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英語名:MAGUKS with Inverted domain structure family<br>
英語名:MAGUKS with Inverted domain structure family<br>
略称:MAGIファミリー
略称:MAGIファミリー
別名:Adhesion G Protein-Coupled Receptor B1 (ADGRB1), Brain specific angiogenesis inhibitor 1 (BAI1), synaptic scaffolding molecule (S-SCAM)


{{box|text= Membrane-Associated Guanylate Kinases with Inverted domain structure (MAGI)ファミリーはMAGI1, MAGI2, MAGI3を含む分子量120~180Kの足場タンパク質であり、主に細胞間接着や膜受容体の裏打ちタンパク質として機能する。神経系ではシナプスに集積し、統合失調症等の様々な精神疾患でコピー数多型が見つかっている。}}
{{box|text= Membrane-Associated Guanylate Kinases with Inverted domain structure (MAGI)ファミリーはMAGI1, MAGI2, MAGI3を含む分子量120~180Kの足場タンパク質であり、主に細胞間接着や膜受容体の裏打ちタンパク質として機能する。神経系ではシナプスに集積し、統合失調症等の様々な精神疾患でコピー数多型が見つかっている。}}


== MAGIとは ==
== MAGIとは ==
 MAGI1/BAP1は、1997年にK-Rasを細胞膜にリクルートする分子として、さらに1998年にADGRB1 (Adhesion G Protein-Coupled Receptor B1)/BAI1(Brain specific angiogenesis inhibitor 1)の細胞内領域と結合する分子として相次いで報告された<ref name=Dobrosotskaya1997><pubmed>9395497</pubmed></ref> [1] <ref name=Shiratsuchi1998><pubmed>9647739</pubmed></ref> [2]。またMAGI2/S-SCAM(synaptic scaffolding molecule)はPostsynaptic density (PSD)においてDLGAP1(Discs Large Associated Protein 1)/SAPAPと結合する分子として<ref name=Hirao1998><pubmed>9694864</pubmed></ref> [3]、MAGI3はPTENのPTB domain binding siteに結合する分子として<ref name=Wu2000><pubmed>10748157</pubmed></ref> [4]それぞれ同定された。これら3つの遺伝子は、細胞膜の裏打ちタンパク質として機能する上位のMAGUK (Membrane-Associated Guanylate Kinases)ファミリーに属するが、後述するように特徴的なドメイン構造を持つことから、MAGIサブファミリーとしてまとめられている。
 [[MAGI1]]/[[BAP1]]は、1997年に[[K-Ras]]を[[細胞膜]]にリクルートする分子として、さらに1998年に[[Adhesion G Protein-Coupled Receptor B1]] ([[ADGRB1]])/[[Brain specific angiogenesis inhibitor 1]], [[BAI1]] )の細胞内領域と結合する分子として相次いで報告された<ref name=Dobrosotskaya1997><pubmed>9395497</pubmed></ref><ref name=Shiratsuchi1998><pubmed>9647739</pubmed></ref>。また[[MAGI2]]/([[synaptic scaffolding molecule]], [[S-SCAM]])は[[シナプス後肥厚]] ([[postsynaptic density]], [[PSD]])において[[Discs Large Associated Protein 1]] ([[DLGAP1]])/[[SAPAP]]と結合する分子として<ref name=Hirao1998><pubmed>9694864</pubmed></ref>[[MAGI3]]は[[PTEN]]の[[PTB domain binding site]]に結合する分子として<ref name=Wu2000><pubmed>10748157</pubmed></ref>それぞれ同定された。これら3つの遺伝子は、細胞膜の裏打ちタンパク質として機能する上位の[[Membrane-Associated Guanylate Kinases]] ([[MAGUK]])ファミリーに属するが、特徴的なドメイン構造を持つことから、MAGIサブファミリーとしてまとめられている。


[[ファイル:Tabata MAGI Fig1.png|サムネイル|'''図1. MAGI1のドメイン構造'''<br>N末端側から1個のPDZドメイン、GuKドメイン、2つのWWドメイン、5つのPDZドメインが連なる。]]
[[ファイル:Tabata MAGI Fig1.png|サムネイル|'''. MAGI1のドメイン構造'''<br>N末端側から1個のPDZドメイン、GuKドメイン、2つのWWドメイン、5つのPDZドメインが連なる。]]
== 構造 ==
== 構造 ==
 MAGIファミリー分子はN末端側から1個のPDZドメイン、GuKドメイン、2個のWWドメイン、5個のPDZドメインが連なる細胞内足場タンパク質で、細胞接着やシグナル伝達の場で様々な分子と相互作用する。MAGIファミリーは、それが属するより上位のMAGUKファミリーの他の分子と比較して、以下の2つの特徴がある('''図1''')。
 N末端側から1個の[[PDZドメイン]]、[[GuKドメイン]]、2個の[[WWドメイン]]、5個のPDZドメインが連なる細胞内[[足場タンパク質]]で、[[細胞接着]]や[[シグナル伝達]]の場で様々な分子と相互作用する。MAGIファミリーは、それが属するより上位のMAGUKファミリーの他の分子と比較して、以下の2つの特徴がある('''''')。
#MAGUKファミリー分子は一般的にN末端側にタンデムに並ぶPDZドメイン、C末端側にGuKドメインが配置するが、MAGIではこれが逆転している。
#MAGUKファミリー分子は一般的にN末端側にタンデムに並ぶPDZドメイン、C末端側にGuKドメインが配置するが、MAGIではこれが逆転している。
#他のMAGUKファミリーにはGuKドメインとPDZドメインの間に1個のSH2ドメインがあるが、MAGIにはそれが無く、代わりにWWドメインが存在する。
#他のMAGUKファミリーにはGuKドメインとPDZドメインの間に1個のSH2ドメインがあるが、MAGIにはそれが無く、代わりにWWドメインが存在する。


 PDZドメインとWWドメインは他のタンパク質との結合部位となっている。GuKドメインは酵母のグアニル酸キナーゼとの相同性から名付けられたが、MAGUKファミリーの同ドメインには酵素活性は無く、やはり他のタンパク質との結合部位となっている<ref name=Zhu2011><pubmed>22117215</pubmed></ref> [5]
 PDZドメインとWWドメインは他のタンパク質との結合部位となっている。GuKドメインは[[酵母]]の[[グアニル酸キナーゼ]]との相同性から名付けられたが、MAGUKファミリーの同ドメインには酵素活性は無く、やはり他のタンパク質との結合部位となっている<ref name=Zhu2011><pubmed>22117215</pubmed></ref>。


== サブファミリー ==
== サブファミリー ==
 MAGIファミリーは線虫やショウジョウバエでは1種類(それぞれmagi-1とMagi)<ref name=Stetak2009><pubmed>19551147</pubmed></ref> [6]、哺乳類では3種類のパラログ(MAGI1, MAGI2, MAGI3)が同定されている。
 [[線虫]]や[[ショウジョウバエ]]では1種類(それぞれmagi-1とMagi)<ref name=Stetak2009><pubmed>19551147</pubmed></ref>[[哺乳類]]では3つのパラログ(MAGI1, MAGI2, MAGI3)が同定されている。


 MAGI1にはPDZ5ドメインの下流から異なるエクソンを使う3つのスプライシングアイソフォーム、MAGI1-a、MAGI1-b、MAGI1-cが知られている<ref name=Dobrosotskaya1997><pubmed>9395497</pubmed></ref> [1]
 MAGI1にはPDZ5ドメインの下流から異なるエクソンを使う3つのスプライシングアイソフォーム、[[MAGI1-a]]、[[MAGI1-b]]、[[MAGI1-c]]が知られている<ref name=Dobrosotskaya1997><pubmed>9395497</pubmed></ref>。


 MAGI2には翻訳開始点が異なる3つのスプライシングアイソフォーム、MAGI2-𝛼, MAGI2-β, MAGI2-𝛾がある<ref name=Hirao2000><pubmed>10644767</pubmed></ref> [9]。MAGI2-𝛼が最も長く、全てのドメインが揃っているが、MAGI2-βはPDZ0からGuKドメインの先頭までがスキップされ、MAGI2-𝛾はさらにGuKドメインのほとんどが無い。
 MAGI2には[[翻訳開始点]]が異なる3つのスプライシングアイソフォーム、[[MAGI2-𝛼]]、[[MAGI2-β]]、[[MAGI2-𝛾]]がある<ref name=Hirao2000><pubmed>10644767</pubmed></ref>。MAGI2-𝛼が最も長く、全てのドメインが揃っているが、MAGI2-βはPDZ0からGuKドメインの先頭までがスキップされ、MAGI2-𝛾はさらにGuKドメインのほとんどが無い。


== 発現 ==
== 発現 ==
=== 組織分布 ===
=== 組織分布 ===
 MAGI1-aは脳と腎臓、膵臓に、MAGI1-bは脳と心臓に強く発現する。MAGI1-cは脳での発現は比較的弱く、肝臓など他の臓器での発現が高い。また、PDZ3ドメインの上流に28~29アミノ酸が挿入されるアイソフォームがあり、ほぼ脳特異的に発現する<ref name=Laura2002><pubmed>11969287</pubmed></ref> [7]。MAGI2とMAGI3は脳と腎臓で発現が高いが、脳ではMAGI1とは異なった発現パターンを示す傾向がある。例えば網膜ではMAGI1は視細胞に、MAGI2とMAGI3は内顆粒層の細胞や神経節細胞で発現する<ref name=Yamagata2010><pubmed>20219992</pubmed></ref> [8]。大脳や海馬ではMAGI2-βが主に発現する<ref name=Deng2006><pubmed>16870733</pubmed></ref> [10]
 MAGI1-aは[[脳]]と[[腎臓]]、[[膵臓]]に、MAGI1-bは脳と[[心臓]]に強く発現する。MAGI1-cは脳での発現は比較的弱く、[[肝臓]]など他の臓器での発現が高い。また、PDZ3ドメインの上流に28~29アミノ酸が挿入されるアイソフォームがあり、ほぼ脳特異的に発現する<ref name=Laura2002><pubmed>11969287</pubmed></ref>。MAGI2とMAGI3は脳と腎臓で発現が高いが、脳ではMAGI1とは異なった発現パターンを示す傾向がある。例えば[[網膜]]ではMAGI1は[[視細胞]]に、MAGI2とMAGI3は[[内顆粒層]]の細胞や[[神経節細胞]]で発現する<ref name=Yamagata2010><pubmed>20219992</pubmed></ref>。[[大脳]]や[[海馬]]ではMAGI2-βが主に発現する<ref name=Deng2006><pubmed>16870733</pubmed></ref>。
=== 細胞内分布 ===
=== 細胞内分布 ===
 MAGIファミリー分子は、細胞間接着におけるタイトジャンクションやアドヘレンスジャンクション、ECMとの接着におけるフォーカルアドヒージョン<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref> [11]、神経細胞ではプレシナプスやポストシナプスに集積し<ref name=Yamagata2010 /><ref name=Ito2012 />[8,12]、その場で様々な分子と複合体を形成する。ラット海馬初代培養では、MAGI1は樹状突起全体に、MAGI2/3は樹状突起スパインに局在する<ref name=Ito2012><pubmed>22605569</pubmed></ref> [12]
 細胞間接着における[[タイトジャンクション]]や[[アドヘレンスジャンクション]]、[[細胞外マトリクス]]との接着における[[フォーカルアドヒージョン]]<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref>、神経細胞では[[シナプス前部]]や[[シナプス後部]]に集積し<ref name=Yamagata2010 /><ref name=Ito2012 />、その場で様々な分子と複合体を形成する。[[ラット]]海馬[[初代培養]]では、MAGI1は[[樹状突起]]全体に、MAGI2/3は[[樹状突起スパイン]]に局在する<ref name=Ito2012><pubmed>22605569</pubmed></ref>。


== 機能 ==
== 機能 ==
 MAGIは足場タンパク質として機能し、結合する相手によって多様な役割を果たす。
 足場タンパク質として機能し、結合する相手によって多様な役割を果たす。
=== 神経系 ===
=== 神経系 ===
 MAGI1~3は神経細胞のサブタイプ特異的に発現し、シナプスに集積する。MAGI2はGuKドメインを介してDLGAP1と結合し、PSDに取り込まれる。MAGI2はさらにPDZ1ドメインを介してニューロリギン-1と、PDZ5ドメインを介してNMDA受容体と結合し、これらをPSDにリクルートする<ref name=Hirao1998><pubmed>9694864</pubmed></ref> [3]。樹状突起スパインの形態に関しては、MAGI2 KOマウスの海馬初代培養で、野生型よりも長くなることが観察されている<ref name=Iida2007><pubmed>17438139</pubmed></ref> [23]。MAGI1の軸索伸長への役割が報告されている。NGF刺激によって誘導されるPC12細胞の軸索伸長は、MAGI1のノックダウンによって阻害される。MAGI1は神経成長因子(NGF)受容体であるp75NTRとPDZ0ドメインを介して結合し、同時にPDZ4/5ドメインにShcをリクルートしてその活性化に寄与し、突起伸長を促す<ref name=Ito2013><pubmed>23769981</pubmed></ref> [24]
 MAGI1-3は神経細胞のサブタイプ特異的に発現し、シナプスに集積する。MAGI2はGuKドメインを介してDLGAP1と結合し、PSDに取り込まれる。MAGI2はさらにPDZ1ドメインを介して[[ニューロリギン-1]]と、PDZ5ドメインを介して[[NMDA型グルタミン酸受容体]]と結合し、これらをPSDにリクルートする<ref name=Hirao1998><pubmed>9694864</pubmed></ref>。樹状突起スパインの形態に関しては、MAGI2[[ノックマウス]]の海馬初代培養で、野生型よりも長くなることが観察されている<ref name=Iida2007><pubmed>17438139</pubmed></ref>。MAGI1の[[軸索]]伸長への役割が報告されている。[[神経成長因子]](NGF)刺激によって誘導される[[PC12]]細胞の軸索伸長は、MAGI1のノックダウンによって阻害される。MAGI1はNGF受容体である[[p75NTR]]とPDZ0ドメインを介して結合し、同時にPDZ4/5ドメインに[[Shc]]をリクルートしてその活性化に寄与し、突起伸長を促す<ref name=Ito2013><pubmed>23769981</pubmed></ref>。


=== 腎臓糸球体上皮細胞における細胞接着 ===
=== 腎臓糸球体上皮細胞における細胞接着 ===
 MAGIの上皮系細胞における細胞間接着の役割は、糸球体上皮細胞(ポドサイト)において、良く研究されている。糸球体上皮細胞は、毛細血管壁の基底膜に足突起を伸ばし、隣接する細胞の足突起と指を組み合うようにはまり込み、隙間無く毛細血管を取り巻く。足突起同士は、タイトジャンクションによって結合しており、血液からのタンパク質の漏出を防いでいる。MAGI1は、このタイトジャンクションにおいて、PDZ4ドメインを介して接着分子のJAM-4と、またPDZ3ドメインを介して別の接着分子のネフリンと結合する。この接着複合体は、さらにZO-1やオクルーディンをその場にリクルートし、強固なバリア機能を実現している<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref><ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref><ref name=Weng2018><pubmed>30006415</pubmed></ref>[11,13,14]
 MAGIの上皮系細胞における[[細胞間接着]]の役割は、[[糸球体上皮細胞]]([[ポドサイト]])において、良く研究されている。糸球体上皮細胞は、毛細血管壁の[[基底膜]]に[[足突起]]を伸ばし、隣接する細胞の足突起と指を組み合うようにはまり込み、隙間無く毛細血管を取り巻く。足突起同士は、タイトジャンクションによって結合しており、血液からのタンパク質の漏出を防いでいる。MAGI1は、このタイトジャンクションにおいて、PDZ4ドメインを介して接着分子の[[JAM-4]]と、またPDZ3ドメインを介して別の接着分子の[[ネフリン]]と結合する。この接着複合体は、さらに[[ZO-1]]や[[オクルーディン]]をその場にリクルートし、強固なバリア機能を実現している<ref name=Hirabayashi2003><pubmed>12773569</pubmed></ref><ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref><ref name=Weng2018><pubmed>30006415</pubmed></ref>。


 さらにMAGI1は、WW2ドメイン、およびPDZ5ドメインを介してアクチン結合タンパク質であるシナプトポディン、および𝛼-アクチニン-4とそれぞれ結合し、これらをタイトジャンクションに局在させる<ref name=Patrie2002><pubmed>12042308</pubmed></ref> [15]。これらは糸球体上皮細胞の極性や複雑な足突起形成に働くとされている。MAGI2のノックアウト(KO)マウスは糸球体症を発症する。またMAGI1のKOマウスはそれだけでは腎機能に変化が無いが、さらにNephrin null遺伝子座がヘテロで加わると糸球体症を発症する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref> [16,17]
 さらにMAGI1は、WW2ドメイン、およびPDZ5ドメインを介して[[アクチン]]結合タンパク質である[[シナプトポディン]]、および[[𝛼-アクチニン-4]]とそれぞれ結合し、これらをタイトジャンクションに局在させる<ref name=Patrie2002><pubmed>12042308</pubmed></ref>。これらは糸球体上皮細胞の極性や複雑な足突起形成に働くとされている。MAGI2のノックアウト(KO)マウスは糸球体症を発症する。またMAGI1のKOマウスはそれだけでは腎機能に変化が無いが、さらにネフリンnull遺伝子座がヘテロで加わると糸球体症を発症する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref>。
=== 癌抑制遺伝子 ===
=== 癌抑制遺伝子 ===
 様々な癌においてMAGI1~3の発現が低下していることが観察されている<ref name=Kotelevets2021><pubmed>34503076</pubmed></ref><ref name=Wörthmüller2021><pubmed>34198584</pubmed></ref>[18,19]。MAGIはアドへレンスジャンクションの安定化に寄与しており、これが低下することで、癌の増殖や浸潤性が亢進される。アドヘレンスジャンクションにおいて、MAGIはそのPDZ5ドメインを介してE-カドヘリンを中心とした接着複合体のβ-カテニンに結合し、細胞間接着を安定化させる。MAGIは同時にPDZ2ドメインを介してPTENをその場にリクルートし、PTENの脱リン酸化活性によりAKTやGEFを不活性化し、細胞の浸潤性を抑制する<ref name=Ma2015><pubmed> 26248734 </pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17880912</pubmed></ref><ref name=Kotelevets2005><pubmed>15629897</pubmed></ref>[20–22]。このような生化学的機能は、MAGI1~3に共通して見られる。逆にMAGIの低下は、Wnt/β-カテニンシグナルを増強し、腫瘍化を促進する。
 様々な[[癌]]においてMAGI1-3の発現が低下していることが観察されている<ref name=Kotelevets2021><pubmed>34503076</pubmed></ref><ref name=Wörthmüller2021><pubmed>34198584</pubmed></ref>。MAGIはアドへレンスジャンクションの安定化に寄与しており、これが低下することで、癌の増殖や浸潤性が亢進される。アドヘレンスジャンクションにおいて、MAGIはそのPDZ5ドメインを介して[[E-カドヘリン]]を中心とした接着複合体の[[β-カテニン]]に結合し、細胞間接着を安定化させる。MAGIは同時にPDZ2ドメインを介してPTENをその場にリクルートし、PTENの[[脱リン酸化]]活性により[[AKT]]や[[GEF]]を不活性化し、細胞の浸潤性を抑制する<ref name=Ma2015><pubmed> 26248734 </pubmed></ref><ref name=Hu2007><pubmed>17880912</pubmed></ref><ref name=Kotelevets2005><pubmed>15629897</pubmed></ref>。このような生化学的機能は、MAGI1-3に共通して見られる。逆にMAGIの低下は、[[Wnt]]/β-カテニンシグナルを増強し、腫瘍化を促進する。


== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
 MAGIファミリー分子は統合失調症、双極性障害、自閉性スペクトラム症においてMAGI1のコピー数多型(CNV)が見つかっている<ref name=Karlsson2012><pubmed>22381734</pubmed></ref><ref name=DeLaHoz2015><pubmed>26075115</pubmed></ref>[25,26]。MAGI2は統合失調症 <ref name=Karlsson2012><pubmed>22381734</pubmed></ref> [25]、小児性てんかん<ref name=Lugo2020><pubmed>32077592</pubmed></ref> [27]、発達性てんかん性脳症<ref name=Mastrangelo2012><pubmed>22196487</pubmed></ref> [28]でCNVが見つかっている。
 [[統合失調症]]、[[双極性障害]]、[[自閉性スペクトラム症]]においてMAGI1の[[コピー数多型]](CNV)が見つかっている<ref name=Karlsson2012><pubmed>22381734</pubmed></ref><ref name=DeLaHoz2015><pubmed>26075115</pubmed></ref>。MAGI2は統合失調症 <ref name=Karlsson2012><pubmed>22381734</pubmed></ref>、[[小児性てんかん]]<ref name=Lugo2020><pubmed>32077592</pubmed></ref>、[[発達性てんかん性脳症]]<ref name=Mastrangelo2012><pubmed>22196487</pubmed></ref>でCNVが見つかっている。


 また、多くの腎疾患や癌との関連が報告されている。MAGI2 ノックアウトマウスは出生後、糸球体症を発症して死亡する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref>[16,17]。MAGI1のノックアウトマウスは組織学的に大きな表現型が観察されていない<ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref> [13]
 また、多くの腎疾患や癌との関連が報告されている。MAGI2 ノックアウトマウスは出生後、糸球体症を発症して死亡する<ref name=Balbas2014><pubmed>25271328</pubmed></ref><ref name=Ihara2014><pubmed>25108225</pubmed></ref>。MAGI1のノックアウトマウスは組織学的に大きな表現型が観察されていない<ref name=Ni2016><pubmed>27707879</pubmed></ref>。


== 関連語 ==
== 関連語 ==

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