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MGLはその後[[カンナビノイド]]研究において注目を集めることとなった('''図2''')。カンナビノイド(cannabinoid)とは、[[大麻]](学名は''Cannabis sativa'')に含まれる精神神経作用を引き起こす物質およびその類似物質を合わせた総称名である。1964年に大麻に含まれる有効成分として[[Δ9-テトラヒドロカンナビノール]] ([[Δ9-tetrahydrocannabinol]]; THC)が同定され、その受容体([[カンナビノイド受容体]])として1990年に[[CB1受容体]]、1993年には[[CB2受容体]]の[[アミノ酸]]配列が特定された。1992年にはカンナビノイド受容体の内因性リガンド([[エンドカンナビノイド]])として[[アナンダミド]](N-arachidonoylethanolamide)が、1995年には[[2-アラキドニルグリセロール]] ([[2-arachidonylglycerol]]; 2-AG)が発見された。その後、エンドカンナビノイドの生合成および分解に関与する酵素群('''図2''')が次々と特定され、それと並行しエンドカンナビノイドの生理的役割(カンナビノイド系)が次第に明らかとなった<ref name=Kano2009><pubmed>19126760</pubmed></ref>。この一連の研究の中で、2-AGの分解酵素としてのMGLの重要性が報告された。[[w:Daniele Piomelli|Piomelli]]らのグループが、2002年にラットのMGLのアミノ酸配列を特定するとともに、MGLが2-AGの分解の主要な酵素であることを証明した<ref name=Dinh2002><pubmed>12136125</pubmed></ref>。 | MGLはその後[[カンナビノイド]]研究において注目を集めることとなった('''図2''')。カンナビノイド(cannabinoid)とは、[[大麻]](学名は''Cannabis sativa'')に含まれる精神神経作用を引き起こす物質およびその類似物質を合わせた総称名である。1964年に大麻に含まれる有効成分として[[Δ9-テトラヒドロカンナビノール]] ([[Δ9-tetrahydrocannabinol]]; THC)が同定され、その受容体([[カンナビノイド受容体]])として1990年に[[CB1受容体]]、1993年には[[CB2受容体]]の[[アミノ酸]]配列が特定された。1992年にはカンナビノイド受容体の内因性リガンド([[エンドカンナビノイド]])として[[アナンダミド]](N-arachidonoylethanolamide)が、1995年には[[2-アラキドニルグリセロール]] ([[2-arachidonylglycerol]]; 2-AG)が発見された。その後、エンドカンナビノイドの生合成および分解に関与する酵素群('''図2''')が次々と特定され、それと並行しエンドカンナビノイドの生理的役割(カンナビノイド系)が次第に明らかとなった<ref name=Kano2009><pubmed>19126760</pubmed></ref>。この一連の研究の中で、2-AGの分解酵素としてのMGLの重要性が報告された。[[w:Daniele Piomelli|Piomelli]]らのグループが、2002年にラットのMGLのアミノ酸配列を特定するとともに、MGLが2-AGの分解の主要な酵素であることを証明した<ref name=Dinh2002><pubmed>12136125</pubmed></ref>。 | ||
MGLはさらに[[プロスタグランジン]]の生合成にも関与することが報告され、注目を集めた('''図3''')。プロスタグランジンの生合成に必要な遊離[[アラキドン酸]] | MGLはさらに[[プロスタグランジン]]の生合成にも関与することが報告され、注目を集めた('''図3''')。プロスタグランジンの生合成に必要な遊離[[アラキドン酸]]を供給する経路としては、それまでは細胞膜リン脂質から脂肪酸鎖を遊離させる[[ホスホリパーゼA2#細胞質型PLA2ファミリー|細胞質型ホスホリパーゼA2]]([[cPLA2]])を介する経路が重要と考えられていた。しかし2011年にNomuraと[[wj:ベンジャミン・クラヴァット|Cravatt]]らは、脳においては遊離アラキドン酸の産生にはPLA2よりもMGLを介した経路が主に働いていることを明らかにした<ref name=Nomura2011><pubmed>22021672</pubmed></ref>。 | ||
このようにMGLは脂肪の分解のみならずエンドカンナビノイド2-AGの分解やプロスタグランジンの生合成にも関与している。よってMGLに作用する薬剤はカンナビノイド系およびプロスタグランジ系を介して生理機能や病態生理機能に影響をおよぼす可能性があり、MGLをターゲットとした治療薬の開発が進められている<ref name=Chen2023><pubmed>36966972</pubmed></ref><ref name=Maccarrone2023><pubmed>37164640</pubmed></ref>。 | このようにMGLは脂肪の分解のみならずエンドカンナビノイド2-AGの分解やプロスタグランジンの生合成にも関与している。よってMGLに作用する薬剤はカンナビノイド系およびプロスタグランジ系を介して生理機能や病態生理機能に影響をおよぼす可能性があり、MGLをターゲットとした治療薬の開発が進められている<ref name=Chen2023><pubmed>36966972</pubmed></ref><ref name=Maccarrone2023><pubmed>37164640</pubmed></ref>。 | ||