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<br>=== 誘引-反発応答を制御する分子メカニズム | <br>=== 誘引-反発応答を制御する分子メカニズム | ||
軸索ガイダンスの分子メカニズムの研究の多くは、Pooのグループによって開発されたターニングアッセイと呼ばれる実験系を用いて行われている。この手法は、培養条件下でガラスピペットから分泌性ガイダンス因子をパルス状に放出し、成長円錐近傍にガイダンス因子の濃度勾配を人工的に作り出し、それに対する成長円錐の挙動を観察するものである。また、この手法は軸索ガイダンス因子が誘導する誘引性-反発性旋回運動を一つの実験系で評価できるという点で優れている。 | |||
このターニングアッセイを用いた解析では、しばしば特定のシグナルカスケードを遮断すると誘引-反発の応答が逆転する現象が見られる。例えば、ネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPのアンタゴニストであるRp-cAMPsの投与により反発へと逆転する。このように、成長円錐の旋回運動の方向は様々な細胞内シグナル伝達経路が協調的に働き、複雑なクロストークの結果決定されると予想される。これは、生体内で成長円錐が様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しながらそのシグナルを統合し進行する経路を選択することを反映していると考えられる。ここでは、誘引-反発応答を制御するメカニズムについて概説する。 | このターニングアッセイを用いた解析では、しばしば特定のシグナルカスケードを遮断すると誘引-反発の応答が逆転する現象が見られる。例えば、ネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPのアンタゴニストであるRp-cAMPsの投与により反発へと逆転する。このように、成長円錐の旋回運動の方向は様々な細胞内シグナル伝達経路が協調的に働き、複雑なクロストークの結果決定されると予想される。これは、生体内で成長円錐が様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しながらそのシグナルを統合し進行する経路を選択することを反映していると考えられる。ここでは、誘引-反発応答を制御するメカニズムについて概説する。 | ||
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===== 環状ヌクレオチド ===== | ===== 環状ヌクレオチド ===== | ||
成長円錐内のcAMPおよびcGMPシグナルは、同一軸索ガイダンス因子に対する成長円錐の誘引-反発応答性を規定するものとして報告例が多い。 上述のようにネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPシグナルの抑制により反発へと逆転する。また、軸索再生阻害因子として知られ軸索反発を誘導するMAGの濃度勾配に対する反発は、cAMPアゴニストであるsp-cAMPsの投与により誘引へと逆転する。逆に、cGMPのアゴニストである8-Br-cGMPの投与によりネトリン- | 成長円錐内のcAMPおよびcGMPシグナルは、同一軸索ガイダンス因子に対する成長円錐の誘引-反発応答性を規定するものとして報告例が多い。 上述のようにネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPシグナルの抑制により反発へと逆転する。また、軸索再生阻害因子として知られ軸索反発を誘導するMAGの濃度勾配に対する反発は、cAMPアゴニストであるsp-cAMPsの投与により誘引へと逆転する。逆に、cGMPのアゴニストである8-Br-cGMPの投与によりネトリン-1による誘引が反発へと逆転する報告もあり、多くの軸索ガイダンス因子に共通するメカニズムとしてcAMP/cGMPシグナルにより成長円錐の旋回方向が決定されると考えられている。 | ||
cAMP/cGMPの下流では主にプロテインキナーゼA(PKA)/プロテインキナーゼG(PKG)が機能することも示されており、これら2種類のリン酸化酵素の標的分子などの違いにより成長円錐の誘引または反発という正反対の応答が誘導されると考えられている。 | |||
cAMP/ | |||
===== 細胞内カルシウムシグナル ===== | ===== 細胞内カルシウムシグナル ===== |
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