「シナプトタグミン」の版間の差分

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== シナプス小胞輸送以外で機能するシナプトタグミンファミリー ==
== シナプス小胞輸送以外で機能するシナプトタグミンファミリー ==


 シナプス小胞の輸送以外の神経機能に関わるシナプトタグミンファミリーとしては、[[シナプトタグミン4]]、[[シナプトタグミン7|7]]、[[シナプトタグミン10|10]]、[[シナプトタグミン14|14]]などが挙げられる。シナプトタグミン4の局在や機能に関してはこれまで様々な報告があるが、最近の知見ではシナプス小胞ではなく[[ペプチド性分泌因子]]などの放出に関与する[[有芯小胞]](LDCV: large dense-core vesicle)への局在が有力視されている<ref name=ref43><pubmed>21153436</pubmed></ref>。例えば、[[視床下部]]における[[オキシトシン]]や[[バソプレシン]]の分泌<ref name=ref44><pubmed>19136969</pubmed></ref> <ref name=ref45><pubmed>21315262</pubmed></ref>や海馬神経細胞における[[脳由来神経栄養因子]](BDNF)の放出制御に関与することが明らかになっている<ref name=ref46><pubmed>19448629</pubmed></ref>。また、シナプトタグミン4は神経細胞以外に[[アストロサイト]]にも発現しており、アストロサイトからの[[グルタミン酸]]や[[ATP]]の放出に関与することが報告されている<ref name=ref47><pubmed>15197251</pubmed></ref>。さらに、ショウジョウバエにおいては、シナプトタグミン4はシナプス前部ではなくポストシナプスにおけるカルシウムセンサーとして機能することが報告されている<ref name=ref48><pubmed>16272123</pubmed></ref> <ref name=ref49><pubmed>19822673</pubmed></ref>。なお、シナプトタグミン4は動物種、細胞種やカルシウム濃度の条件によって開口放出を正に制御する場合と負に制御する場合があることから、その機能については今後さらなる解析が必要と考えられている<ref name=ref43><pubmed>21153436</pubmed></ref>。
 シナプス小胞の輸送以外の神経機能に関わるシナプトタグミンファミリーとしては、[[シナプトタグミン4]]、[[シナプトタグミン7|7]]、[[シナプトタグミン10|10]]、14などが挙げられる。シナプトタグミン4の局在や機能に関してはこれまで様々な報告があるが、最近の知見ではシナプス小胞ではなく[[ペプチド性分泌因子]]などの放出に関与する有芯小胞(LDCV: large dense-core vesicle)への局在が有力視されている<ref name=ref43><pubmed>21153436</pubmed></ref>。例えば、[[視床下部]]における[[オキシトシン]]や[[バソプレシン]]の分泌<ref name=ref44><pubmed>19136969</pubmed></ref> <ref name=ref45><pubmed>21315262</pubmed></ref>や海馬神経細胞における[[脳由来神経栄養因子]](BDNF)の放出制御に関与することが明らかになっている<ref name=ref46><pubmed>19448629</pubmed></ref>
 
 また、シナプトタグミン4は神経細胞以外に[[アストロサイト]]にも発現しており、アストロサイトからの[[グルタミン酸]]や[[ATP]]の放出に関与することが報告されている<ref name=ref47><pubmed>15197251</pubmed></ref>。さらに、ショウジョウバエにおいては、シナプトタグミン4はシナプス前部ではなくポストシナプスにおけるカルシウムセンサーとして機能することが報告されている<ref name=ref48><pubmed>16272123</pubmed></ref> <ref name=ref49><pubmed>19822673</pubmed></ref>。なお、シナプトタグミン4は動物種、細胞種やカルシウム濃度の条件によって開口放出を正に制御する場合と負に制御する場合があることから、その機能については今後さらなる解析が必要と考えられている<ref name=ref43><pubmed>21153436</pubmed></ref>。


 シナプトタグミン10も[[嗅球]]の神経細胞において有芯小胞に局在し、[[インスリン様成長因子1]](IGF-1)の放出を制御することで嗅球の神経発生に関与することが最近明らかになっている<ref name=ref50><pubmed>21496647</pubmed></ref>。シナプトタグミン7は海馬神経細胞におけるシナプス小胞の開口放出には関与しないが、[[交感神経]]細胞の[[神経突起]]の伸長過程を制御することが報告されている<ref name=ref51><pubmed>16641243</pubmed></ref>。また、シナプトタグミン14のC2B領域のアミノ酸変異により遺伝性の[[脊髄小脳変性症]]が発症することから<ref name=ref52><pubmed>21835308</pubmed></ref>、このアイソフォームの小脳発達過程での重要性が示唆されているが、詳細な機能は明らかになっていない。
 シナプトタグミン10も[[嗅球]]の神経細胞において有芯小胞に局在し、[[インスリン様成長因子1]](IGF-1)の放出を制御することで嗅球の神経発生に関与することが最近明らかになっている<ref name=ref50><pubmed>21496647</pubmed></ref>。シナプトタグミン7は海馬神経細胞におけるシナプス小胞の開口放出には関与しないが、[[交感神経]]細胞の[[神経突起]]の伸長過程を制御することが報告されている<ref name=ref51><pubmed>16641243</pubmed></ref>。また、シナプトタグミン14のC2B領域のアミノ酸変異により遺伝性の[[脊髄小脳変性症]]が発症することから<ref name=ref52><pubmed>21835308</pubmed></ref>、このアイソフォームの小脳発達過程での重要性が示唆されているが、詳細な機能は明らかになっていない。


 他のシナプトタグミンアイソフォームの神経細胞における局在や機能に関しては現時点では不明であるが、海馬神経細胞に[[蛍光タンパク質]]を融合したシナプトタグミンアイソフォームを1つずつ発現させ、その機能部位の同定が現在試みられている<ref name=ref53><pubmed>22398727</pubmed></ref>。それぞれのシナプトタグミンアイソフォームが神経系において独自の機能を果たしている可能性が高く、今後のさらなる機能解析が期待されている。
 他のシナプトタグミンアイソフォームの神経細胞における局在や機能に関しては現時点では不明であるが、海馬神経細胞に[[蛍光タンパク質]]を融合したシナプトタグミンアイソフォームを1つずつ発現させ、その機能部位の同定が現在試みられている<ref name=ref53><pubmed>22398727</pubmed></ref>。それぞれのシナプトタグミンアイソフォームが神経系において独自の機能を果たしている可能性が高く、今後のさらなる機能解析が期待されている。
 
== 参考文献 ==
== 参考文献 ==


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