエフェクターとして位置付けられている<ref name=Cason2023><pubmed>37909920</pubmed></ref>。
<ref name=Kelkar2000><pubmed>10629060</pubmed></ref>他、MAPK8IP4については[[p38]]と呼ばれるグループに属するMAPK ([[MAPK14]])の活性化にも関わる<ref name=Lee2002><pubmed>12391307</pubmed></ref><ref name=Kelkar2005><pubmed>15767678</pubmed></ref>。線虫のUNC16及びショウジョウバエのSYDのホモログであり、キネシンやダイナクチン-ダイニンと結合することにより[[リソソーム]]や[[オートファゴソーム]]を含む様々な種類の小胞の輸送を支えるアダプターとして機能する<ref name=Celestino2022><pubmed>35829703</pubmed></ref><ref name=Gowrishankar2021><pubmed>33788575</pubmed></ref>。さらに、MAPK8IP3, 4はダイニンモーターを活性化することに加え、輸送の制御に関わる[[低分子量Gタンパク質]]の一つ[[ARF6]]のエフェクターとして位置付けられている<ref name=Cason2023><pubmed>37909920</pubmed></ref>。


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== ノックアウトマウス ==
== ノックアウトマウス ==
=== MAPK8IP1ノックアウトマウス ===
=== MAPK8IP1ノックアウトマウス ===
 寿命や生殖能力に異常はないが、[[海馬]]神経細胞において[[興奮毒性]]に関わるJNK活性化と[[細胞死]]が抑制される<ref name=Whitmarsh2001><pubmed>11562351</pubmed></ref> [20]他、高脂肪食により脂肪細胞で誘発されるJNK活性化とこれによるインスリン抵抗性が抑制される<ref name=Jaeschke2004><pubmed>15314024</pubmed></ref>。MAPK8IP1とMAPK8IP2の双方をノックアウトした場合は [[低血糖]]による顕著な成長遅延を呈し、生後2週間程度で死亡する<ref name=Standen2009><pubmed>19564410</pubmed></ref>。
 寿命や生殖能力に異常はないが、[[海馬]]神経細胞において[[興奮毒性]]に関わるJNK活性化と[[細胞死]]が抑制される<ref name=Whitmarsh2001><pubmed>11562351</pubmed></ref> 他、高脂肪食により脂肪細胞で誘発されるJNK活性化とこれによるインスリン抵抗性が抑制される<ref name=Jaeschke2004><pubmed>15314024</pubmed></ref>。MAPK8IP1とMAPK8IP2の双方をノックアウトした場合は [[低血糖]]による顕著な成長遅延を呈し、生後2週間程度で死亡する<ref name=Standen2009><pubmed>19564410</pubmed></ref>。
=== MAPK8IP3ノックアウトマウス ===
=== MAPK8IP3ノックアウトマウス ===
 [[終脳]]形成に異常を呈し、呼吸不全により生後間もなく死亡する<ref name=Kelkar2003><pubmed>12897243</pubmed></ref>。
 [[終脳]]形成に異常を呈し、呼吸不全により生後間もなく死亡する<ref name=Kelkar2003><pubmed>12897243</pubmed></ref>。