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英:collapsin response mediator protein、英略語:CRMP | 英:collapsin response mediator protein、英略語:CRMP | ||
同義語:コラプシン反応媒介タンパク質、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質 (dihydropyrimidinase-like protein) | 同義語:コラプシン反応媒介タンパク質、ジヒドロピリミジナーゼ様タンパク質 (dihydropyrimidinase-like protein) | ||
コラプシン反応媒介タンパク質(collapsin response mediator proteins, CRMPs)は、[[軸索]]の反発性因子である[[セマフォリン]]3A(Sema3A)の細胞内シグナルを伝達する分子として最初に同定された<ref name="ref1"><pubmed> 7637782 </pubmed></ref>。CRMPsは、細胞質タンパク質であり、これまでに5つのサブタイプ(CRMP1~5)が同定されている。これらの発現は主に発生時期の神経系に認められ、それぞれ特異的な発現分布と発現時期を示す<ref name="ref2"><pubmed> 14514985 </pubmed></ref>。CRMPsは[[線虫]]Unc-33の相同分子であり、Unc-33の突然変異は線虫の[[神経細胞]]において軸索の伸長やガイダンスの異常を引き起こす<ref name="ref3"><pubmed> 1468626 </pubmed></ref>。CRMPsは[[リン酸化]]タンパク質であり、リン酸化の制御は神経の発達や成熟に重要な役割を果たす<ref name="ref4"><pubmed> 17311006 </pubmed></ref><ref name="ref5"><pubmed> 22351471 </pubmed></ref>。また、初代[[培養神経細胞]]や[[ノックアウトマウス]]を使った研究により、CRMPsの役割が明らかになってきており、極性・軸索形成や神経細胞の遊走、[[シナプス]]形成、[[シナプス可塑性]]、神経疾患といった様々な神経機能と病態に関与することが報告されている<ref name="ref4" /><ref name="ref5" />。 | コラプシン反応媒介タンパク質(collapsin response mediator proteins, CRMPs)は、[[軸索]]の反発性因子である[[セマフォリン]]3A(Sema3A)の細胞内シグナルを伝達する分子として最初に同定された<ref name="ref1"><pubmed> 7637782 </pubmed></ref>。CRMPsは、細胞質タンパク質であり、これまでに5つのサブタイプ(CRMP1~5)が同定されている。これらの発現は主に発生時期の神経系に認められ、それぞれ特異的な発現分布と発現時期を示す<ref name="ref2"><pubmed> 14514985 </pubmed></ref>。CRMPsは[[線虫]]Unc-33の相同分子であり、Unc-33の突然変異は線虫の[[神経細胞]]において軸索の伸長やガイダンスの異常を引き起こす<ref name="ref3"><pubmed> 1468626 </pubmed></ref>。CRMPsは[[リン酸化]]タンパク質であり、リン酸化の制御は神経の発達や成熟に重要な役割を果たす<ref name="ref4"><pubmed> 17311006 </pubmed></ref><ref name="ref5"><pubmed> 22351471 </pubmed></ref>。また、初代[[培養神経細胞]]や[[ノックアウトマウス]]を使った研究により、CRMPsの役割が明らかになってきており、極性・軸索形成や神経細胞の遊走、[[シナプス]]形成、[[シナプス可塑性]]、神経疾患といった様々な神経機能と病態に関与することが報告されている<ref name="ref4" /><ref name="ref5" />。 | ||
==構造== | == 構造 == | ||
(タンパク質のドメイン構造、翻訳後修飾、相互作用するタンパク質等について御記述下さい) | |||
==サブファミリー== | (タンパク質のドメイン構造、翻訳後修飾、相互作用するタンパク質等について御記述下さい) | ||
これまでに5つのサブタイプ(CRMP1~5)が同定されている。[[線虫]]Unc-33の相同分子であり。。。 | |||
==発現 == | == サブファミリー == | ||
これまでに5つのサブタイプ(CRMP1~5)が同定されている。[[線虫]]Unc-33の相同分子であり。。。 | |||
== 発現 == | |||
=== 発生期の神経系 === | === 発生期の神経系 === | ||
[[ラット]]においては、初期胚から[[wikipedia:ja:有糸分裂|有糸分裂]]後の神経細胞において強く発現し、生後1週間前後でピークに達し、その後は発現量が低下する。どのCRMPsも時空間的に調節された発現パターンを示す<ref name="ref2" />(表1) 。CRMP2は最も広範な発現パターンを示し、大多数の神経細胞の発生初期において発現する<ref name="ref6"><pubmed> 8815901 </pubmed></ref>。CRMP1とCRMP4は神経細胞の遊走後に発現し、胎生後期から出生後初期において最も発現量が高くなり、その後発現量が低下する<ref name="ref6" />。CRMP3の発現は、主に[[小脳]]の[[顆粒細胞]]に限られている<ref name="ref6" />。CRMP5の発現は[[新皮質]]、[[海馬]]、[[脊髄]]に顕著であり、有糸分裂後の神経細胞で発現する<ref name="ref7"><pubmed> 11549731 </pubmed></ref>。 | [[ラット]]においては、初期胚から[[wikipedia:ja:有糸分裂|有糸分裂]]後の神経細胞において強く発現し、生後1週間前後でピークに達し、その後は発現量が低下する。どのCRMPsも時空間的に調節された発現パターンを示す<ref name="ref2" />(表1) 。CRMP2は最も広範な発現パターンを示し、大多数の神経細胞の発生初期において発現する<ref name="ref6"><pubmed> 8815901 </pubmed></ref>。CRMP1とCRMP4は神経細胞の遊走後に発現し、胎生後期から出生後初期において最も発現量が高くなり、その後発現量が低下する<ref name="ref6" />。CRMP3の発現は、主に[[小脳]]の[[顆粒細胞]]に限られている<ref name="ref6" />。CRMP5の発現は[[新皮質]]、[[海馬]]、[[脊髄]]に顕著であり、有糸分裂後の神経細胞で発現する<ref name="ref7"><pubmed> 11549731 </pubmed></ref>。 | ||
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|} | |} | ||
E=胎生期, P=出生後, +/-=very weak, +=weak, ++=average, +++=strong <br>'''表1 CRMPs mRNAの発現時期''' | |||
E=胎生期, P=出生後, +/-=very weak, +=weak, ++=average, +++=strong <br>'''表1 CRMPs mRNAの発現時期''' | |||
=== 成体の神経系 === | === 成体の神経系 === | ||
ラットの成体脳において、CRMPsは劇的に発現量が低下し、主に可塑性や[[神経新生]]を保持する領域([[嗅球]]、海馬、小脳)で発現が認められる。CRMP1は主に小脳の[[プルキンエ細胞]]において発現する<ref name="ref6" />。CRMP2は成体脳においてはCRMPの中でも発現量が最も高く、嗅覚系や小脳、海馬で多く検出されている<ref name="ref2" /><ref name="ref6" />。CRMP3は小脳[[顆粒細胞]]や[[下オリーブ核]]、[[海馬歯状回]]で発現する<ref name="ref2" /><ref name="ref6" />。CRMP4は成体脳においてはCRMPsの中でも発現量が最も低く、嗅球や海馬、小脳の[[内顆粒層]]におけるわずかな細胞で発現が確認されている<ref name="ref2" /><ref name="ref8"><pubmed> 10931485 </pubmed></ref>。CRMP5は嗅球や[[嗅上皮]]における有糸分裂後の神経細胞、海馬[[歯状回]]で発現しており、また、[[末梢神経]]の軸索や[[感覚神経]]でも発現していることが報告されている<ref name="ref2" />。 | |||
==機能 == | == 機能 == | ||
=== CRMP1 === | === CRMP1 === | ||
[[Image:CRMP fig1.jpg|thumb|right|300px|図1 CRMP1を介したシグナル伝達機構]] | [[Image:CRMP fig1.jpg|thumb|right|300px|図1 CRMP1を介したシグナル伝達機構]] | ||
CRMP1は、生後1日目のラット[[大脳皮質]]で強く発現する<ref name="ref6" />。ノックアウトマウスの解析から、CRMP1は大脳皮質神経細胞の遊走を制御することが報告されている<ref name="ref9"><pubmed> 17182786 </pubmed></ref>。CRMP1は[[Fyn]]の基質であり、[[リーリン]](Reelin)が受容体([[VLDLR]]/ApoER2)に結合すると、[[Fyn]]によりCRMP1と[[Dab1]]が[[チロシンリン酸化]]され、これらが相乗的にシグナルのメディエーターとして働き、神経細胞の遊走を制御すると考えられている<ref name="ref9" />(図1)。また、[[Cdk5]]によるCRMP1のリン酸化が、Sema3Aによる[[樹状突起スパイン]]の形成に関与することが報告されている<ref name="ref10"><pubmed> 18003833 </pubmed></ref>(図1)。 | CRMP1は、生後1日目のラット[[大脳皮質]]で強く発現する<ref name="ref6" />。ノックアウトマウスの解析から、CRMP1は大脳皮質神経細胞の遊走を制御することが報告されている<ref name="ref9"><pubmed> 17182786 </pubmed></ref>。CRMP1は[[Fyn]]の基質であり、[[リーリン]](Reelin)が受容体([[VLDLR]]/ApoER2)に結合すると、[[Fyn]]によりCRMP1と[[Dab1]]が[[チロシンリン酸化]]され、これらが相乗的にシグナルのメディエーターとして働き、神経細胞の遊走を制御すると考えられている<ref name="ref9" />(図1)。また、[[Cdk5]]によるCRMP1のリン酸化が、Sema3Aによる[[樹状突起スパイン]]の形成に関与することが報告されている<ref name="ref10"><pubmed> 18003833 </pubmed></ref>(図1)。 | ||
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<references /> | <references /> | ||
<br> (執筆者:久保祐亮、稲垣直之 担当編集委員:大隅典子) | |||
(執筆者:久保祐亮、稲垣直之 担当編集委員:大隅典子) |