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==診断・鑑別診断== | ==診断・鑑別診断== | ||
不注意および/または多動性―衝動性が持続的に認められて、機能または発達の妨げとなっている場合、ADHDと診断される。DSM-5の診断基準は、以下のとおりである<ref name=ref1>American Psychiatric Association, 2013. <br>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed. <br>''American Psychiatric Association'', Arlington, VA.</ref>。 | 不注意および/または多動性―衝動性が持続的に認められて、機能または発達の妨げとなっている場合、ADHDと診断される。DSM-5の診断基準は、以下のとおりである<ref name=ref1>American Psychiatric Association, 2013. <br>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed. <br>''American Psychiatric Association'', Arlington, VA.</ref>。 | ||
{| class="wikitable" | |||
|+表. ADHDの診断基準 DSM-5に基づく<ref name=ref1/> | |||
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| '''A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの'''<br> | |||
'''(1) 不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである'''<br> | |||
''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | |||
:(a) 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)<br> | |||
:(b) 課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である(例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)<br> | |||
:(c) 直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)<br> | |||
:(d) しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)<br> | |||
:(e) 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)<br> | |||
:(f) 精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、青年期後期および成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う<br> | |||
:(g) 課題や活動に必要なもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう<br> | |||
:(h) しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では、無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう<br> | |||
:(i) しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい<br> | |||
'''(2) 多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである'''<br> | |||
''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | |||
:(a) しばしば手足をそわそわと動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。<br> | |||
:(b) 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)。<br> | |||
:(c) 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)。<br> | |||
:(d) 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。<br> | |||
:(e) しばしば「じっとしていない」、またはまるで「エンジンで動かされるように」行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる;他の人達には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)。<br> | |||
:(f) しばしばしゃべりすぎる。<br> | |||
:(g) しばしば質問を終わる前にだし抜けに答え始めてしまう(例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)。<br> | |||
:(h) しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)。<br> | |||
:(i) しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)。<br> | |||
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|'''B. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。'''<br> | |||
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|'''C. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。'''<br> | |||
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|'''D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。'''<br> | |||
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|'''E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。'''<br> | |||
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DSM-IV-TRまでは、[[自閉症スペクトラム障害]]/[[自閉スペクトラム症]](ASD)が鑑別対象に含まれるが、DSM-5では異なっている。すなわち、自閉症状を有していても、上記の診断基準を満たしていれば、ADHDと診断される。 | |||
症状の組み合わせから、不注意、多動性―衝動性の両方とも基準を満たす場合(混合して存在)、不注意のみ基準を満たす場合(不注意優勢に存在)、多動性―衝動性のみ基準を満たす場合(多動・衝動優勢に存在)がある。経過中で、異なる存在に変わることもある。 | 症状の組み合わせから、不注意、多動性―衝動性の両方とも基準を満たす場合(混合して存在)、不注意のみ基準を満たす場合(不注意優勢に存在)、多動性―衝動性のみ基準を満たす場合(多動・衝動優勢に存在)がある。経過中で、異なる存在に変わることもある。 |