「メチル化CpG結合タンパク質2」の版間の差分

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辻村啓太
<div align="right"> 
元名古屋大学大学院理学研究科附属ニューロサイエンス研究センター・脳機能発達制御学グループ
<font size="+1">[https://researchmap.jp/tjmrkit 辻村啓太]</font><br>
レット症候群支援機構
''元名古屋大学大学院理学研究科附属ニューロサイエンス研究センター・脳機能発達制御学グループ<br>
MECP2重複症候群家族会
レット症候群支援機構<br>
 
MECP2重複症候群家族会''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2025年9月1日 原稿完成日:2025年9月XXX日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学/医学部精神医学講座)<br>
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英:Methyl-CpG binding protein 2
英:Methyl-CpG binding protein 2
略称:MeCP2
略称:MeCP2
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== メチル化CpG結合タンパク質2とは ==
== メチル化CpG結合タンパク質2とは ==
 メチル化CpG結合タンパク質2 (Methyl-CpG binding protein 2, MeCP2)は、1992年にBirdらによって[[哺乳類]]の[[メチル化]]された[[DNA]]に強い親和性を持って結合するタンパク質として初めて同定され<ref name=Lewis1992><pubmed>1606614</pubmed></ref>、その後の研究により、メチル化された標的遺伝子に結合し、その発現を抑制することが報告された<ref name=Nan1997><pubmed>9038338</pubmed></ref> (Nan X et al., Cell, 88, 471-481, 1997)。一方で1999年、[[wj :フーダ・ゾービ|Huda Zhoghbi]]らのグループにより進行性の神経症状と[[発達遅延]]を特徴とする重度の神経発達症である[[レット症候群]]の女児患者が[[X染色体]]に存在するMECP2遺伝子に変異を有することが示され、原因遺伝子であることが明らかとなった<ref name=Amir1999><pubmed>10508514</pubmed></ref> (Amir RE et al., Nat Genet, 23, 185-188, 1999)。2005年には重度の精神遅滞と進行性の神経症状を呈する複数の男児患者らにおいてMECP2遺伝子の重複が見出され、MECP2遺伝子の重複がレット症候群とは異なる神経発達症、[[MECP2重複症候群]]を引き起こすことが判った<ref name=VanEsch2005><pubmed>16080119</pubmed></ref><ref name=Meins2005><pubmed>15689435</pubmed></ref> (Van Esch H et al., Am J Hum Genet, 77(3), 442-53, 2005; Meins M et al., J Med Genet, 42(2), e12, 2005)。これらの報告により、MeCP2は[[エピジェネティクス]]と脳機能・神経疾患を結びつける分子として注目を集めている。MECP2遺伝子の異常はレット症候群やMECP2重複症候群だけでなく、広範な神経疾患患者にも認められることが続々と明らかになっており、MeCP2の機能を明らかにすることは脳機能や幅広い神経疾患病態の解明に寄与すると考えられている<ref name=Chahrour2007><pubmed>17988628</pubmed></ref> (Chahrour M & Zoghbi HY Neuron, 56, 422-437, 2007)。
 メチル化CpG結合タンパク質2 (MeCP2)は、1992年に[[wj:エイドリアン・バード|Bird]]らによって[[哺乳類]]の[[メチル化]]された[[DNA]]に強い親和性を持って結合するタンパク質として初めて同定され<ref name=Lewis1992><pubmed>1606614</pubmed></ref>、その後の研究により、メチル化された標的遺伝子に結合し、その発現を抑制することが報告された<ref name=Nan1997><pubmed>9038338</pubmed></ref> (Nan X et al., Cell, 88, 471-481, 1997)。一方で1999年、[[wj :フーダ・ゾービ|Huda Zhoghbi]]らのグループにより進行性の神経症状と[[発達遅延]]を特徴とする重度の神経発達症である[[レット症候群]]の女児患者が[[X染色体]]に存在するMECP2遺伝子に変異を有することが示され、原因遺伝子であることが明らかとなった<ref name=Amir1999><pubmed>10508514</pubmed></ref> (Amir RE et al., Nat Genet, 23, 185-188, 1999)。2005年には重度の精神遅滞と進行性の神経症状を呈する複数の男児患者らにおいてMECP2遺伝子の重複が見出され、MECP2遺伝子の重複がレット症候群とは異なる神経発達症、[[MECP2重複症候群]]を引き起こすことが判った<ref name=VanEsch2005><pubmed>16080119</pubmed></ref><ref name=Meins2005><pubmed>15689435</pubmed></ref> (Van Esch H et al., Am J Hum Genet, 77(3), 442-53, 2005; Meins M et al., J Med Genet, 42(2), e12, 2005)。これらの報告により、MeCP2は[[エピジェネティクス]]と脳機能・神経疾患を結びつける分子として注目を集めている。MECP2遺伝子の異常はレット症候群やMECP2重複症候群だけでなく、広範な神経疾患患者にも認められることが続々と明らかになっており、MeCP2の機能を明らかにすることは脳機能や幅広い神経疾患病態の解明に寄与すると考えられている<ref name=Chahrour2007><pubmed>17988628</pubmed></ref> (Chahrour M & Zoghbi HY Neuron, 56, 422-437, 2007)。


== 構造 ==
== 構造 ==

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