「軸索再生」の版間の差分

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==== グリア瘢痕  ====
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 損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性[[アストロサイト]]が集積し、[[グリア瘢痕]]と呼ばれる高密度の[[wikipedia:ja:瘢痕|瘢痕]]組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害する[[コンドロイチン硫酸プロテオグリカン]] (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である[[硫酸グリコサミノグリカン]]とコアタンパク質からなる分子で、[[Aggrecan]]、[[Brevican]]、[[Neurocan]]、[[Versican]]、[[Phosphacan]]、[[NG2]]などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去する[[wikipedia:Chondroitin-sulfate-ABC exolyase|コンドロイチナーゼABC]]を投与すると、CSPGsが分解され、[[感覚神経]]線維と[[運動神経]]線維の再生および、[[運動機能]]、[[固有感覚]]の回復が認められた。CSPGsは[[wikipedia:JA:上皮成長因子|上皮成長因子]](epidermal growth factor)(EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、[[縫線核]]脊髄路の[[セロトニン]]作動性神経線維の再生、及び運動機能、[[wikipedia:JA:膀胱|膀胱]]機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の[[wikipedia:JA:線維芽細胞|線維芽細胞]]からは、再生反応を阻害するSema3A(上と表記を統一いたしましたが、よろしいでしょうか?)が産生されることが知られている (上記1)参照)<ref name=ref1 />。  
 損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性[[アストロサイト]]が集積し、[[グリア瘢痕]]と呼ばれる高密度の[[wikipedia:ja:瘢痕|瘢痕]]組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害する[[コンドロイチン硫酸プロテオグリカン]] (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である[[硫酸グリコサミノグリカン]]とコアタンパク質からなる分子で、[[Aggrecan]]、[[Brevican]]、[[Neurocan]]、[[Versican]]、[[Phosphacan]]、[[NG2]]などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去する[[wikipedia:Chondroitin-sulfate-ABC exolyase|コンドロイチナーゼABC]]を投与すると、CSPGsが分解され、[[感覚神経]]線維と[[運動神経]]線維の再生および、[[運動機能]]、[[固有感覚]]の回復が認められた。CSPGsは[[wikipedia:JA:上皮成長因子|上皮成長因子]](epidermal growth factor)(EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、[[縫線核]]脊髄路の[[セロトニン]]作動性神経線維の再生、及び運動機能、[[wikipedia:JA:膀胱|膀胱]]機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の[[wikipedia:JA:線維芽細胞|線維芽細胞]]からは、再生反応を阻害するSema3A(上と表記を統一いたしましたが、よろしいでしょうか?)が産生されることが知られている (上記1)参照)(これは文献[1]ということでしょうか?それでしたら、次のように記述いたします)<ref name=ref1 />。  


 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。[[グリア線維性酸性タンパク質]](glial fibrillary acidic protein; GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、[[STAT3]]が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御する[[Socs3]]をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている <ref><pubmed> 16783372 </pubmed></ref>。
 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。[[グリア線維性酸性タンパク質]](glial fibrillary acidic protein; GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、[[STAT3]]が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御する[[Socs3]]をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている <ref><pubmed> 16783372 </pubmed></ref>。