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[[ファイル:Asano ERM proteins Fig2.png|サムネイル|'''図2. ERMタンパク質のリン酸化と、膜タンパク質およびアクチン細胞骨格との結合'''<br>N末端のFERMドメイン(赤〇)とC末端領域(青色)が相互作用し、アクチン細胞骨格と結合不能な「閉じた」不活性型構造をとる。FERMドメインのF3部位がPIP2に結合し、PKCやLOK、SLK、RhoキナーゼによってC末端ドメインのThr残基 (マーリンはSer残基) がリン酸化され (赤い星印)、「開いた」活性型構造となる。ERMタンパク質は単一の膜貫通領域をもつ細胞接着タンパク質と直接に (図左)、あるいは膜輸送体や受容体と直接または間接的に結合する (図右では足場タンパク質であるNHERFを介した間接的結合を示す)。]] | [[ファイル:Asano ERM proteins Fig2.png|サムネイル|'''図2. ERMタンパク質のリン酸化と、膜タンパク質およびアクチン細胞骨格との結合'''<br>N末端のFERMドメイン(赤〇)とC末端領域(青色)が相互作用し、アクチン細胞骨格と結合不能な「閉じた」不活性型構造をとる。FERMドメインのF3部位がPIP2に結合し、PKCやLOK、SLK、RhoキナーゼによってC末端ドメインのThr残基 (マーリンはSer残基) がリン酸化され (赤い星印)、「開いた」活性型構造となる。ERMタンパク質は単一の膜貫通領域をもつ細胞接着タンパク質と直接に (図左)、あるいは膜輸送体や受容体と直接または間接的に結合する (図右では足場タンパク質であるNHERFを介した間接的結合を示す)。]] | ||
== 構造 == | == 構造 == | ||
N末端およびC末端領域で高いアミノ酸配列相同性を示す。N末端には約300アミノ酸残基から構成される[[FERMドメイン]]をもち、3つのサブドメイン ( | N末端およびC末端領域で高いアミノ酸配列相同性を示す。N末端には約300アミノ酸残基から構成される[[FERMドメイン]]をもち、3つのサブドメイン (F<sub>1</sub>, F<sub>2</sub>, F<sub>3</sub>) からなる<ref name=Edwards2001><pubmed>11401550</pubmed></ref><ref name=Smith2003><pubmed>12429733</pubmed></ref> [6][7]。FERMドメインは、[[膜タンパク質]]<ref name=Kawaguchi2017><pubmed>28381792</pubmed></ref>[8]や[[足場タンパク質]]<ref name=Reczek1997><pubmed>9314537</pubmed></ref><ref name=Takeda2003><pubmed>14712354</pubmed></ref>[9][10]、[[Rhoファミリー低分子量Gタンパク質]]調節に関わるタンパク質<ref name=Takahashi1997><pubmed>9287351</pubmed></ref><ref name=Takahashi1998><pubmed>9681826</pubmed></ref>[11][12] や、膜[[リン脂質]]に含まれる[[ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸]] ([[PIP2]]) <ref name=Niggli1995><pubmed>7498535</pubmed></ref><ref name=Barret2000><pubmed>11086008</pubmed></ref>[13][14] などと結合する。一方、エズリン、ラディキシン、モエシン のC末端領域では、特に34アミノ酸残基がファミリー間で高度に保存されており、アクチン細胞骨格と結合する。マーリンではこの部分での相同性が低い<ref name=Turunen1994><pubmed>8089177</pubmed></ref>[15]。これらN末端とC末端のドメインは[[αヘリックス]]構造によって接続されている<ref name=Kawaguchi2022><pubmed>35328667</pubmed></ref> [16] ('''図1''')。 | ||
おもにC末端ドメインの[[リン酸化]]によって活性が制御される。[[脱リン酸化]]状態では、N末端のFERMドメインとC末端ドメインとが相互作用し、C末端ドメインに存在するアクチン結合部位がマスクされ、アクチン線維と結合できない「閉じた」不活性型となる<ref name=Kawaguchi2017><pubmed>28381792</pubmed></ref>[8]。FERMドメインにPIP2が結合し<ref name=Barret2000 /> [14]、続いてC末端ドメインに存在する[[トレオニン]]あるいは[[セリン]]残基 ([[マウス]]でエズリンのThr567、ラディキシンのThr564、モエシンのThr558、マーリンのSer518) が[[Lymphocyte-Oriented Kinase]] ([[LOK]]) や[[ | おもにC末端ドメインの[[リン酸化]]によって活性が制御される。[[脱リン酸化]]状態では、N末端のFERMドメインとC末端ドメインとが相互作用し、C末端ドメインに存在するアクチン結合部位がマスクされ、アクチン線維と結合できない「閉じた」不活性型となる<ref name=Kawaguchi2017><pubmed>28381792</pubmed></ref>[8]。FERMドメインにPIP2が結合し<ref name=Barret2000 /> [14]、続いてC末端ドメインに存在する[[トレオニン]]あるいは[[セリン]]残基 ([[マウス]]でエズリンのThr567、ラディキシンのThr564、モエシンのThr558、マーリンのSer518) が[[Lymphocyte-Oriented Kinase]] ([[LOK]]) や[[タンパク質リン酸化酵素C]] ([[protein kinase C]], [[PKC]])、[[STE20様タンパク質リン酸化酵素]] ([[SLK]])、[[Rhoキナーゼ]]によってリン酸化されることでFERMドメインとC末端ドメインの間の結合が解離し、「開かれた」活性型構造となる<ref name=Kawaguchi2017 /><ref name=Hirao1996><pubmed>8858161</pubmed></ref><ref name=Viswanatha2012><pubmed>23209304</pubmed></ref><ref name=Zaman2021><pubmed>33836044</pubmed></ref>[8][17][18][19] ('''図2''')。後述するように、ERMタンパク質には、これ以外にも多数のリン酸化部位が存在し、リン酸化を受けてシグナル伝達などにかかわる。 | ||
== 発現== | == 発現== | ||