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==病態== | ==病態== | ||
=== 染色体異常 === | === 染色体異常 === | ||
21番染色体が1本余分で計3本(トリソミー)になっており、このことが発症の原因とされる。染色体の不分離や転座によっておこる。染色体の不分離によって起こるケースは全体の95%を占める。2011年の[http://www.gencodegenes.org/ GENCODEプロジェクト]の報告によると、21番染色体上には696個の遺伝子(タンパク質をコードするものは235個)が存在するとされるが、これらの遺伝子の発現量の過剰がダウン症の発症に関わると考えられるが、実際にどの遺伝子がどの症状の発症にどのように関わるのかは明らかでない。 | 21番染色体が1本余分で計3本(トリソミー)になっており、このことが発症の原因とされる。染色体の不分離や転座によっておこる。染色体の不分離によって起こるケースは全体の95%を占める。2011年の[http://www.gencodegenes.org/ GENCODEプロジェクト]の報告によると、21番染色体上には696個の遺伝子(タンパク質をコードするものは235個)が存在するとされるが、これらの遺伝子の発現量の過剰がダウン症の発症に関わると考えられるが、実際にどの遺伝子がどの症状の発症にどのように関わるのかは明らかでない。 | ||
ごくわずかの症例で第21染色体の一部のみがトリソミーになっているものが見られる。これらの症例の症状とトリソミーになっている領域を比較することにより、それぞれの症状に責任のある遺伝子の場所をある程度推定することが出来るとして複数の研究が報告されている。 | ごくわずかの症例で第21染色体の一部のみがトリソミーになっているものが見られる。これらの症例の症状とトリソミーになっている領域を比較することにより、それぞれの症状に責任のある遺伝子の場所をある程度推定することが出来るとして複数の研究が報告されている。 | ||
Niebuhrらは[[アミロイド前駆体タンパク質]]([[APP]])から[[wikipedia:ja:テロメア|テロメア]]を部分トリソミーでもつ患者がダウン症の主な症状を有することから、この領域が重要であるとした<ref name=ref2><pubmed>4276065</pubmed></ref>。更に、[[セントロメア]]から[[スーパーオキシドディスムターゼ]]([[SOD]])までをトリソミーで有する患者では精神遅滞の程度が軽いとする報告がある<ref name=ref3><pubmed>2149936</pubmed></ref>。Delabarらは複数の部分トリソミー患者を検討することによりD21S55を含む4Mbの領域が重要としダウン症責任領域(DSCR)と名付けた<ref name=ref4><pubmed>8055322</pubmed></ref>。 | |||
一方、Korenbergらは複数の領域が発症に関わるとし、DSCRのような単一の領域が主な症状すべてに責任を持つとする説を否定している<ref name=ref5><pubmed>8197171</pubmed></ref>。又、精神遅滞については軽重の差こそあれ重複のない異なる領域を部分トリソミーで有する複数の患者で見られることから、その発症にかかわる遺伝子が第21染色体上に複数あることは間違いない。 | 一方、Korenbergらは複数の領域が発症に関わるとし、DSCRのような単一の領域が主な症状すべてに責任を持つとする説を否定している<ref name=ref5><pubmed>8197171</pubmed></ref>。又、精神遅滞については軽重の差こそあれ重複のない異なる領域を部分トリソミーで有する複数の患者で見られることから、その発症にかかわる遺伝子が第21染色体上に複数あることは間違いない。 | ||
===動物モデル=== | ===動物モデル=== | ||
[[image:ダウン症1.png|thumb|300px|'''図1.部分トリソミーを持つダウン症モデルマウス'''<br>動物モデルの項を参照。]] | |||
ヒト第21染色体に対応するのがマウス第16染色体の一部であり、現在までに、この第16染色体の部分トリソミーを持ついくつかのマウスがダウン症のモデルとして報告されている。Ts65Dn<ref name=ref6><pubmed>2147289</pubmed></ref>およびTs2Cje<ref name=ref7><pubmed>15859352</pubmed></ref>はAPPから[[Mx1]]までの15.6Mbの部分をトリソミーで持ち、Ts1Cje<ref name=ref8><pubmed>9600952</pubmed></ref>は[[SOD1]]からMX1までの9.8Mbの大きさをトリソミーで持つ。これらのマウスでは[[モリス水迷路テスト]]などの行動学的試験が行われ精神遅滞様の行動異常が確認されているが、Ts1CjeはTs65Dn,Ts2Cjeに比べて[[学習障害]]の程度が軽く、ダウン症患者でみられる[[コリン作動性ニューロン]]の変性はTs65Dnのみで見られるなどの違いが確認されている<ref name=ref9><pubmed>7550346</pubmed></ref> <ref name=ref8 /> <ref name=ref7 />。 | ヒト第21染色体に対応するのがマウス第16染色体の一部であり、現在までに、この第16染色体の部分トリソミーを持ついくつかのマウスがダウン症のモデルとして報告されている。Ts65Dn<ref name=ref6><pubmed>2147289</pubmed></ref>およびTs2Cje<ref name=ref7><pubmed>15859352</pubmed></ref>はAPPから[[Mx1]]までの15.6Mbの部分をトリソミーで持ち、Ts1Cje<ref name=ref8><pubmed>9600952</pubmed></ref>は[[SOD1]]からMX1までの9.8Mbの大きさをトリソミーで持つ。これらのマウスでは[[モリス水迷路テスト]]などの行動学的試験が行われ精神遅滞様の行動異常が確認されているが、Ts1CjeはTs65Dn,Ts2Cjeに比べて[[学習障害]]の程度が軽く、ダウン症患者でみられる[[コリン作動性ニューロン]]の変性はTs65Dnのみで見られるなどの違いが確認されている<ref name=ref9><pubmed>7550346</pubmed></ref> <ref name=ref8 /> <ref name=ref7 />。 | ||