161
回編集
Tatsuyamori (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
Tatsuyamori (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
||
91行目: | 91行目: | ||
成長円錐の運動性は細胞骨格や接着分子により規定されることは上述したが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどによる細胞骨格制御、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼなどによる細胞接着制御が関与することが明らかにされている。 | 成長円錐の運動性は細胞骨格や接着分子により規定されることは上述したが、成長円錐の前進速度に空間的な非対称性が生じれば、成長円錐は全体として旋回運動を呈することになる。実際に、軸索ガイダンス因子が制御する成長円錐の旋回運動にもRhoファミリー低分子量Gタンパク質、ADF/cofilin、Ena/Vasp、APCなどによる細胞骨格制御、CalpainやFAK、Srcチロシンキナーゼなどによる細胞接着制御が関与することが明らかにされている。 | ||
<br>=== | ==== <br>誘引-反発応答を制御する分子メカニズム ==== | ||
軸索ガイダンスの分子メカニズムの研究の多くは、Pooのグループによって開発されたターニングアッセイと呼ばれる実験系を用いて行われている。この手法は、培養条件下でガラスピペットから分泌性ガイダンス因子をパルス状に放出し、成長円錐近傍にガイダンス因子の濃度勾配を人工的に作り出し、それに対する成長円錐の挙動を観察するものである。このターニングアッセイを用いた解析では、しばしば特定のシグナルカスケードを遮断すると誘引-反発の応答が逆転する現象が見られる。例えば、ネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPのアンタゴニストであるRp-cAMPsの投与により反発へと逆転する。このように、成長円錐の旋回運動の方向は様々な細胞内シグナル伝達経路が協調的に働き、複雑なクロストークの結果決定されると予想される。これは、生体内で成長円錐が様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しながらそのシグナルを統合し進行する経路を選択することを反映していると考えられる。ここでは、誘引-反発応答を制御するメカニズムについて概説する。 | 軸索ガイダンスの分子メカニズムの研究の多くは、Pooのグループによって開発されたターニングアッセイと呼ばれる実験系を用いて行われている。この手法は、培養条件下でガラスピペットから分泌性ガイダンス因子をパルス状に放出し、成長円錐近傍にガイダンス因子の濃度勾配を人工的に作り出し、それに対する成長円錐の挙動を観察するものである。このターニングアッセイを用いた解析では、しばしば特定のシグナルカスケードを遮断すると誘引-反発の応答が逆転する現象が見られる。例えば、ネトリン-1及びBDNFの濃度勾配に対する成長円錐の誘引は、cAMPのアンタゴニストであるRp-cAMPsの投与により反発へと逆転する。このように、成長円錐の旋回運動の方向は様々な細胞内シグナル伝達経路が協調的に働き、複雑なクロストークの結果決定されると予想される。これは、生体内で成長円錐が様々な軸索ガイダンス因子のシグナルを受容しながらそのシグナルを統合し進行する経路を選択することを反映していると考えられる。ここでは、誘引-反発応答を制御するメカニズムについて概説する。 | ||
119行目: | 119行目: | ||
==== 膜トラフィッキング ==== | ==== 膜トラフィッキング ==== | ||
近年、エキソサイトーシスやエンドサイトーシスといった細胞膜トラフィッキングも軸索ガイダンス因子が誘導する成長円錐の旋回運動に関与することが報告されている。これまでの見解として、誘引性ガイダンス因子ではVAMP2依存性エキソサイトーシスが、反発性ガイダンス因子ではクラスリン依存性エンドサイトーシスがそれぞれ非対称に成長円錐内で起き、成長円錐は旋回運動を呈すると考えられている。一部の反発性ガイダンス因子ではクラスリン非依存性のマクロピノサイトーシスが関与することも示唆されている。また、人為的にエンドサイトーシス-エキソサイトーシスを成長円錐の片側で促進あるいは阻害すると成長円錐の旋回運動が誘導されるという報告もあり、軸索ガイダンス因子は成長円錐内のエキソサイトーシス/エンドサイトーシスの空間的なバランスを制御することで、成長円錐の旋回運動を誘導すると考えられる。 | 近年、エキソサイトーシスやエンドサイトーシスといった細胞膜トラフィッキングも軸索ガイダンス因子が誘導する成長円錐の旋回運動に関与することが報告されている。これまでの見解として、誘引性ガイダンス因子ではVAMP2依存性エキソサイトーシスが、反発性ガイダンス因子ではクラスリン依存性エンドサイトーシスがそれぞれ非対称に成長円錐内で起き、成長円錐は旋回運動を呈すると考えられている。一部の反発性ガイダンス因子ではクラスリン非依存性のマクロピノサイトーシスが関与することも示唆されている。また、人為的にエンドサイトーシス-エキソサイトーシスを成長円錐の片側で促進あるいは阻害すると成長円錐の旋回運動が誘導されるという報告もあり、軸索ガイダンス因子は成長円錐内のエキソサイトーシス/エンドサイトーシスの空間的なバランスを制御することで、成長円錐の旋回運動を誘導すると考えられる。 | ||
<br> | |||
==== 局所タンパク質合成と分解 ==== | ==== 局所タンパク質合成と分解 ==== |
回編集