「カルシウムドメイン」の版間の差分

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[[Image:Calciumdomain-1.png|thumb|350px|'''図1''' 図のタイトルを御願い致します]]  
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 Chad &amp; Eckert<ref name="ref1"><pubmed>6329349</pubmed></ref>によって提唱された。[[電位依存性カルシウムチャネル]]が短時間、開口することにより、細胞外から細胞内に流入したカルシウムは、[[細胞質]]にある内在性[[カルシウムバッファー]]の作用により、[[細胞膜]]の内側に沿って半円形に濃度分布すると推定され、その空間分布をカルシウムドメインと呼んだ(図1)。カルシウムドメインを形成する最小ユニットは単一チャネルであるが、複数チャネルのカルシウムドメインが重複すると、より大きなカルシウムドメインが形成される。カルシウムドメインの重複の程度はチャネル当たりのカルシウム流入量と、カルシウムチャネルの分布密度によって決定される。
 Chad &amp; Eckert<ref name="ref1"><pubmed>6329349</pubmed></ref>によって提唱された。[[電位依存性カルシウムチャネル]]が短時間、開口することにより、細胞外から細胞内に流入したカルシウムは、[[細胞質]]にある内在性[[カルシウムバッファー]]の作用により、[[細胞膜]]の内側に沿って半円形に濃度分布すると推定され、その空間分布をカルシウムドメインと呼んだ(図1)。カルシウムドメインを形成する最小ユニットは単一チャネルであるが、複数チャネルのカルシウムドメインが重複すると、より大きなカルシウムドメインが形成される。カルシウムドメインの重複の程度はチャネル当たりのカルシウム流入量、カルシウムチャネルの分布密度、カルシウムバッファーの濃度と結合速度などによって決定される。


==関与するチャネル  ==
==関与するチャネル  ==
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|}
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キレート剤の存在下におけるカルシウムの拡散距離 λは
キレート剤の存在下におけるカルシウムの拡散距離長さ定数λは


λ = (D<sub>Ca</sub>/K<sub>on</sub>B)0.5  
λ = (D<sub>Ca</sub>/K<sub>on</sub>B)0.5  


で近似される。ここでD<sub>Ca</sub>は細胞質内におけるカルシウムの[[wikipedia:ja:拡散定数|拡散定数]](220 μm2/s)<ref name="ref2"><pubmed>9278532</pubmed></ref>、Bはキレート剤の濃度に相当する。 この式から推定される カルシウムドメインのサイズは図1のようになる。 例えば、細胞内カルシウムドメインに依存する機能が10 mM EGTAによってブロックされた場合、この機能に関わるカルシウムドメインのサイズは&gt; 94 nmと推定される。10 mM EGTA によってはブロックされないが1 mM BAPTAによって完全にブロックされる場合は23 nm- 94 nm、10 mM BAPTAでブロックされない場合は&lt; 7.4 nmと推定される。
で与えられる。ここでD<sub>Ca</sub>は細胞質内におけるカルシウムの[[wikipedia:ja:拡散定数|拡散定数]](220 μm2/s)<ref name="ref2"><pubmed>9278532</pubmed></ref>、Bはキレート剤の濃度に相当する。 この式から算定されるカルシウムドメインのλは図1のようになる。 例えば、細胞内に10 mM EGTAが存在すると起点から94 nm離れた位置におけるカルシウム濃度は起点濃度の1/e(37%)となる。同様に、細胞内に1 mM BAPTAが存在する場合のCa拡散の長さ定数は23 nmと算定される(図1b)。したがって、一定濃度のEGTAまたはBAPTAを細胞内に注入し、それによるCa依存性機能の抑制率を測定することによって、この機能に関わるカルシウムドメインのサイズを推定することができる。


==マイクロドメインとナノドメイン  ==
==マイクロドメインとナノドメイン  ==


 便宜上、カルシウムドメインのサイズが10-20 nm以下のものをナノドメイン、100-200 nm以上のものをマイクロドメインと呼び分けることが行われている<ref name="ref3"><pubmed>9539117</pubmed></ref>。しかし一方「マイクロドメイン」はカルシウムドメインの総称としても使われるので注意を要する。
 便宜上、カルシウムドメインのサイズが10-20 nm以下のものをナノドメイン、100-200 nm以上のものをマイクロドメインと呼び分けることが行われている<ref name="ref3"><pubmed>9539117</pubmed></ref>。例えば、「ナノドメインCaに依存する小胞開口放出」のように使われている。しかし一方「マイクロドメイン」はカルシウムドメインの総称としても使われているので注意を要する。


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==