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[[image:zo-1-2.png|thumb|350px|'''図2.ZO-1タンパク質の構造'''<br>N末端側にPD domain(1,2,3の数字で示す)、SH3 domain、GUK(GK)domainが存在する。C末端側にはプロリンリッチな領域(P)、選択的スプライシング部位(α、β、γ)が存在する。+、-はそれぞれ塩基性領域、酸性領域を表す<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref>。]] | [[image:zo-1-2.png|thumb|350px|'''図2.ZO-1タンパク質の構造'''<br>N末端側にPD domain(1,2,3の数字で示す)、SH3 domain、GUK(GK)domainが存在する。C末端側にはプロリンリッチな領域(P)、選択的スプライシング部位(α、β、γ)が存在する。+、-はそれぞれ塩基性領域、酸性領域を表す<ref name=ref11><pubmed>10966866</pubmed></ref>。]] | ||
ZOタンパク質(図1)は、membrane-associated guanylate kinase(MAGUK)ファミリーに分類され、Tight junction protein(Tjp)とも呼ばれる。ZOタンパク質には、分子量220kDaのZO-1<ref name=ref29><pubmed>3528172</pubmed></ref> <ref name=ref18><pubmed>8486731</pubmed></ref>、160kDaのZO-2<ref name=ref12><pubmed>2014265</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>8132716</pubmed></ref>、130kDaの ZO-3<ref name=ref13><pubmed>9531559</pubmed></ref>の3種類がある。これらに共通の構造として、3個の[[PDZ]] | ZOタンパク質(図1)は、membrane-associated guanylate kinase(MAGUK)ファミリーに分類され、Tight junction protein(Tjp)とも呼ばれる。ZOタンパク質には、分子量220kDaのZO-1<ref name=ref29><pubmed>3528172</pubmed></ref> <ref name=ref18><pubmed>8486731</pubmed></ref>、160kDaのZO-2<ref name=ref12><pubmed>2014265</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>8132716</pubmed></ref>、130kDaの ZO-3<ref name=ref13><pubmed>9531559</pubmed></ref>の3種類がある。これらに共通の構造として、3個の[[PDZ]] domain、1個の[[Src]] homology 3(SH3)domain、1個のguanylated kinase(GUKまたはGK)domainが挙げられる。また、[[プロリン]]リッチ領域が、ZO-1、ZO-2ではカルボキシル末端側、ZO-3では2nd PDZ domainと 3rd PDZ domainの間に存在する<ref name=ref11 />。3種のZOタンパク質を区別するのはC末端領域の構造である。ZO-1のC末領域は他の2種よりも長い。また、ZO-1では選択的スプライシング部位が3カ所あるが、ZO-2では2カ所、ZO-3にはない<ref name=ref11 />。これらの違いが、3種のタンパク質の機能の違いを生み出すと考えられている。 | ||
多細胞生物の上皮組織では、上皮細胞が単層あるいは重層に配列し、互いに接着したシート状構造を呈する。上皮シート構造の形成・維持には、頂端側に存在する密着結合・接着結合・接着斑からなる接着複合体が重要な役割を果たしている。ZOタンパク質は、[[細胞膜]]側で密着結合や接着結合を構成するタンパク質群と結合し、細胞質側で[[細胞骨格]]と結合する。これにより、細胞間接着構造を細胞の適切な位置に維持している。また、密着結合の形成により[[膜タンパク質]]の拡散が抑えられ、細胞の頂端側と基底側で膜組成に差が生まれることから、細胞[[極性]]形成にも関与すると考えられる。近年では、ZOタンパク質が核内に移動することにより、細胞内シグナル伝達や転写調節を担うことも報告されている<ref name=ref3><pubmed>20224657</pubmed></ref>。 | 多細胞生物の上皮組織では、上皮細胞が単層あるいは重層に配列し、互いに接着したシート状構造を呈する。上皮シート構造の形成・維持には、頂端側に存在する密着結合・接着結合・接着斑からなる接着複合体が重要な役割を果たしている。ZOタンパク質は、[[細胞膜]]側で密着結合や接着結合を構成するタンパク質群と結合し、細胞質側で[[細胞骨格]]と結合する。これにより、細胞間接着構造を細胞の適切な位置に維持している。また、密着結合の形成により[[膜タンパク質]]の拡散が抑えられ、細胞の頂端側と基底側で膜組成に差が生まれることから、細胞[[極性]]形成にも関与すると考えられる。近年では、ZOタンパク質が核内に移動することにより、細胞内シグナル伝達や転写調節を担うことも報告されている<ref name=ref3><pubmed>20224657</pubmed></ref>。 | ||
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===タンパク質構造の特徴=== | ===タンパク質構造の特徴=== | ||
ZOタンパク質に共通する構造(PDZ domain, SH3 domain, GUK domain)の他に、ZO-1は他2つのZOタンパク質に比べて長いC末領域を持つ(図2)。この領域にはactin binding regionがあり、細胞質側で細胞骨格系であるF-actinと結合する<ref name=ref6><pubmed>9792688</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>9214391</pubmed></ref>。さらに、C末端側には3カ所の選択的スプライシング部位α、β、γがあり、多様な[[スプライスバリアント]]が存在する<ref name=ref11 /> <ref name=ref5><pubmed>22083955</pubmed></ref>。また、ZO-1は1st PDZ domainおよびGUK領域に核移行シグナル領域をもつ<ref name=ref10><pubmed>10094817</pubmed></ref>。これらのことから、核内で遺伝子発現を調節する働きもあると考えられる。 | ZOタンパク質に共通する構造(PDZ domain, SH3 domain, GUK domain)の他に、ZO-1は他2つのZOタンパク質に比べて長いC末領域を持つ(図2)。この領域にはactin binding regionがあり、細胞質側で細胞骨格系であるF-actinと結合する<ref name=ref6><pubmed>9792688</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>9214391</pubmed></ref>。さらに、C末端側には3カ所の選択的スプライシング部位α、β、γがあり、多様な[[スプライスバリアント]]が存在する<ref name=ref11 /> <ref name=ref5><pubmed>22083955</pubmed></ref>。また、ZO-1は1st PDZ domainおよびGUK領域に核移行シグナル領域をもつ<ref name=ref10><pubmed>10094817</pubmed></ref>。これらのことから、核内で遺伝子発現を調節する働きもあると考えられる。 | ||
==神経組織における発現と機能== | ==神経組織における発現と機能== | ||
===神経系形成初期における発現と機能=== | ===神経系形成初期における発現と機能=== |