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上記したように14-3-3ファミリーのアミノ酸配列は生物種を超えて高度に保存されているが、U字構造内部の配列はとりわけ高く保存されている<ref name=Liu1995 /> [10]('''図1''')。このU字構造と[[nonsense mediated mRNA decay factor]] ([[SMG7]])タンパク質([[ナンセンスmRNA]]の崩壊因子)のN末端領域が形成する構造は、立体的に相同であることが報告されている<ref name=Fukuhara2005><pubmed>15721257</pubmed></ref>[11]。 | 上記したように14-3-3ファミリーのアミノ酸配列は生物種を超えて高度に保存されているが、U字構造内部の配列はとりわけ高く保存されている<ref name=Liu1995 /> [10]('''図1''')。このU字構造と[[nonsense mediated mRNA decay factor]] ([[SMG7]])タンパク質([[ナンセンスmRNA]]の崩壊因子)のN末端領域が形成する構造は、立体的に相同であることが報告されている<ref name=Fukuhara2005><pubmed>15721257</pubmed></ref>[11]。 | ||
[[ファイル:Ichimura 14-3-3 Fig2.png|サムネイル|'''図2. 14-3-3オルソログの系統樹'''<br>14-3-3オルソログ配列をClustalWを用いてアラインメントし、FastTreeアルゴリズムを用いて作成した。AT, ''Arabidopsis thaliana''; CE, ''C. elegans''; DM, ''Drosophila melanogaster''; DR, ''Danio rerio''; GG, ''Gallus gallus''; HS, ''Homo sapiens''; SC, ''Saccharomyces cerevisiae''; SP, ''Schizosaccharomyces pombe''; and XL, ''Xenopus laevis''.<br>Aristizábal-Corralesら<ref name=Aristizabal-Corrales2012><pubmed>22328524</pubmed></ref>から改変して転載。]] | |||
== ファミリー == | == ファミリー == | ||
複数の14-3-3アイソフォームが真核生物([[動物界]]、[[植物界]]、[[菌界]])を構成するさまざまな細胞から見つかっている。 | 複数の14-3-3アイソフォームが真核生物([[動物界]]、[[植物界]]、[[菌界]])を構成するさまざまな細胞から見つかっている。 | ||
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ヒトでは9つのアイソフォーム(α~σアイソフォーム)が報告されており<ref name=Shinkai1996 /> [8]、これらのうち、αとδアイソフォームは、それぞれβとζアイソフォームのリン酸化型である<ref name=Aitken1995><pubmed>7890696</pubmed></ref>[12]。同様のアイソフォームは、[[ラット]]、[[マウス]]、[[ウシ]]、[[ヒツジ]]、[[ニワトリ]]、[[ツメガエル]]、[[ゼブラフィシュ]]でも確認されている。各アイソフォームは種内でもまた種間でも高い配列保存が見られる。 | ヒトでは9つのアイソフォーム(α~σアイソフォーム)が報告されており<ref name=Shinkai1996 /> [8]、これらのうち、αとδアイソフォームは、それぞれβとζアイソフォームのリン酸化型である<ref name=Aitken1995><pubmed>7890696</pubmed></ref>[12]。同様のアイソフォームは、[[ラット]]、[[マウス]]、[[ウシ]]、[[ヒツジ]]、[[ニワトリ]]、[[ツメガエル]]、[[ゼブラフィシュ]]でも確認されている。各アイソフォームは種内でもまた種間でも高い配列保存が見られる。 | ||
[[線虫]]([[C. elegans|''C. elegans'']])と[[ショウジョウバエ]]([[D. melanogaster|''D. melanogaster'']])では、それぞれ2つのアイソフォーム([[PAR-5]]と[[FTT-2]]:[[Dm14-3-3ε]]と[[Dm14-3-3ζ]])の発現が検出されている<ref name=Berdichevsky2006><pubmed>16777605</pubmed></ref> | [[線虫]]([[C. elegans|''C. elegans'']])と[[ショウジョウバエ]]([[D. melanogaster|''D. melanogaster'']])では、それぞれ2つのアイソフォーム([[PAR-5]]と[[FTT-2]]:[[Dm14-3-3ε]]と[[Dm14-3-3ζ]])の発現が検出されている<ref name=Berdichevsky2006><pubmed>16777605</pubmed></ref><ref name=Skoulakis1996><pubmed>8938125</pubmed></ref><ref name=Benton2002><pubmed>12431373</pubmed></ref>[13][14][15]。 | ||
<ref name=Skoulakis1996><pubmed>8938125</pubmed></ref><ref name=Benton2002><pubmed>12431373</pubmed></ref>[13][14][15]。 | |||
植物では[[シロイヌナズナ]]で13のアイソフォーム(μ~χアイソフォーム)の存在が確認されている<ref name=DeLille2001><pubmed>11351068</pubmed></ref>[16]。また、[[ワタ]]には6つ、[[イネ]]には8つ、[[オオムギ]]には5つ、[[タバコ]]には17の潜在的アイソフォームの存在が報告されている<ref name=Denison2011><pubmed>21907297</pubmed></ref>[17]。菌類の[[出芽酵母]]([[S. cerevisiae|''S. cerevisiae'']])と[[分裂酵母]]([[S. pombe|''S. pombe'']])では、それぞれ2つのアイソフォーム([[BMH1]]と[[BMH2]];[[Rad24]]と[[Rad25]])が見つかっている<ref name=vanHeusden1995><pubmed>7744048</pubmed></ref><ref name=Peng1997><pubmed>9278512</pubmed></ref>[18][19]。 | 植物では[[シロイヌナズナ]]で13のアイソフォーム(μ~χアイソフォーム)の存在が確認されている<ref name=DeLille2001><pubmed>11351068</pubmed></ref>[16]。また、[[ワタ]]には6つ、[[イネ]]には8つ、[[オオムギ]]には5つ、[[タバコ]]には17の潜在的アイソフォームの存在が報告されている<ref name=Denison2011><pubmed>21907297</pubmed></ref>[17]。菌類の[[出芽酵母]]([[S. cerevisiae|''S. cerevisiae'']])と[[分裂酵母]]([[S. pombe|''S. pombe'']])では、それぞれ2つのアイソフォーム([[BMH1]]と[[BMH2]];[[Rad24]]と[[Rad25]])が見つかっている<ref name=vanHeusden1995><pubmed>7744048</pubmed></ref><ref name=Peng1997><pubmed>9278512</pubmed></ref>[18][19]。 | ||
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==== 安定化物質 ==== | ==== 安定化物質 ==== | ||
14-3-3タンパク質-タンパク質間相互作用の安定化剤としては[[真菌]]が産生する[[ジテルペン配糖体]]である[[フシコクシン-A]]([[FC-A]])とそれの誘導体である[[コチレニン-A]]([[CN-A]])などがある。これらは14-3-3と[[H+-exporting P2-type ATPase|H<sup>+</sup>-exporting P2-type ATPase]] (PMA2) <ref name=Wurtele2003><pubmed>12606564</pubmed></ref>[80]、[[嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子]] ([[cystic fibrosis transmembrane conductance regulator]], [[CFTR]])<ref name=Stevers2016><pubmed>26888287</pubmed></ref>[81]、[[Raf-1]]<ref name=Molzan2013><pubmed>23808890</pubmed></ref>[82]とのタンパク質-タンパク質間を安定化することが報告されている。 | 14-3-3タンパク質-タンパク質間相互作用の安定化剤としては[[真菌]]が産生する[[ジテルペン配糖体]]である[[フシコクシン-A]]([[FC-A]])とそれの誘導体である[[コチレニン-A]]([[CN-A]])などがある。これらは14-3-3と[[H+-exporting P2-type ATPase|H<sup>+</sup>-exporting P2-type ATPase]] (PMA2) <ref name=Wurtele2003><pubmed>12606564</pubmed></ref>[80]、[[嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子]] ([[cystic fibrosis transmembrane conductance regulator]], [[CFTR]])<ref name=Stevers2016><pubmed>26888287</pubmed></ref>[81]、[[Raf-1]]<ref name=Molzan2013><pubmed>23808890</pubmed></ref>[82]とのタンパク質-タンパク質間を安定化することが報告されている。 | ||
[[ファイル:Ichimura 14-3-3 Fig3.png|サムネイル|'''図3. タンパク質レベルにおける14-3-3の働き'''<br>14-3-3はタンパク質キナーゼによってリン酸化された標的と相互作用することで、 (1)標的酵素の活性を調節する、(2)標的タンパク質の細胞内輸送を制御する、(3)標的分子を安定化させる、など多彩な役割をもつことが知られている。]] | |||
=== タンパク質レベルにおける役割 === | === タンパク質レベルにおける役割 === | ||
14-3-3が標的とするタンパク質は現在300種を超えており、その中には細胞内[[シグナル伝達]]経路を構成する一連の酵素・タンパク質が共通して含まれている<ref name=Kakiuchi2007><pubmed>17559233</pubmed></ref>[29]。こうした14-3-3の標的には、[[タンパク質リン酸化酵素]]、[[ユビキチンリガーゼ]]、代謝酵素、[[転写因子]]、[[細胞骨格]]成分、[[イオンチャンネル]]などがあげられる。14-3-3の結合は、標的リン酸化タンパク質のコンフォメーションや分子間相互作用に影響を与えることで<ref name=Tzivion2002><pubmed>11709560</pubmed></ref><ref name=Yaffe1997><pubmed>9428519</pubmed></ref><ref name=Obsil2001><pubmed>11336675</pubmed></ref><ref name=Yaffe2002><pubmed>11911880</pubmed></ref><ref name=Park2019><pubmed>31581174</pubmed></ref>[24][26][30][31][32]、結果として(1)標的酵素の活性を調節する、(2)標的タンパク質の細胞内輸送(局在)を制御する、(3)標的分子を安定化させる、など多彩な役割をもつことが知られている('''図3''')。14-3-3の相互作用にはアイソフォーム特異性があることが報告されている<ref name=Shinkai1996><pubmed>8721374</pubmed></ref>[8]。 | 14-3-3が標的とするタンパク質は現在300種を超えており、その中には細胞内[[シグナル伝達]]経路を構成する一連の酵素・タンパク質が共通して含まれている<ref name=Kakiuchi2007><pubmed>17559233</pubmed></ref>[29]。こうした14-3-3の標的には、[[タンパク質リン酸化酵素]]、[[ユビキチンリガーゼ]]、代謝酵素、[[転写因子]]、[[細胞骨格]]成分、[[イオンチャンネル]]などがあげられる。14-3-3の結合は、標的リン酸化タンパク質のコンフォメーションや分子間相互作用に影響を与えることで<ref name=Tzivion2002><pubmed>11709560</pubmed></ref><ref name=Yaffe1997><pubmed>9428519</pubmed></ref><ref name=Obsil2001><pubmed>11336675</pubmed></ref><ref name=Yaffe2002><pubmed>11911880</pubmed></ref><ref name=Park2019><pubmed>31581174</pubmed></ref>[24][26][30][31][32]、結果として(1)標的酵素の活性を調節する、(2)標的タンパク質の細胞内輸送(局在)を制御する、(3)標的分子を安定化させる、など多彩な役割をもつことが知られている('''図3''')。14-3-3の相互作用にはアイソフォーム特異性があることが報告されている<ref name=Shinkai1996><pubmed>8721374</pubmed></ref>[8]。 |