「神経細胞極性」の版間の差分

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 神経細胞の極性化を担う細胞内シグナル伝達に関して、この十数年の間に、さまざまな細胞内分子群が同定されてきている(図4)<ref name=ref2 /> <ref name=ref18 />。
 神経細胞の極性化を担う細胞内シグナル伝達に関して、この十数年の間に、さまざまな細胞内分子群が同定されてきている(図4)<ref name=ref2 /> <ref name=ref18 />。


===フォスファチジルイノシトール3-キナーゼ===
===ホファチジルイノシトール3-キナーゼ===
 [[フォスファチジルイノシトール3-キナーゼ]](PI3-キナーゼ)は、様々な受容体の下流で活性化され、様々な細胞の極性化に関与する。
 [[ホファチジルイノシトール3-キナーゼ]](PI3-キナーゼ)は、様々な受容体の下流で活性化され、様々な細胞の極性化に関与する。


 神経細胞においては、PI3-キナーゼの活性やその産物[[ホスファチジルイノシトール1,4,5 –三リン酸]]([[PIP3|PIP<sub>3</sub>]])は、ステージ3の培養海馬神経細胞の軸索に局在する。また、未成熟な突起における局所的なPIP<sub>3</sub>の増加は、その突起の急激な伸長と軸索化を引き起こす<ref><pubmed> 15030394 </pubmed></ref>。一方、PI3-キナーゼの活性の阻害や、[[phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10]]([[PTEN]])の過剰発現によるPIP<sub>3</sub>の産生阻害は、極性化を抑制される<ref><pubmed> 12526794</pubmed></ref>。PIP<sub>3</sub>の下流では、[[リン酸化]]酵素[[Akt]]が活性化され、別のリン酸化酵素[[glycogen synthase kinase 3]]β([[GSK3]]β)をリン酸化し、リン酸化されたGSK3βは不活性化する<ref><pubmed> 15652488 </pubmed></ref>。活性化型のGSK3βは[[collapsin response mediator protein]]-2([[CRMP-2]])をリン酸化し、不活性化する。活性化型の[[CRMP]]-2はチューブリンと結合して微小管の重合を促進することで軸索伸長に関与する分子であることから、PI3-キナーゼはAkt、GSK3βを経由して微小管のダイナミクスを制御し、細胞極性に関与すると考えられている<ref name=ref19 />。また、PIP<sub>3</sub>の下流では、[[RhoファミリーGタンパク質]]である[[Cdc42]]やRac1が活性化される。さらにその下流では、アクチンの重合を促進するArp2/3が活性化される。Arp2/3の活性を制御する[[WASP]]や[[WAVE]]を抑制すると軸索伸長が阻害されることから、PI3キナーゼは微小管だけでなく、アクチン線維のダイナミクスも制御することで極性形成に関与すると考えられる<ref><pubmed> 20484635 </pubmed></ref>。
 神経細胞においては、PI3-キナーゼの活性やその産物[[ホスファチジルイノシトール1,4,5 –三リン酸]]([[PIP3|PIP<sub>3</sub>]])は、ステージ3の培養海馬神経細胞の軸索に局在する。また、未成熟な突起における局所的なPIP<sub>3</sub>の増加は、その突起の急激な伸長と軸索化を引き起こす<ref><pubmed> 15030394 </pubmed></ref>。一方、PI3-キナーゼの活性の阻害や、[[phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10]]([[PTEN]])の過剰発現によるPIP<sub>3</sub>の産生阻害は、極性化を抑制される<ref><pubmed> 12526794</pubmed></ref>。PIP<sub>3</sub>の下流では、[[リン酸化]]酵素[[Akt]]が活性化され、別のリン酸化酵素[[glycogen synthase kinase 3]]β([[GSK3]]β)をリン酸化し、リン酸化されたGSK3βは不活性化する<ref><pubmed> 15652488 </pubmed></ref>。活性化型のGSK3βは[[collapsin response mediator protein]]-2([[CRMP-2]])をリン酸化し、不活性化する。活性化型の[[CRMP]]-2はチューブリンと結合して微小管の重合を促進することで軸索伸長に関与する分子であることから、PI3-キナーゼはAkt、GSK3βを経由して微小管のダイナミクスを制御し、細胞極性に関与すると考えられている<ref name=ref19 />。また、PIP<sub>3</sub>の下流では、[[RhoファミリーGタンパク質]]である[[Cdc42]]やRac1が活性化される。さらにその下流では、アクチンの重合を促進するArp2/3が活性化される。Arp2/3の活性を制御する[[WASP]]や[[WAVE]]を抑制すると軸索伸長が阻害されることから、PI3キナーゼは微小管だけでなく、アクチン線維のダイナミクスも制御することで極性形成に関与すると考えられる<ref><pubmed> 20484635 </pubmed></ref>。

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