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担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | ||
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N末端側から、3つのPDZドメイン、1つの[[Src homology 3ドメイン|Src homology 3(SH3)ドメイン]]、1つの[[Guanylate kinase-likeドメイン|Guanylate kinase-like(GK)ドメイン]]を持つ。PSD-95のαアイソフォームは、N末端に[[パルミトイル化]]反応を受けうる2つの[[wikipedia:ja:システイン|システイン]]を含み、βアイソフォームは[[L27ドメイン]]を持つ。N末端のパルミトイル化はPSD-95の[[シナプス後膜]]への局在に重要である<ref name=ref5><pubmed>11955437</pubmed></ref>。 | |||
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PDZドメインは、リガンドタンパク質のC末端に結合する90程度のアミノ酸残基を含む構造である。PSD-95に含まれる、3つのPDZドメインはすべて、リガンドタンパク質のC末端から3番目の位置が[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]または[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]]であるクラスIに分類される。PSD-95のPDZドメインと結合するタンパク質としてNR2A-D、GluR6、[[nAChRc]]、[[ErbB4]]、[[Kir2-5]]、[[ニューロリギン]]、nNosなどがあげられ、これらのC末端がいずれかのPDZドメインに結合する<ref name=ref6><pubmed>15378037</pubmed></ref>。また、[[AMPA型グルタミン酸受容体]]は補助サブユニットである[[transmembrane AMPAR regulatory proteins]]([[TARP]])がPDZドメインと結合することによって間接的にPSD-95と結合することが示されている<ref name=ref7><pubmed>11140673</pubmed></ref>。 | |||
===SH3ドメイン、GKドメイン=== | ===SH3ドメイン、GKドメイン=== | ||
SH3ドメインとGKドメインはPSD- | SH3ドメインとGKドメインはPSD-95のC末端側に位置する。これらのドメインは分子内で相互作用しており、PSD-95の分子的な安定性の向上に役だっていると考えられている。また、この相互作用は分子間でも見られ、複数のPSD-95間における会合にも資している。SH3ドメインやGKドメインには同種の分子だけでなく[[GKAP]]、[[SPAR]]、[[AKAP79/150]]、[[Pyk2]]など様々な分子と相互作用する<ref name=ref7 /> <ref name=ref8><pubmed>18206289</pubmed></ref>。 | ||
==ファミリー== | ==ファミリー== | ||
PSDには同様の構造を持ったタンパク質として[[PSD-93]]、[[SAP97]]、[[SAP102]]が存在し、これらを含めてPSD-95 familyあるいは[[membrane-associated guanylate kinase]] ([[MAGUK]]) | PSDには同様の構造を持ったタンパク質として[[PSD-93]]、[[SAP97]]、[[SAP102]]が存在し、これらを含めてPSD-95 familyあるいは[[membrane-associated guanylate kinase]] ([[MAGUK]])と呼ぶ。(編集コメント:抄録にあった文章を持ってきました。適宜御編集下さい)。 | ||
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これら分子の発達に伴う発現パターンは異なっており、げっ歯類の海馬においては、PSD-95およびPSD-93は生後10日目あたりから発現量が増えるのに対し、SAP102は生後1週齢で既に発現量が高い<ref name=ref1><pubmed>10648730</pubmed></ref>。SAP-97については生後2週齢頃から遺伝子発現が増加することが報告されている<ref name=ref2><pubmed>7891172</pubmed></ref>。(編集コメント:抄録にあった文章を持ってきました。適宜御編集下さい)。 | |||
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PSD-95はシナプスを構成する幅広い分子の足場となることで、シナプス機能や[[シナプス可塑性]]に重要な役割を果たす。PSD-95の発現を変化させた様々な実験から、PSD-95が[[シナプス伝達]]、特に[[AMPA型グルタミン酸受容体]]を介したシナプス伝達機能に重要であるという知見が報告されている。 | PSD-95はシナプスを構成する幅広い分子の足場となることで、シナプス機能や[[シナプス可塑性]]に重要な役割を果たす。PSD-95の発現を変化させた様々な実験から、PSD-95が[[シナプス伝達]]、特に[[AMPA型グルタミン酸受容体]]を介したシナプス伝達機能に重要であるという知見が報告されている。 | ||
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さらに、別系統のノックアウトマウスでは、幼若期(生後14- | さらに、別系統のノックアウトマウスでは、幼若期(生後14-24日)において、AMPA型グルタミン酸受容体依存性のevoked EPSC振幅およびmEPSC頻度の低下が見られている<ref name=ref11><pubmed>7891172</pubmed></ref>。また、PSD-95を過剰発現させた場合には、evoked EPSC振幅やmEPSC振幅が増加することが報告されている<ref name=ref12><pubmed>11082065</pubmed></ref> <ref name=ref13><pubmed>12359873</pubmed></ref>。 | ||
NMDA型グルタミン酸受容体についても同様の実験が行われている。しかし、PSD-95はNMDA型グルタミン酸受容体に直接結合するにも関わらず、PSD-95の発現を操作しても、NMDA型グルタミン酸受容体依存性のEPSCに変化がないことが報告されており<ref name=ref9 /><ref name=ref10 />、詳細な役割は不明である。 | |||
PSD-95はシナプス伝達の長期可塑性にも関与する。PSD-95ノックアウトマウスの海馬スライスでは、高頻度刺激で生じる[[シナプス長期増強]](long-term potentiation; LTP)が促進される一方で、低頻度刺激で生じる[[シナプス長期抑制]](long-term depression; | PSD-95はシナプス伝達の長期可塑性にも関与する。PSD-95ノックアウトマウスの海馬スライスでは、高頻度刺激で生じる[[シナプス長期増強]](long-term potentiation; LTP)が促進される一方で、低頻度刺激で生じる[[シナプス長期抑制]](long-term depression; LTD)は抑制される<ref name=ref10 />。逆に、PSD-95を過剰発現させた細胞では、LTPが抑制され、LTDが亢進する<ref name=ref14><pubmed>12843250</pubmed></ref>。 | ||
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また、シナプスへの局在に重要な295番目のセリン残基がシナプス長期可塑性の発現に重要であることが報告されている<ref name=ref16><pubmed>17988632</pubmed></ref>。 | |||
==関連項目== | ==関連項目== |
2013年11月20日 (水) 11:38時点における版
坪山 幸太郎、田中 慎二、岡部 繁男
東京大学大学院医学系研究科
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年10月31日 原稿完成日:2013年月日
担当編集委員:柚崎 通介(慶應義塾大学 医学部生理学)
同義語:synapse-associated protein 90(SAP-90)、disks large homolog 4(DLG4)
PSD-95(postsynaptic density protein 95)は、シナプス後部の主要な足場タンパク質であり、シナプス後肥厚部(postsynaptic density; PSD)において最も豊富に存在しているタンパク質の一つである。NR2A-D、GluR6、ニューロリギン、nNOSなど様々な分子と相互作用し、シナプス機能の維持や可塑性などに寄与すると考えられている。プロテオミクス解析や全反射顕微鏡を用いたシナプス分子の数の定量結果から、PSD family分子はシナプス後部に300個ほど存在するとされている[1] [2]。 (編集コメント:最後の文章に関して、対応する内容が本文に無いようです)
構造
N末端側から、3つのPDZドメイン、1つのSrc homology 3(SH3)ドメイン、1つのGuanylate kinase-like(GK)ドメインを持つ。PSD-95のαアイソフォームは、N末端にパルミトイル化反応を受けうる2つのシステインを含み、βアイソフォームはL27ドメインを持つ。N末端のパルミトイル化はPSD-95のシナプス後膜への局在に重要である[3]。
PDZ ドメイン
PDZドメインは、リガンドタンパク質のC末端に結合する90程度のアミノ酸残基を含む構造である。PSD-95に含まれる、3つのPDZドメインはすべて、リガンドタンパク質のC末端から3番目の位置がセリンまたはスレオニンであるクラスIに分類される。PSD-95のPDZドメインと結合するタンパク質としてNR2A-D、GluR6、nAChRc、ErbB4、Kir2-5、ニューロリギン、nNosなどがあげられ、これらのC末端がいずれかのPDZドメインに結合する[4]。また、AMPA型グルタミン酸受容体は補助サブユニットであるtransmembrane AMPAR regulatory proteins(TARP)がPDZドメインと結合することによって間接的にPSD-95と結合することが示されている[5]。
SH3ドメイン、GKドメイン
SH3ドメインとGKドメインはPSD-95のC末端側に位置する。これらのドメインは分子内で相互作用しており、PSD-95の分子的な安定性の向上に役だっていると考えられている。また、この相互作用は分子間でも見られ、複数のPSD-95間における会合にも資している。SH3ドメインやGKドメインには同種の分子だけでなくGKAP、SPAR、AKAP79/150、Pyk2など様々な分子と相互作用する[5] [6]。
ファミリー
PSDには同様の構造を持ったタンパク質としてPSD-93、SAP97、SAP102が存在し、これらを含めてPSD-95 familyあるいはmembrane-associated guanylate kinase (MAGUK)と呼ぶ。(編集コメント:抄録にあった文章を持ってきました。適宜御編集下さい)。
発現パタン
組織発現パタン
これら分子の発達に伴う発現パターンは異なっており、げっ歯類の海馬においては、PSD-95およびPSD-93は生後10日目あたりから発現量が増えるのに対し、SAP102は生後1週齢で既に発現量が高い[7]。SAP-97については生後2週齢頃から遺伝子発現が増加することが報告されている[8]。(編集コメント:抄録にあった文章を持ってきました。適宜御編集下さい)。
細胞内分布
シナプス後部に存在するPSDに強く集積する。生化学、イメージングによる解析からPSDに存在するPSD-95は300個ほどであると見積もられている[1][2]。
機能
PSD-95はシナプスを構成する幅広い分子の足場となることで、シナプス機能やシナプス可塑性に重要な役割を果たす。PSD-95の発現を変化させた様々な実験から、PSD-95がシナプス伝達、特にAMPA型グルタミン酸受容体を介したシナプス伝達機能に重要であるという知見が報告されている。
海馬スライス培養系においてshRNAによりPSD-95をノックダウンした錐体細胞では、AMPA型グルタミン酸受容体依存性のevoked EPSC振幅およびmEPSC頻度 の低下が見られる[9]。一方、PSD-95ノックアウトマウスの急性スライスを用いた研究では、AMPA型グルタミン酸受容体を介したEPSCに変化が見られないと報告されたが[10]、PSD-93とのダブルノックアウトマウスではEPSCが大きく低下することが分かり、PSD-95単独のノックアウトマウスではその機能がPSD-93によって補償されている可能性が示唆されている[9]。
さらに、別系統のノックアウトマウスでは、幼若期(生後14-24日)において、AMPA型グルタミン酸受容体依存性のevoked EPSC振幅およびmEPSC頻度の低下が見られている[11]。また、PSD-95を過剰発現させた場合には、evoked EPSC振幅やmEPSC振幅が増加することが報告されている[12] [13]。
NMDA型グルタミン酸受容体についても同様の実験が行われている。しかし、PSD-95はNMDA型グルタミン酸受容体に直接結合するにも関わらず、PSD-95の発現を操作しても、NMDA型グルタミン酸受容体依存性のEPSCに変化がないことが報告されており[9][10]、詳細な役割は不明である。
PSD-95はシナプス伝達の長期可塑性にも関与する。PSD-95ノックアウトマウスの海馬スライスでは、高頻度刺激で生じるシナプス長期増強(long-term potentiation; LTP)が促進される一方で、低頻度刺激で生じるシナプス長期抑制(long-term depression; LTD)は抑制される[10]。逆に、PSD-95を過剰発現させた細胞では、LTPが抑制され、LTDが亢進する[14]。
ノックアウトマウスにおいても空間学習能力の異常が認められており、脳機能の可塑的な変化が個体レベルでも阻害されることが分かっている[10]。
シナプス長期可塑性を調節する分子機構として、LTDに関しては、PSD-95がLTD発現に必要なシグナルタンパク質であるAKAP79/150とPP2Bの足場となり、NMDA型グルタミン酸受容体から流入するカルシウムシグナルとこれらシグナルタンパク質を結び付けているとするモデルが提唱されている[15]。
また、シナプスへの局在に重要な295番目のセリン残基がシナプス長期可塑性の発現に重要であることが報告されている[16]。
関連項目
参考文献
- ↑ 1.0 1.1
Chen, X., Vinade, L., Leapman, R.D., Petersen, J.D., Nakagawa, T., Phillips, T.M., ..., & Reese, T.S. (2005).
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