「マーの小脳理論」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
73行目: 73行目:
 0−1表現ではなく瞬時発火頻度表現で、分類ではなく回帰、連想記憶の容量ではなく内部モデルの精度の違いはあるとはいえ、理論の本質的な精神は生き残っていると言えるのかもしれない。
 0−1表現ではなく瞬時発火頻度表現で、分類ではなく回帰、連想記憶の容量ではなく内部モデルの精度の違いはあるとはいえ、理論の本質的な精神は生き残っていると言えるのかもしれない。


 最近のMRIを用いたヒト小脳の灰白質と入力線維束の定量的測定から、外側小脳と虫部では苔状線維から顆粒細胞の数の拡大率が違うことが明らかになった。外側小脳の灰白質の体積は、虫部の体積の11.4倍である<ref><pubmed> 28461060 </pubmed></ref>。顆粒細胞の数は灰白質の体積に比例していると考えられるので、外側小脳は虫部よりも顆粒細胞数が11.4倍あることになる。一方、脊髄小脳経路と複数の大脳皮質−橋−小脳経路の体積が計測され、計測範囲では脊髄小脳経路の長さは、大脳−小脳経路の長さの半分以下である<ref><pubmed> 25904851 </pubmed></ref>。神経束の断面積は体積を長さで割って求めることが出来るので、上記の計測データから、大脳小脳経路の断面積は脊髄小脳経路の2.8倍以下であると推定できる。苔状線維の太さが一様であると仮定すれば、外側小脳の苔状線維の本数は虫部の2.8倍以下と推定される。つまり、外側部の苔状線維:顆粒細胞の拡大率が200倍だとして、虫部のそれは200*2.8/11.4=49倍以下であると推定される。非常に大きな拡大率は、多次元の入力の任意な組み合わせの神経表現を必要とする系統発生的に新しい大脳小脳に特有である可能性が有る。必ずしもそのような難しい計算を必要としない脊髄小脳では拡大率が1/4、前庭小脳ではさらに低い可能性もある。コドン仮説に反する実験データが、主には除脳標本、麻酔下、そして系統発生的に古い小脳から得られていることを考えると、理論の本質は系統発生的に新しい小脳の自然な条件では生き残っていると言える。
 最近の[[MRI]]を用いたヒト小脳の[[灰白質]]と入力線維束の定量的測定から、外側小脳と虫部では苔状線維から顆粒細胞の数の拡大率が違うことが明らかになった。外側小脳の灰白質の体積は、虫部の体積の11.4倍である<ref><pubmed> 28461060 </pubmed></ref>。顆粒細胞の数は灰白質の体積に比例していると考えられるので、外側小脳は虫部よりも顆粒細胞数が11.4倍あることになる。一方、脊髄小脳経路と複数の大脳皮質−[[橋]]−小脳経路の体積が計測され、計測範囲では脊髄小脳経路の長さは、大脳−小脳経路の長さの半分以下である<ref><pubmed> 25904851 </pubmed></ref>。神経束の断面積は体積を長さで割って求めることが出来るので、上記の計測データから、大脳小脳経路の断面積は脊髄小脳経路の2.8倍以下であると推定できる。苔状線維の太さが一様であると仮定すれば、外側小脳の苔状線維の本数は虫部の2.8倍以下と推定される。つまり、外側部の苔状線維:顆粒細胞の拡大率が200倍だとして、虫部のそれは200*2.8/11.4=49倍以下であると推定される。非常に大きな拡大率は、多次元の入力の任意な組み合わせの神経表現を必要とする系統発生的に新しい大脳小脳に特有である可能性が有る。必ずしもそのような難しい計算を必要としない脊髄小脳では拡大率が1/4、前庭小脳ではさらに低い可能性もある。
 
 コドン仮説に反する実験データが、主には[[除脳標本]]、[[麻酔]]下、そして[[系統発生]]的に古い小脳から得られていることを考えると、理論の本質は系統発生的に新しい小脳の自然な条件では生き残っていると言える。


== 小脳研究に与えたインパクト ==
== 小脳研究に与えたインパクト ==

案内メニュー