電位依存性カルシウムチャネル

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澤村 晴志朗、中尾 章人森 泰生
京都大学 工学系研究科 (研究院)
DOI:10.14931/bsd.2258 原稿受付日:2012年7月31日 原稿完成日:2013年8月12日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:voltage-gated calcium channel 独:spannungsabhängige Kalziumkanal 仏:canal calcique voltage dépendant

 形質膜越えのカルシウムイオン (Ca2+) 流入経路として、異なる活性化機構により開口するカルシウムチャネルが知られる。 それらの中でも膜電位脱分極によって開口する電位依存性カルシウムチャネル (Voltage-dependent calcium channel, VDCC) が最も深く研究されてきた。VDCCは神経細胞や筋細胞を始めとする興奮性細胞において、様々な分子と相互作用することにより神経伝達物質放出、収縮、遺伝子発現など様々なCa2+依存性の細胞応答を制御する。

分類、構造、発現

図1. VDCCのサブユニット構造
高電位活性化型のVDCCは、α1、α2δ、βおよびγサブユニットから成るヘテロ4量体を形成する。

 VDCCは、形質膜の脱分極を感知して活性化開口し、細胞外から細胞内へCa2+を選択的に透過させるイオンチャネルであり、細胞の電気的興奮をCa2+依存的な生理応答に変換する役割を担う。開口する電位によりVDCCは、高電位 (~−20 mV)で活性化するL型 (Cav1)および非L型 (Cav2) と低電位 (~−60 mV) で活性するT型 (Cav3) に大別される[1][2][3]。高電位活性化型のVDCCは、α1、α2δ、βおよびγサブユニットから成るヘテロ4量体を形成すると考えられている (図1)。

α1サブユニット

図2. α1サブユニットの進化系統樹

 電位センサーとチャネル孔を有するα1サブユニットは、おおよそ2000アミノ酸残基からなるタンパク質であり、膜貫通領域S1~S6の構造単位が4回繰り返す (リピートI~IV) 。S5領域とS6領域の間がCa2+を選択的に透過させるチャネル孔を形成し、S4領域が電位センサーとして働く。α1サブユニットは10種類の異なる遺伝子Cavによりコードされて、電気生理学的特性や薬理学的特性による機能分類 (L, P/Q, N, R, T) に対応付けられている (表1、図2)[4]

Ca2+電流 α1サブユニット 遺伝子 選択的阻害剤 主要な発現部位 主要な細胞機能
L型 Cav1.1 CACNA1S DHP, PAA, BTZ 骨格筋 筋収縮
Cav1.2 CACNA1C 心臓、脳 筋収縮、遺伝子発現、シナプス可塑性
Cav1.3 CACNA1D 内分泌組織、脳 ホルモン分泌、遺伝子発現、シナプス可塑性
Cav1.4 CACNA1F 網膜 神経伝達物質放出
P/Q型 Cav2.1 CACNA1A ω-アガトキシンIVA 神経伝達物質放出、ホルモン分泌
N型 Cav2.2 CACNA1B ω-コノトキシンGVIA 神経伝達物質放出、ホルモン分泌
R型 Cav2.3 CACNA1E SNX-482 神経伝達物質放出
T型 Cav3.1 CACNA1G 脳、心臓 ペースメイキング、反復性発火
Cav3.2 CACNA1H 脳、心臓 ペースメイキング、反復性発火
Cav3.3 CACNA1I ペースメイキング、反復性発火

表1. α1サブユニットの分類とその特性
α1サブユニットには10種類のアイソフォームが存在し、その電気生理学的特性や薬理学的特性によって分類、命名されている。


Cav1 (L型)

 L型 (Cav1) は遅い不活性化 (Long lasting) と大きな (Large) 単一チャネルコンダクタンスを有することから名づけられた[5]。ジヒドロピリジン(dihydropyridine, DHP)やフェニルアルキルアミン(phenylalkylamine, PAA)、ベンゾチアゼピン(benzothiazepine, BTZ)といったカルシウム拮抗薬の作用点である。Cav1.1は骨格筋、Cav1.2は心臓、Cav1.3は膵臓などの内分泌組織や脳、Cav1.4は網膜に主に発現している[3]

Cav2 (N, P/Q, R型)

 非L型 (Cav2) にはNP/QR型が含まれる。N型 (Cav2.2) には、L型ではない (Non-L) 、神経細胞に発現する (Neuronal) という意味がある[6]。ペプチド性のイモ貝Ω-コノトキシン GVIAにより選択的に阻害される[7]。P型は小脳プルキンエ (Purkinje) 細胞においてDHPとω-コノトキシン GVIAの両方に非感受性のCa2+電流として同定された[8]。クモ毒Ω-アガトキシンIVAによって選択的に阻害される[9]。Q型は、同じ遺伝子 (Cav2.1) のスプライスバリアントであると考えられており[11]、小脳顆粒細胞において初めて電流が同定された。Q型はP型よりω-アガトキシンIVAに対する親和性が低い[10]。R型 (Cav2.3) は小脳顆粒細胞においてDHP、ω-コノトキシン GVIA、ω-アガトキシンIVAによって阻害されない残りの成分 (Residual) という意味で名づけられ[11]タランチュラ毒素SNX-482によって選択的に阻害される[12]。これら非L型のVDCCは広く神経系に発現している[3]

Cav3 (T型)

 T型 (Cav3) は低電位 (~−60 mV) で活性化し、早い不活性化や遅い脱活性化 (一過的: Transient)、小さい (Tiny) 単一チャネルコンダクタンスを特徴とする[1][6]。T型は脳に最も豊富に発現する他、心臓のペースメーカー細胞にも発現している。T型は高閾値活性化型のVDCCとは異なり、α2δ、β、γサブユニットとの相互作用が確認されていない。

副サブユニット (α2δ、β、γ)

 α2δ、βおよびγサブユニットは、チャネル本体であるα1サブユニットの発現調節、機能調節や細胞内局在に重要であり、複数の遺伝子によってコードされている[13]

 大きな細胞外領域を有するα2δサブユニットは、単一の遺伝子にコードされるα2およびδがジスルフィド結合によって結ばれた二量体で、4種類のアイソフォームが知られる (α2δ1-4)。α2δサブユニットは、α1サブユニットの形質膜への輸送に働いている[14]。α1サブユニットのリピートIとIIをつなぐ細胞内リンカーに結合するβサブユニットは、4種類のアイソフォームが知られている (β1-4)。このβサブユニットは、α1サブユニットの形質膜における機能的な発現に重要であり[15]、VDCCの活性化や不活性化を促進する[16]。各アイソフォームには複数のスプライスバリアントが存在し、発現分布やチャネル機能の調節に違いがある[16]。γサブユニットは4回膜貫通のタンパク質であり、VDCCと相互作用することで不活性化曲線をシフトさせる[17]。γサブユニットには8種類のアイソフォームが存在し (γ1~8)、その中のいくつかのアイソフォームは、AMPA型グルタミン酸受容体 (2-amino-3-[3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolyl]propionic acid receptor) の輸送や機能調節を担う主要なタンパク質TARPs (Transmembrane AMPA receptor regulatory proteins) とも呼ばれている[17]

機能

 異なるαサブユニット (Cav) を含むVDCCは、神経伝達物質放出、シナプス可塑性、細胞の興奮性の調節、筋収縮、遺伝子発現など、異なる生理応答を制御する (図3)。

Cav1 (L型)

図4. α1サブユニットの構造
膜貫通領域S1~S6の構造単位が4回繰り返す (リピートI~IV) 。各リピートのS5領域とS6領域の間がCa2+を選択的に透過させるチャネル孔を形成し、S4領域が電位センサーとして働く。VDCCのβサブユニットはリピートI-II間のループに結合する。N, P/Q型VDCCのリピートII-III間のループには、に存在するタンパク質との相互作用部位 (Synprint)が保存されている。(calmodulin, CaM)やA kinase anchor protein(AKAP)、(calcineurin、CaN)はC末端側の細胞質領域に結合することが報告されている。

 L型は、骨格筋や心筋、平滑筋の収縮に始まり、ホルモンや神経伝達物質の放出、遺伝子発現まで様々な細胞応答に関わる。骨格筋の横行小管 (T管) に発現するCav1.1は、脱分極による構造変化を介してリアノジン受容体を直接活性化し、Ca2+放出を誘導することで筋収縮を引き起こす[18]。一方、心筋ではCav1.2からのCa2+流入がCa2+依存的にリアノジン受容体を活性化し、筋収縮を引き起こす[19]。Cav1.2およびCav1.3は、膵臓のβ細胞におけるインスリン分泌も制御している[20]。また、Cav1.3およびCav1.4は感覚受容細胞のリボンシナプスにおける神経伝達物質放出に関与している[4]聴覚有毛細胞ではCav1.3が[21]、網膜の光受容細胞ではCav1.4が神経伝達物質の放出を制御している[22]。神経細胞においては、L型は細胞体や細胞体近傍の樹状突起に局在しており、近い位置での細胞内Ca2+濃度 ([Ca2+]i) 上昇の引き金となり、下流で核内のシグナル伝達、およびCa2+濃度上昇を引き起こす[4]。L型は、遺伝子発現に重要なシグナル分子であるカルモジュリン、AKAPファミリー、チロシンリン酸化酵素であるSrc、脱リン酸化酵素であるカルシニューリン (calcineurin, CaN)などと共役して働き (図4)、cAMP response element binding protein (CREB ) [23]NFAT (Nuclear factor of activated T-cells) といった転写因子の活性を調節することが知られる[4]

Cav2 (N, P/Q, R型)

 N、P/Q、R型は主に神経系に発現し、神経伝達物質放出を始めとする神経機能を制御する[24][25]活動電位シナプス前終末に達すると、N、P/Q、R型などのVDCCを介したCa2+流入が引き起こされ、神経伝達物質が放出される。

 シナプス前終末において神経伝達物質放出を効率的に制御するため、シナプス小胞膜融合を制御するSNARE (soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor ) タンパク質 (シンタキシンSNAP-25VAMP/シナプトブレビン)やCa2+センサーと考えられているシナプトタグミン足場タンパク質として働くRIM (Rab-3 interacting molecule) ファミリー、CASTMunc13バソンピッコロといったタンパク質群とVDCCは巨大タンパク質複合体である、アクティブゾーンを形成している。N、P/Q型のα1サブユニットのII-IIIリンカーにはアクティブゾーンに存在するタンパク質との相互作用部位 (Synprint ; synaptic protein interaction) が保存されており、シンタキシンやSNAP-25、CSP (cysteine string protein)、RIM、シナプトブレビンと相互作用する (図4) [4][26]。シンタキシンやSNAP-25はsynprint領域を介してVDCCと相互作用し、チャネルの不活性化状態を安定化させることでチャネル活性を抑制することが報告されている[26]

 また、βサブユニットもCASTやRIM、シナプトタグミンといったアクティブゾーンに存在するタンパク質と相互作用する (図4) [27][28][29]。これらのタンパク質との相互作用は、神経伝達物質放出複合体を形成し、VDCCの機能修飾も担う。RIM1のα型バリアント (RIM1α) はシナプス小胞のRab-3と相互作用する足場タンパク質であることから、VDCCとシナプス小胞の距離を規定する分子である可能性が高い[30]。4種類のRIM (RIM1~4) はどれもVDCCの不活性化を著しく遅らせることでCa2+流入量を増加させる[28]。このように、VDCCはアクティブゾーンのタンパク質と共役して働くことで、高効率的に神経伝達物質放出やシナプス可塑性を制御すると考えられる。

Cav3 (T型)

 T型は、一過的にCa2+を流入させることで、活動電位の発生パターンを調節する。心臓の洞房結節に存在するペースメーカー細胞における拍動の形成や[31]睡眠時の特徴的な脳波を形成する視床のリレー細胞における周期的な発火に関わっている[32]

疾患との関係

 Cav1.1遺伝子 (CACNA1S) は、骨格筋の機能不全から発作的な筋力低下症状を示す低カリウム性周期性四肢麻痺の原因遺伝子である。

 Cav1.2遺伝子 (CACNA1C) は、心臓のQT延長や、合指自閉症といった症状を示すTimothy症候群の原因遺伝子である[4][33]

 Cav2.1遺伝子 (CACNA1A) は、運動失調を呈する脊髄小脳失調症6型、家族性偏頭痛1型、発作性小脳失調を呈する反復発作性失調症2型などの原因遺伝子である。また、運動失調やてんかん症状を呈する変異マウスtottering、leaner、rolling Nagoyaの原因遺伝子でもある[31]

 Cav3.1遺伝子 (CACNA1G) は、若年ミオクロニーてんかんの原因遺伝子である。

 Cav3.2遺伝子 (CACNA1H) は、小児欠神てんかん突発性全般てんかん、また自閉症スペクトラム障害との関連が示唆されている[34]

その他のCa2+チャネル

TRP チャネル

 TRPチャネル (Transient receptor potential channel)は、ショウジョウバエの光受容応答変異株の原因遺伝子として発見されたチャネル分子である[35]哺乳類においては28種の遺伝子が同定され、C, M, P, ML, V, Aといった6つのサブファミリーを構成する。TRPチャネルは、温度、機械刺激、痛み、酸-塩基といった種々の物理化学的刺激によって活性化されるカチオンチャネルファミリーを形成している。その多くがCa2+透過能を有し、中枢・末梢神経系を始めとするほぼ全ての組織に発現が見られる。TRPCやTRPMファミリーに属するTRPチャネルを介したCa2+シグナルは、神経細胞において重要な役割を担っていることが示されている。受容体刺激、細胞内Ca2+ストア枯渇、および他のタンパク質との相互作用によって活性化されるTRPCチャネル (TRPC1~7) を介したCa2+流入が、神経細胞の分化、増殖、生存や神経突起の伸長・誘導、スパイン形成といった多くの神経機能に関連する[36]。一方、酸化ストレスや温度、pH、機械刺激などで活性化されるTRPMチャネル (TRPM1~8)を介したCa2+流入が、神経細胞の成長・発達や細胞死に関連する[36]

ストア作動性Ca2+チャネル

 ストア作動性Ca2+チャネル(SOCチャネル、store-operated calcium channel : SOC channel, calcium release-activated calcium channel : CRAC channel) は、小胞体Ca2+ストアのCa2+枯渇によって活性化開口される細胞外からのCa2+流入経路である。TRPCチャネルがチャネル分子実態として考えられていたが、近年、重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency : SCID)の患者から遺伝子変異が発見されたOrai1がSOCチャネルとして同定され、主要な分子実態として認識され始めている。Orai (Orai1, 2, 3) は、小胞体のCa2+枯渇を感知した小胞体Ca2+センサー分子stromal interacting molecule(STIM, STIM1, 2) との相互作用を介して4量体を形成し、活性化開口する[37]

 SOCチャネルによるCa2+流入 (SOC流入) は、免疫細胞における主要なCa2+流入経路であり、免疫機能に必須であるとされ、抗原受容体といった受容体活性化の下流でSOC流入が誘導される。これは持続的な [Ca2+]i上昇によりCa2+シグナル伝達を担い、転写因子NFATの活性を調節することが知られる。近年になって、神経細胞や筋細胞といった興奮性細胞においてもSOC流入が確認され、種々の生理機能や疾患との関連が調べられている[37]

関連項目

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