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メンブレントラフィックは非常に多様性に富む現象であるが、基本的には図1に示す一連のプロセスにより成り立っている。まず、送り手のオルガネラの膜の一部が[[出芽]](budding)して、根本で切り取られて[[輸送小胞]](transport vesicle)となる。その際、輸送小胞に入る内腔成分と膜成分の選別が行われる。輸送小胞は[[細胞骨格]]に沿って特定の受け手オルガネラ(あるいは細胞膜)まで運ばれ、受け手のオルガネラと選択的に結合して膜融合が起こり内腔成分と膜成分の輸送が完了する(図1)<ref><pubmed>7969419</pubmed></ref>。従って、メンブレントラフィックは膜融合型輸送とみなすこともできる。 | メンブレントラフィックは非常に多様性に富む現象であるが、基本的には図1に示す一連のプロセスにより成り立っている。まず、送り手のオルガネラの膜の一部が[[出芽]](budding)して、根本で切り取られて[[輸送小胞]](transport vesicle)となる。その際、輸送小胞に入る内腔成分と膜成分の選別が行われる。輸送小胞は[[細胞骨格]]に沿って特定の受け手オルガネラ(あるいは細胞膜)まで運ばれ、受け手のオルガネラと選択的に結合して膜融合が起こり内腔成分と膜成分の輸送が完了する(図1)<ref><pubmed>7969419</pubmed></ref>。従って、メンブレントラフィックは膜融合型輸送とみなすこともできる。 | ||
メンブレントラフィックは様々なオルガネラを経由し、かつ多様なタンパク質が関与する複雑な過程だが、生体膜を透過する輸送形態と異なり輸送分子のコンフォメーション変化を必要とせず、膜の成分である膜タンパク質や脂質をも輸送することが可能で、しかも一度に他種類の分子を大量に運べるという利点を持つ。例えば、小胞体で合成された膜タンパク質が細胞膜へと輸送される過程を例に挙げると、新たに合成された膜タンパク質は小胞体膜へと挿入され、ゴルジ体を経て[[トランスゴルジ網]](TGN, trans-Golgi network)へと輸送される。多くの膜タンパク質の場合、ここまでの過程で正しい[[wikipedia:JA:高次構造|高次構造]]へと折りたたまれ、[[wikipedia:JA:糖鎖|糖鎖]]などの[[wikipedia:JA:翻訳後修飾|翻訳後修飾]]を受ける。トランスゴルジ網へと輸送された膜タンパク質は、その後、細胞膜、エンドソーム、リソソームあるいは分泌小胞などターゲットされるべき場所へと選別される。一方、細胞外から細胞膜を経てエンドサイトーシスされたタンパク質は[[エンドソーム#初期エンドソーム]]を経た後に、リサイクルされて再び細胞膜へと戻るか、もしくは[[エンドソーム#後期エンドソーム]]/[[多胞体]](MVB, multivesicular body)を経てリソソームへと運ばれ分解される<ref><pubmed>19696797</pubmed></ref><ref><pubmed>18502633</pubmed></ref>。このように細胞は個々の輸送経路に対して個別の輸送小胞を用意することにより、複雑な輸送経路網の発達を可能にしてきたと考えられる。 | メンブレントラフィックは様々なオルガネラを経由し、かつ多様なタンパク質が関与する複雑な過程だが、生体膜を透過する輸送形態と異なり輸送分子のコンフォメーション変化を必要とせず、膜の成分である膜タンパク質や脂質をも輸送することが可能で、しかも一度に他種類の分子を大量に運べるという利点を持つ。例えば、小胞体で合成された膜タンパク質が細胞膜へと輸送される過程を例に挙げると、新たに合成された膜タンパク質は小胞体膜へと挿入され、ゴルジ体を経て[[トランスゴルジ網]](TGN, trans-Golgi network)へと輸送される。多くの膜タンパク質の場合、ここまでの過程で正しい[[wikipedia:JA:高次構造|高次構造]]へと折りたたまれ、[[wikipedia:JA:糖鎖|糖鎖]]などの[[wikipedia:JA:翻訳後修飾|翻訳後修飾]]を受ける。トランスゴルジ網へと輸送された膜タンパク質は、その後、細胞膜、エンドソーム、リソソームあるいは分泌小胞などターゲットされるべき場所へと選別される。一方、細胞外から細胞膜を経てエンドサイトーシスされたタンパク質は[[エンドソーム#初期エンドソーム|初期エンドソーム]]を経た後に、リサイクルされて再び細胞膜へと戻るか、もしくは[[エンドソーム#後期エンドソーム|後期エンドソーム]]/[[多胞体]](MVB, multivesicular body)を経てリソソームへと運ばれ分解される<ref><pubmed>19696797</pubmed></ref><ref><pubmed>18502633</pubmed></ref>。このように細胞は個々の輸送経路に対して個別の輸送小胞を用意することにより、複雑な輸送経路網の発達を可能にしてきたと考えられる。 | ||
== 神経細胞における役割 == | == 神経細胞における役割 == |