「抑制性シナプス」の版間の差分

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<font size="+1">中畑 義久、稲田 浩之、加藤 剛、鍋倉 淳一</font><br>
<font size="+1">中畑 義久、稲田 浩之、加藤 剛、鍋倉 淳一</font><br>
''自然科学研究機構生理学研究所''<br>
''自然科学研究機構生理学研究所''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月20日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月20日 原稿完成日:2015年4月13日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
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===シナプス後部===
===シナプス後部===
[[image:抑制性シナプス2.png|thumb|350px|'''図2.抑制性シナプスを構成する分子'''<br>(GABA:ガンマアミノ酪酸、GAD67:グルタミン酸脱炭酸酵素67、GAD65:グルタミン酸脱炭酸酵素65、VIAAT(VGAT):小胞抑制性アミノ酸輸送体(小胞GABA輸送体)、SHMT:セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)]]
[[image:抑制性シナプス2.png|thumb|350px|'''図2.抑制性シナプスを構成する分子'''<br>([[GABA]]:[[&gamma;アミノ酪酸]]、[[GAD67]]:[[グルタミン酸脱炭酸酵素67]]、[[GAD65]]:[[グルタミン酸脱炭酸酵素65]]、[[VIAAT]]([[VGAT]]):[[小胞抑制性アミノ酸輸送体]]([[小胞GABA輸送体]])、[[SHMT]]:[[セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ]])]]


 シナプス前終末から[[開口放出]]されたGABAやグリシンなどの神経伝達物質は、シナプス後膜に存在する[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]および[[グリシン受容体]]に結合する(図2)。いずれも[[塩化物イオンチャネル]]に共役したイオンチャネル型受容体であり、活性化に伴って塩化物イオンの[[透過性]](コンダクタンス)<sup>注2</sup>を上昇させる。これらは各々複数のサブタイプを持っている<ref name=ref18><pubmed>7516126</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>15383648</pubmed></ref>。
 シナプス前終末から[[開口放出]]されたGABAやグリシンなどの神経伝達物質は、シナプス後膜に存在する[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]および[[グリシン受容体]]に結合する(図2)。いずれも[[塩化物イオンチャネル]]に共役したイオンチャネル型受容体であり、活性化に伴って塩化物イオンの[[透過性]](コンダクタンス)<sup>注2</sup>を上昇させる。これらは各々複数のサブタイプを持っている<ref name=ref18><pubmed>7516126</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>15383648</pubmed></ref>。
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====発達期および傷害回復期におけるGABA・グリシンに対する応答変化====
====発達期および傷害回復期におけるGABA・グリシンに対する応答変化====
[[image:抑制性シナプス3.png|thumb|350px|'''図3.発達に伴う細胞内塩化物イオン濃度とGABA応答の変化'''<br>発達に伴ってNa<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体1([[NKCC1]]) による塩化物イオン(Cl<sup>-</sup>)の細胞内汲み入れが減少する一方、K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体2([[KCC2]]) による細胞外への汲み出しが増加する。そのため、GABA<sub>A</sub>受容体の活性化は、未成熟な神経細胞において細胞外へ塩化物イオンの流出をもたらし、脱分極応答となる。一方、成熟した神経細胞では細胞内への塩化物イオンの流入を引き起こし、過分極応答となる。(<ref name=ref30><pubmed>17928584</pubmed></ref>を改変)]]
[[image:抑制性シナプス3.png|thumb|350px|'''図3.発達に伴う細胞内塩化物イオン濃度とGABA応答の変化'''<br>発達に伴って[[Na+-K+-Cl-共輸送体1|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体1]]([[NKCC1]]) による塩化物イオン(Cl<sup>-</sup>)の細胞内汲み入れが減少する一方、[[K+-Cl-共輸送体2|K<sup>+</sup>-Cl<sup>-</sup>共輸送体2]]([[KCC2]]) による細胞外への汲み出しが増加する。そのため、[[GABAA受容体|GABA<sub>A</sub>受容体]]の活性化は、未成熟な神経細胞において細胞外へ[[塩化物イオン]]の流出をもたらし、[[脱分極]]応答となる。一方、成熟した神経細胞では細胞内への塩化物イオンの流入を引き起こし、[[過分極]]応答となる。(<ref name=ref30><pubmed>17928584</pubmed></ref>を改変)]]


 GABA<sub>A</sub>受容体やグリシン受容体のチャネルを流れる塩化物イオンの向きと量は、細胞内外における塩化物イオンの[[濃度勾配]]と[[膜電位]]に依存している<ref name=ref29><pubmed>11733521</pubmed></ref>。そのため、細胞内塩化物イオン濃度が高い状態である幼若期のニューロンでは、GABA<sub>A</sub>受容体(もしくはグリシン受容体)の活性化に伴って塩化物イオンの流出をもたらし、[[脱分極]]することも知られている<ref name=ref30 />(図3)。
 GABA<sub>A</sub>受容体やグリシン受容体のチャネルを流れる塩化物イオンの向きと量は、細胞内外における塩化物イオンの[[濃度勾配]]と[[膜電位]]に依存している<ref name=ref29><pubmed>11733521</pubmed></ref>。そのため、細胞内塩化物イオン濃度が高い状態である幼若期のニューロンでは、GABA<sub>A</sub>受容体(もしくはグリシン受容体)の活性化に伴って塩化物イオンの流出をもたらし、[[脱分極]]することも知られている<ref name=ref30 />(図3)。