「恐怖条件づけ」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
37行目: 37行目:


 消去を説明する上で、重要な点は、消去学習が進行しても、条件づけそのもの(条件づけ記憶)が失われるわけではないことである。消去学習から長期間経過後に、条件刺激を提示すると再び条件反射が現れる(spontaneous recovery)<ref name=ref11><pubmed>17160066</pubmed></ref> <ref name=ref12><pubmed>12464700</pubmed></ref>。また、消去学習後に恐怖条件づけが成立しないような弱い非条件刺激を与えても、条件刺激に対する条件反射が復活する(reinstatement)<ref name=ref11 /> <ref name=ref13><pubmed>11868238</pubmed></ref>。さらに、恐怖音条件づけを例にすると、ある文脈(電気ショックを受けたものとは異なるチャンバー)において、音を提示し続けて消去を誘導しても、さらに異なる文脈(別のチャンバーや電気ショックを受けたチャンバー)において音を提示すると、恐怖反応が再び表出する(renewal)<ref name=ref11 /> <ref name=ref14><pubmed>16198302</pubmed></ref>。以上のような観察から、消去学習後にも、条件づけは保持されていることが示されている。
 消去を説明する上で、重要な点は、消去学習が進行しても、条件づけそのもの(条件づけ記憶)が失われるわけではないことである。消去学習から長期間経過後に、条件刺激を提示すると再び条件反射が現れる(spontaneous recovery)<ref name=ref11><pubmed>17160066</pubmed></ref> <ref name=ref12><pubmed>12464700</pubmed></ref>。また、消去学習後に恐怖条件づけが成立しないような弱い非条件刺激を与えても、条件刺激に対する条件反射が復活する(reinstatement)<ref name=ref11 /> <ref name=ref13><pubmed>11868238</pubmed></ref>。さらに、恐怖音条件づけを例にすると、ある文脈(電気ショックを受けたものとは異なるチャンバー)において、音を提示し続けて消去を誘導しても、さらに異なる文脈(別のチャンバーや電気ショックを受けたチャンバー)において音を提示すると、恐怖反応が再び表出する(renewal)<ref name=ref11 /> <ref name=ref14><pubmed>16198302</pubmed></ref>。以上のような観察から、消去学習後にも、条件づけは保持されていることが示されている。
[[image:恐怖条件づけの図2.jpg|thumb|350px|'''図2.恐怖条件づけ回路'''<br>げっ歯類を用いた解析に基づいた扁桃体内神経回路図。恐怖条件づけを制御する投射経路を黒矢印で示した<ref name=ref26><pubmed>22036561</pubmed></ref>。]]
[[image:恐怖条件付けの図2.jpg|thumb|350px|'''図2.恐怖条件づけ回路'''<br>げっ歯類を用いた解析に基づいた扁桃体内神経回路図。恐怖条件づけを制御する投射経路を黒矢印で示した<ref name=ref26><pubmed>22036561</pubmed></ref>。]]
 
== 恐怖条件づけを制御する脳領野 ==
== 恐怖条件づけを制御する脳領野 ==
 薬理学的解析や損傷実験により、恐怖条件づけの獲得、その後の恐怖記憶の形成、貯蔵、そして、[[想起]]には[[扁桃体]]が中心的な役割を果たすことが明らかにされている<ref name=ref15><pubmed>3954873</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>9267646</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>1575447</pubmed></ref>。一方、恐怖文脈条件づけには、[[海馬]]機能も必須であることが明らかにされている<ref name=ref18><pubmed>11261775</pubmed></ref>。このような研究を通して、恐怖音条件づけは扁桃体、一方、恐怖文脈条件づけは扁桃体と海馬の両方を責任領野とすることが示されている<ref name=ref19><pubmed>1590953</pubmed></ref>。ヒトにおいても、げっ歯類と同様に、恐怖条件づけには扁桃体が重要であることも観察されている<ref name=ref20><pubmed>9620698</pubmed></ref>。
 薬理学的解析や損傷実験により、恐怖条件づけの獲得、その後の恐怖記憶の形成、貯蔵、そして、[[想起]]には[[扁桃体]]が中心的な役割を果たすことが明らかにされている<ref name=ref15><pubmed>3954873</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>9267646</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>1575447</pubmed></ref>。一方、恐怖文脈条件づけには、[[海馬]]機能も必須であることが明らかにされている<ref name=ref18><pubmed>11261775</pubmed></ref>。このような研究を通して、恐怖音条件づけは扁桃体、一方、恐怖文脈条件づけは扁桃体と海馬の両方を責任領野とすることが示されている<ref name=ref19><pubmed>1590953</pubmed></ref>。ヒトにおいても、げっ歯類と同様に、恐怖条件づけには扁桃体が重要であることも観察されている<ref name=ref20><pubmed>9620698</pubmed></ref>。

案内メニュー