「統合失調症」の版間の差分

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#感情や意欲の症状などの陰性症状の改善を目指す精神賦活作用の三種類である。
#感情や意欲の症状などの陰性症状の改善を目指す精神賦活作用の三種類である。


 このうち、抗精神病作用にドーパミンD2受容体阻害作用が関係していることはほぼ確実であるが、ドーパミンD2阻害作用の選択性を高めた薬剤ほど有効とも言えず、現在盛んに用いられている第二世代抗精神病薬の多くは[[ノルアドレナリン]]系、セロトニン系、ヒスタミン系など、多彩な神経伝達物質への作用を持つ多受容体作用型の薬剤であることから、他の受容体への作用もその臨床効果に関連すると考えられる。しかしながら、現在盛んに用いられている薬物の多くがD2阻害作用個々の抗精神病薬はさまざまな神経伝達物質への作用を合わせもっているので、それに応じて臨床作用のプロフィールが異なることになる。
 このうち、抗精神病作用に[[ドーパミン]][[D2受容体]]阻害作用が関係していることはほぼ確実であるが、ドーパミンD2阻害作用の選択性を高めた薬剤ほど有効とも言えず、現在盛んに用いられている[[第二世代抗精神病薬]]の多くは[[ノルアドレナリン]]系、[[セロトニン]]系、[[ヒスタミン]]系など、多彩な神経伝達物質への作用を持つ多受容体作用型の薬剤であることから、他の受容体への作用もその臨床効果に関連すると考えられる。しかしながら、現在盛んに用いられている薬物の多くがD2受容体阻害作用は共通しているものの、個々の抗精神病薬はさまざまな神経伝達物質への作用を合わせもっているので、それに応じて臨床作用のプロフィールが異なることになる。


 抗精神病作用についての当事者の実感は、「どうしてもあることに捉われて気持ちが過敏になることがなくなる」「頭が忙しくなくなる」「忘れることはできないが、それだけにのめりこむことが無くなる」というものである。その効果は「気分が巻きこまれず無関心となり、行動や自律神経機能に影響しなくなる」という体験で、幻覚や妄想に捉われなくなっていく。精神症状学において幻覚や妄想は[[知覚]]や思考の症状に分類されるが、その病態は知覚や思考の領域に留まらず、気分が巻き込まれて無関心でいられなくなるという情動の領域、さらにそれが行為や自律神経機能に影響するという行動の領域にまで及んでおり、その点が変化していく。
 抗精神病作用についての当事者の実感は、「どうしてもあることに捉われて気持ちが過敏になることがなくなる」「頭が忙しくなくなる」「忘れることはできないが、それだけにのめりこむことが無くなる」というものである。その効果は「気分が巻きこまれず無関心となり、行動や自律神経機能に影響しなくなる」という体験で、幻覚や妄想に捉われなくなっていく。精神症状学において幻覚や妄想は[[知覚]]や思考の症状に分類されるが、その病態は知覚や思考の領域に留まらず、気分が巻き込まれて無関心でいられなくなるという情動の領域、さらにそれが行為や自律神経機能に影響するという行動の領域にまで及んでおり、その点が変化していく。


 こうした治療で幻覚や妄想がいったん改善しても、抗精神病薬をその後も継続しないと、数年で60~80%の患者が再発するが、治療継続によりその再発率が減少する(維持療法)。この維持療法の継続については、初発の場合には1年、再発を繰返している場合には5年という目安が提唱されているが、個人差も大きい。
 こうした治療で幻覚や妄想がいったん改善しても、抗精神病薬をその後も継続しないと、数年で60~80%の患者が再発するが、治療継続によりその再発率が減少する([[維持療法]])。この維持療法の継続については、初発の場合には1年、再発を繰返している場合には5年という目安が提唱されているが、個人差も大きい。


 この維持療法の継続(アドヒアランス)は、統合失調症治療の課題である。アドヒアランスが低い理由には、その意義や重要性についての知識がない、精神症状のために服薬を忘れやすい、効果や副作用の個人差に合わせた調節が不十分、副作用のために服薬を望まない、妊娠・出産・授乳への影響の不安、服薬中止から病状悪化までに間隔がある、服薬の効果が目に見えず実感できない、などのことがある。
 この維持療法の継続(アドヒアランス)は、統合失調症治療の課題である。アドヒアランスが低い理由には、その意義や重要性についての知識がない、精神症状のために服薬を忘れやすい、効果や副作用の個人差に合わせた調節が不十分、副作用のために服薬を望まない、妊娠・出産・授乳への影響の不安、服薬中止から病状悪化までに間隔がある、服薬の効果が目に見えず実感できない、などのことがある。