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大脳皮質の局所神経回路は、錐体細胞、非錐体細胞、他の大脳皮質や[[視床]]からの興奮性入力線維、[[中脳]]の[[縫線核]](raphe nucleus)からの[[セロトニン]]線維、[[大脳基底核]](basal nucleus)からの[[アセチルコリン]]線維、[[腹側被蓋野]](ventral tegmental area)からの[[ドーパミン]]線維等の求心性線維等から構成される。錐体細胞は、大脳皮質の興奮性出力信号細胞であり、2/3層、5層、6層に分布している。4層にある興奮性細胞は、主に[[有棘星状細胞]]([[spiny stellate細胞]])や[[星状錐体細胞]]([[Star pyramid細胞]])である。これらの興奮性神経細胞は、層毎に、入力源や出力先が異なる事が知られている(図2)。それらの興奮性出力細胞の活動を抑制性細胞が抑制性の伝達物質[[GABA]]による作用で抑制し制御する。抑制性細胞は、1層から6層まで分布しており、形態や[[発火]]特性、発現する[[神経伝達物質]]の異なるサブタイプが多く存在する<ref name="ref6"><pubmed>21220766</pubmed></ref> | 大脳皮質の局所神経回路は、錐体細胞、非錐体細胞、他の大脳皮質や[[視床]]からの興奮性入力線維、[[中脳]]の[[縫線核]](raphe nucleus)からの[[セロトニン]]線維、[[大脳基底核]](basal nucleus)からの[[アセチルコリン]]線維、[[腹側被蓋野]](ventral tegmental area)からの[[ドーパミン]]線維等の求心性線維等から構成される。錐体細胞は、大脳皮質の興奮性出力信号細胞であり、2/3層、5層、6層に分布している。4層にある興奮性細胞は、主に[[有棘星状細胞]]([[spiny stellate細胞]])や[[星状錐体細胞]]([[Star pyramid細胞]])である。これらの興奮性神経細胞は、層毎に、入力源や出力先が異なる事が知られている(図2)。それらの興奮性出力細胞の活動を抑制性細胞が抑制性の伝達物質[[GABA]]による作用で抑制し制御する。抑制性細胞は、1層から6層まで分布しており、形態や[[発火]]特性、発現する[[神経伝達物質]]の異なるサブタイプが多く存在する<ref name="ref6"><pubmed>21220766</pubmed></ref>(図3)。これらの抑制性細胞のサブタイプは、シナプス結合して抑制作用を及ぼすターゲットの場所が異なる事<ref name="ref7"><pubmed>17267569</pubmed></ref>、活動様式が異なる事が知られており<ref name="ref8"><pubmed>18599766</pubmed></ref>、局所神経回路の中での役割が異なると考えられている<ref name="ref9"><pubmed>9276173</pubmed></ref>。さらに、外部からの興奮性信号と縫線核等それ以外の活動を調整する信号等が複雑に作用し合う。 | ||
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2014年1月13日 (月) 20:59時点における版
窪田芳之、川口泰雄
自然科学研究機構 生理学研究所 大脳神経回路論研究部門
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年6月6日 原稿完成日:2013年XX月XX日
担当編集委員:渡辺 大(京都大学大学院 生命科学研究科認知情報学講座・医学研究科生体情報科学講座)
英語名:cortical local microcircuit
大脳皮質には、80個程度の神経細胞で構成されるミニ円柱構造と呼ばれる最小単位の局所神経回路があり、その単位神経回路が多数並列的に存在する事で、概算で神経細胞26億個[1](ヒトの場合)により構成される大脳皮質の神経回路が作られている。
歴史
大脳皮質の神経細胞の概要が、解剖学的に示されたのは百年余前の事である。Santiago Ramón y Cajalによって、ゴルジ染色法により神経細胞が染色され、光学顕微鏡による観察とスケッチで、長く脳表面に向かって伸展する特徴的な尖端樹状突起(apical dendrite)を持つ錐体細胞(pyramidal cell)や、比較的小さい非錐体細胞(nonpyramidal cell)等が詳細に描画され、報告された。それらは、現在の大脳皮質局所神経回路研究の礎となっている。
局所神経回路ユニットと機能円柱
大脳皮質は、解剖学的に、縦方向に神経細胞が柱状に並んでおり[2]、ミニ円柱(minicolumn)構造(80個の神経細胞で構成され、横方向に23μmの幅を持つ)と呼ばれている。横方向にこのミニ円柱構造が繰り返し分布している[3]。サルの大脳皮質の一次視覚野では、ひとつのミニ円柱構造の中に、18個の2/3層の錐体細胞、6個の5層の錐体細胞、10個の6層の錐体細胞の尖端樹状突起とその軸索(axon)が束をなし、上述の錐体細胞を含んだ64個の興奮性の神経細胞(錐体細胞、Spiny stellate 細胞等)と16個の抑制性の非錐体細胞がその周りを取り囲む様に分布し、それらが互いにシナプス結合で連絡し合いながら、一種の機能的なユニット構造を構成していると考えられている[4]。数百個のミニ円柱が集まり、良く似た形をした物体に視覚的に反応する幅約400 µmの機能円柱(column)構造を形成していると考えられている[5]。ただし、まだミニ円柱構造と機能円柱構造との間の関係は明らかにはなっていない。
局所神経回路の構造
大脳皮質の局所神経回路は、錐体細胞、非錐体細胞、他の大脳皮質や視床からの興奮性入力線維、中脳の縫線核(raphe nucleus)からのセロトニン線維、大脳基底核(basal nucleus)からのアセチルコリン線維、腹側被蓋野(ventral tegmental area)からのドーパミン線維等の求心性線維等から構成される。錐体細胞は、大脳皮質の興奮性出力信号細胞であり、2/3層、5層、6層に分布している。4層にある興奮性細胞は、主に有棘星状細胞(spiny stellate細胞)や星状錐体細胞(Star pyramid細胞)である。これらの興奮性神経細胞は、層毎に、入力源や出力先が異なる事が知られている(図2)。それらの興奮性出力細胞の活動を抑制性細胞が抑制性の伝達物質GABAによる作用で抑制し制御する。抑制性細胞は、1層から6層まで分布しており、形態や発火特性、発現する神経伝達物質の異なるサブタイプが多く存在する[6](図3)。これらの抑制性細胞のサブタイプは、シナプス結合して抑制作用を及ぼすターゲットの場所が異なる事[7]、活動様式が異なる事が知られており[8]、局所神経回路の中での役割が異なると考えられている[9]。さらに、外部からの興奮性信号と縫線核等それ以外の活動を調整する信号等が複雑に作用し合う。
興奮性結合
大脳皮質の局所神経回路の興奮性シナプス結合は、錐体細胞間にあるシナプス結合と、視床からの求心性神経線維が錐体細胞にシナプス結合するものに区分できる。
皮質の興奮性細胞間のシナプス結合様式は、近年、ペア電気生理記録法により詳細に検討され報告されている[10]。それによると、図2に示されたようなサルの皮質視覚野の層間での結合様式と同様に、4層から2/3層へシナプス結合がある。また、4層の細胞は他の4層の細胞とも結合が強い。さらに6層にも少ないながら結合している。2/3層の錐体細胞は、同じ層の中でシナプス結合を示す。さらに、5層の錐体細胞に最も強いシナプス結合で信号を送る。5層の錐体細胞は同じ層の錐体細胞と結合し、6層の錐体細胞にも信号を送る。6層の錐体細胞は、4層5層6層の錐体細胞に出力している事が報告されている。5層の錐体細胞間の結合特性はさらに解析が進んでいる。5層錐体細胞は、対側皮質へ投射するもの投射するもの(commissural cell; COM細胞)と橋核へ行くもの(corticopontine cell; CPn細胞)に分かれる。前頭皮質のCOM細胞には、対側線条体にも投射するもの(crossed-corticostriatal cell; CCS細胞)がある。5層錐体細胞投射サブタイプの間で、樹状突起形態や生理的性質が分化している(図4)。そしてこれらサブタイプの組み合わせで、それらの結合方向性、相互結合頻度、短期可塑性が異なっている。[11] [12] [13] [14]。
一方、視床からの興奮性神経線維の結合解析に、視床皮質神経線維を選択的に発現する小胞型グルタミン酸トランスポーター Type 2 (VGLUT2)をマーカーとして使うことで、皮質内の視床由来神経線維入力分布が明らかとなった[15]。前頭皮質では、1層上部、4層、5層下部(5b層)に、より多くの視床皮質線維が分布している(図5)。その神経終末の大半は錐体細胞の棘突起に入力し、その棘突起の1割には抑制性シナプスが同時に入力し、視床からの興奮性信号を選択的に抑制すると考えられている[7] [16]。
抑制性結合
GABAを伝達物質とする抑制性非錐体細胞には少なくとも十数種類のサブタイプがあり、それぞれ異なった役割で皮質活動を制御している(図3)[13] [17] [18]。最も多数をしめるサブタイプはfast spiking (FS) バスケット細胞である。非錐体細胞のおよそ3割程度をしめる集団で、互いにギャップ結合(電気シナプス)で結合し、錐体細胞等の細胞体や樹状突起の近位部に抑制性シナプス接着を形成し、錐体細胞の発火を押さえたり、発火のタイミングの制御をする。
FS型発火様式を持つもう一つの細胞は、シャンデリア細胞である。数は少なく、非錐体細胞全体のごく少数であると言われている。その神経終末は縦方向に10個程度が数珠状に並び、ほぼ全ての錐体細胞の軸索起始部にシナプス結合し[19]、錐体細胞の発火を制御する。FS細胞は、ほぼ全てがカルシウム結合タンパク質パルブアルブミン(parvalbumin)を発現している。
2番目に大きな集団は、神経ペプチドソマトスタチン(somatostatin)を発現するマルチノッチ細胞(Martinotti細胞)である。非錐体細胞の中では唯一高密度の棘突起(約1個/µm)をもつ[20]。軸索は、1層まで分岐しながら伸展し、錐体細胞のタフト樹状突起等の末端の樹状突起にもシナプスを作り、興奮性入力信号を直接抑制する。
3つめのサブタイプは、ダブルブーケ細胞(Double bouquet細胞)と呼ばれており、軸索がまとまって束となり白質方向に下降するのが特徴である。カルシウム結合タンパク質のカルレチニン(calretinin)や神経ペプチドVIP、CRF等を発現する。ターゲットは錐体細胞に加えてdouble bouquet細胞を含む非錐体細胞も含まれる。
Late spiking発火特性を持つのは、ニューログリアフォーム細胞(Neurogliaform細胞)である。樹状突起や軸索は、自身の細胞体近傍に密に分岐している。ラットでは、細胞体でα-actinin 2を発現する[6]。また、長い抑制効果を示すGABAB受容体反応を後シナプス細胞に引き起こす[21]。
水平軸索結合
ネコの一次視覚野の錐体細胞は、軸索を水平方向に0.5 – 3mm程のばし、そこで終末側枝を多数分岐している[22]。同様な水平軸索結合は、サルの下側頭回や[23]、ネコの一次聴覚野でも見られる[24]。この水平軸索は、最長で8mmまで走行する。ネコ1次視覚野では、この水平軸索結合は、同じ方向選択性を持つ機能円柱(orientation column)どうしをつなぐ役割を持っている[25]。また、網膜の一部を壊すと、その視野に対応していた皮質部位は、一時的に視覚刺激応答しなくなる。しかし、しばらくすると、それまでは閾値以下の興奮しか起こせなかった周囲の正常部位にある錐体細胞の水平軸索からの入力が強化され、視覚応答するようになる[26] [27]。このように、水平軸索は、いわば、機能しなくなる部位ができた際、すぐに代償の信号ルートを作る為の予備的な回路の役割をもっているといえる。
シナプス結合選択性
大脳新皮質2/3層内で結合している錐体細胞は、4層興奮性神経細胞から共通入力を多く受ける一方、5層からの興奮性入力や4層からの抑制性入力に関しては、このような選択的な入力パターンは見られない[28]。さらに、抑制性細胞サブタイプであるパルブアルブミン陽性のFS細胞やソマトスタチン陽性のマルチノッティ細胞では、周囲にある錐体細胞を選択性なく神経支配している事が知られている[29] [30]。錐体細胞からの興奮性結合の一部には、層やターゲットのニューロンタイプによって選択性がある一方で抑制性細胞はランダムに出力していると考えられる。
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