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==背景・歴史的推移== | ==背景・歴史的推移== | ||
[[ラット]] | [[ラット]]胎仔脳を抗原として得られた[[モノクローナル抗体]]4D7の認識する分子として見出され、SNAP(stage-specific neurite-associated proteins)と呼ばれた<ref name=ref1><pubmed>3794790</pubmed></ref>。 | ||
その後、その抗原分子はラット胎仔の脳・脊髄を用いて同定され、新たにTAG-1(transiently expressed axonal surface glycoprotein-1)と名付けられた<ref name=ref2><pubmed>3272160</pubmed></ref>。さらにラットでcDNAが単離され、遺伝子配列も明らかとなった<ref name=ref3><pubmed>2317872</pubmed></ref>。 | その後、その抗原分子はラット胎仔の脳・脊髄を用いて同定され、新たにTAG-1(transiently expressed axonal surface glycoprotein-1)と名付けられた<ref name=ref2><pubmed>3272160</pubmed></ref>。さらにラットでcDNAが単離され、遺伝子配列も明らかとなった<ref name=ref3><pubmed>2317872</pubmed></ref>。 | ||
上記とは独立した系で、[[アキソニン-1]]がニワトリで同定された<ref name=ref4><pubmed>1311675</pubmed></ref>。その後、アキソニン-1は、ラットのTAG-1およびヒトのTAX-1のニワトリホモログであることが明らかとなった<ref name=ref5><pubmed>8425542</pubmed></ref>。 | |||
遺伝子名は、現在、ホモログも含め、以下のような統一名称(CNTN2、Cntn2)となっている。 | 遺伝子名は、現在、ホモログも含め、以下のような統一名称(CNTN2、Cntn2)となっている。 | ||
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Cntn2 contactin 2 Mus musculus (house mouse): Gene ID: 21367<br> | Cntn2 contactin 2 Mus musculus (house mouse): Gene ID: 21367<br> | ||
CNTN2 contactin 2 Gallus gallus (chicken): Gene ID: 419825 <br> | CNTN2 contactin 2 Gallus gallus (chicken): Gene ID: 419825 <br> | ||
(註)TAG-1という名称は、厳密には[[げっ歯類]]における分子名であるが、実際には、ヒトやニワトリのホモログに対しても使用することが多い。最近、統一名称として「コンタクチン2」が用いられるようになってきたが、この名称はまだ馴染みが薄く、単独ではあまり使われていない。本稿では新名称を用いず、ヒトとニワトリの記述ではそれぞれのホモログ名であるTAX-1とアキソニン-1を使用し、どの[[動物]]種を用いた研究成果であるか、一目で判るように工夫した。 | |||
==分子構造とサブファミリー== | ==分子構造とサブファミリー== | ||
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アミノ酸残基数は、ヒト・ラット・[[マウス]]で 1040 aa、ニワトリ で1036 aaであり、分子量約135 kDaの糖タンパク質である。 | アミノ酸残基数は、ヒト・ラット・[[マウス]]で 1040 aa、ニワトリ で1036 aaであり、分子量約135 kDaの糖タンパク質である。 | ||
神経系に発現する[[ | 神経系に発現する[[免疫グロブリンスーパーファミリー]]分子群のグループⅡ(細胞外領域に複数の免疫グロブリン様ドメインと、複数の[[フィブロネクチン]]Ⅲ様ドメインを持つ群)に属する。 | ||
さらにこのグループⅡは、いくつかのサブグループに分けられ、TAG- | さらにこのグループⅡは、いくつかのサブグループに分けられ、TAG-1はコンタクチン・サブグループに属している。コンタクチン・サブグループは6個の分子で構成され、[[コンタクチン1]]~[[コンタクチン6|6]]という新しい名称で呼ばれている。TAG-1の新名称はコンタクチン2である。 | ||
TAG- | TAG-1も含めたコンタクチン・サブグループの6個の分子は,いずれも細胞外領域に6個の免疫グロブリン様ドメインと4個のフィブロネクチンⅢ様ドメインを持ち、[[グリコシルホスファチジルイノシトール]](GPI)によって膜に結合し、[[細胞膜]]表面に存在する(図1)。なお、TAG-1には[[分泌]]型も存在し、ラット胎仔脳から大量の可溶性TAG-1が検出されている<ref name=ref3 />。 | ||
===立体構造=== | ===立体構造=== | ||
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[http://mouse.brain-map.org/experiment/show?id=73497519 P56] | [http://mouse.brain-map.org/experiment/show?id=73497519 P56] | ||
=== | ===胎生期・生後発達期=== | ||
特定の神経細胞に発現する。特に伸長中の[[軸索]] | 特定の神経細胞に発現する。特に伸長中の[[軸索]]表面に一過性に発現する例が多く、胎生期の[[脊髄]][[運動ニューロン]]や脊髄交連性[[介在ニューロン]]の軸索表面に一過性に発現する<ref name=ref1 />。胎生期のげっ歯類の神経系では、[[脊髄神経節]]細胞(DRG)の[[細胞体]]と軸索、[[外側嗅索]]、[[前交連]]、[[脳梁]]、[[小脳]][[分子層]]などに発現がみられる<ref name=ref1 />、<ref name=ref8><pubmed>8089271</pubmed></ref>。また、生後発達期の小脳では、外顆粒細胞層内側の小脳[[顆粒細胞]]に一過性に発現がみられる<ref name=ref3 />。さらに、アキソニン-1は、[[ニワトリ]]胚の[[網膜]][[視蓋]]投射系にも発現している<ref name=ref9><pubmed>8852376</pubmed></ref> <ref name=ref10><pubmed>8742305</pubmed></ref>。 | ||
=== | ===成体=== | ||
げっ歯類の成体脳で、小脳顆粒細胞、[[嗅球]] | げっ歯類の成体脳で、小脳顆粒細胞、[[嗅球]][[僧帽細胞]]、[[海馬]][[CA1]]と[[CA3]]の[[錐体細胞]]に発現している<ref name=ref11><pubmed>8586965</pubmed></ref> <ref name=ref12><pubmed>9543336</pubmed></ref>。また、中枢・末梢神経系の[[有髄神経線維]]に存在する[[傍パラノード]]にも発現がみられる<ref name=ref13><pubmed>11943804</pubmed></ref>。 | ||
==生理機能== | ==生理機能== | ||
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[[image:Masuda-TAG-1 Fig.4-New.jpg|thumb|270px|'''図4.'''<br>Nature Reviews Neuroscience 4, p970 Fig.2の改変につき、編集部に作り直し依頼]] | [[image:Masuda-TAG-1 Fig.4-New.jpg|thumb|270px|'''図4.'''<br>Nature Reviews Neuroscience 4, p970 Fig.2の改変につき、編集部に作り直し依頼]] | ||
===結合タンパク質=== | ===結合タンパク質=== | ||
TAG-1同士<ref name=ref14><pubmed>7512353</pubmed></ref>、アキソニン-1同士<ref name=ref15><pubmed>8344273</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>9852159</pubmed></ref>のホモフィリックな結合が知られている。また、TAX- | TAG-1同士<ref name=ref14><pubmed>7512353</pubmed></ref>、アキソニン-1同士<ref name=ref15><pubmed>8344273</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>9852159</pubmed></ref>のホモフィリックな結合が知られている。また、TAX-1と免疫グロブリンスーパーファミリー分子[[L1]]の結合<ref name=ref17><pubmed>12139915</pubmed></ref>、および[[アキソニン-1]]と[[NgCAM]](L1のニワトリホモログ)との結合<ref name=ref16 /> <ref name=ref18><pubmed>1720120</pubmed></ref> <ref name=ref19><pubmed>8978825</pubmed></ref>が報告されている。さらに、TAX-1が免疫グロブリンスーパーファミリー分子F3(コンタクチン1)およびNrCAMと結合することや<ref name=ref17 />、アキソニン-1がNrCAMと結合すること<ref name=ref20><pubmed>7490283</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>10811834</pubmed></ref>もわかっている。 | ||
その他に、アキソニン- | その他に、アキソニン-1は、免疫グロブリンスーパーファミリー分子の[[NCAM]]、[[コンドロイチン硫酸プロテオグリカン]]の[[ニューロカン]]・[[フォスファカン]]、細胞外マトリックスの構成タンパク質である[[テネイシンC]]とも結合することが知られている<ref name=ref22><pubmed>8663515</pubmed></ref>。また、TAG-1/TAX-1は[[アミロイド前駆体タンパク質]](APP)とも結合する<ref name=ref23><pubmed>18278038</pubmed></ref>。 | ||
===胎生期の神経系における機能=== | ===胎生期の神経系における機能=== | ||
脊髄の交連性介在ニューロンの軸索は、脊髄[[底板]]より分泌される[[ネトリン-1]]や[[ソニックヘッジホッグ]]といった[[軸索誘引因子]]に誘導され、脊髄の腹側正中部にある底板に向かい、その後、底板を通過して対側へと投射する<ref name=ref24><pubmed>21538161</pubmed></ref>。 | |||
げっ歯類の胎仔では、[[Mbh1]]タンパク質が、脊髄背側細胞でのTAG-1遺伝子の発現を間接的に誘導し、その結果、この細胞は交連性ニューロンに[[分化]]する<ref name=ref25><pubmed>12657654</pubmed></ref>。その後、このニューロンの軸索は、底板に向かう際、その表面にTAG-1を強く発現する。ところが、底板を越えるとTAG-1の発現は無くなり、代わりにL1が発現するようになる(図3)<ref name=ref2 />。 | |||
ニワトリ胚の脊髄交連性ニューロンの軸索は、底板通過後も変わらずアキソニン-1とNgCAMを発現しており、その発現様式はげっ歯類とやや異なっている(図3)。アキソニン-1は交連性ニューロン軸索の神経束形成とガイダンスに関与しているが、伸長には関与していない<ref name=ref21 /> <ref name=ref26><pubmed>7541632</pubmed></ref>。また、交連性ニューロンの軸索が底板を通過するためには、この軸索表面のアキソニン- | ニワトリ胚の脊髄交連性ニューロンの軸索は、底板通過後も変わらずアキソニン-1とNgCAMを発現しており、その発現様式はげっ歯類とやや異なっている(図3)。アキソニン-1は交連性ニューロン軸索の神経束形成とガイダンスに関与しているが、伸長には関与していない<ref name=ref21 /> <ref name=ref26><pubmed>7541632</pubmed></ref>。また、交連性ニューロンの軸索が底板を通過するためには、この軸索表面のアキソニン-1と底板細胞表面の[[NrCAM]]との相互作用が必要である(図3)<ref name=ref21 /> <ref name=ref27><pubmed>9052792</pubmed></ref> <ref name=ref28><pubmed>10328925</pubmed></ref>。 | ||
胎生期の後根神経節軸索の表面に発現するTAG-1/アキソニン-1は、後根神経節軸索の伸長<ref name=ref3 /> <ref name=ref29><pubmed>1991792</pubmed></ref>、線維束形成<ref name=ref29 /> <ref name=ref30><pubmed>10926753</pubmed></ref>、ガイダンス<ref name=ref30 /> <ref name=ref31><pubmed>11430805</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>12591248</pubmed></ref> <ref name=ref33><pubmed>15019939</pubmed></ref> <ref name=ref34><pubmed>18550718</pubmed></ref>のいずれにも関与することが知られている。 | |||
後根神経節軸索の伸長は、基質上のTAG-1と軸索上のTAG-1のホモフィリックな結合によってではなく、L1/NgCAM、[[β1インテグリン]]とTAG-1のヘテロフィリックな結合によってもたらされる<ref name=ref14 /> <ref name=ref15 /> <ref name=ref18 />。 | |||
脊髄内侵入後の後根神経節軸索(求心性線維)のガイダンスには、軸索表面に発現するアキソニン-1と、脊髄に発現する他の免疫グロブリンスーパーファミリー分子(NgCAM、NrCAM、[[F11]])との接触を介した相互作用が必要である<ref name=ref31 />。一方、後根神経節軸索表面のTAG-1/アキソニン-1は、脊索や脊髄腹側部から出る拡散性の[[軸索ガイド因子]]の受容に関与する<ref name=ref30 /> <ref name=ref32 /> <ref name=ref33 /> <ref name=ref34 />。さらに、[[軸索反発因子]][[セマフォリン3A]]の受容体複合体(L1/[[ニューロピリン-1]])の[[エンドサイトーシス]]を制御することで、TAG-1は[[セマフォリン]][[3a|3A]]に対する後根神経節軸索の反応性も調節している<ref name=ref34 /> <ref name=ref35><pubmed>22836270</pubmed></ref>。 | |||
胎生期のマウス[[大脳皮質]] | 胎生期のマウス[[大脳皮質]]では、成熟したニューロンの軸索([[パイオニア軸索]])と未熟なニューロンとの間の相互作用を仲介しており、未熟なニューロンの軸索形成に重要な役割を果たしている<ref name=ref36><pubmed>24559674</pubmed></ref>。 | ||
TAG-1は、さまざまな神経細胞の移動にも重要な役割を果たしている。胎生期のマウス大脳皮質では、[[神経幹細胞]]は細長い形態をとっているが、TAG-1を欠失させるとその形態は短くなり、核の移動ができなくなる<ref name=ref37><pubmed>24056697</pubmed></ref>。その結果として、大脳皮質の層形成に異常が生じることが報告されている<ref name=ref37 />。また、TAG-1欠損マウス胎仔を用いた解析から、マウス胎仔の延髄尾側部では、表層移動する細胞がTAG-1欠損で移動中に[[細胞死]] | TAG-1は、さまざまな神経細胞の移動にも重要な役割を果たしている。胎生期のマウス大脳皮質では、[[神経幹細胞]]は細長い形態をとっているが、TAG-1を欠失させるとその形態は短くなり、核の移動ができなくなる<ref name=ref37><pubmed>24056697</pubmed></ref>。その結果として、大脳皮質の層形成に異常が生じることが報告されている<ref name=ref37 />。また、TAG-1欠損マウス胎仔を用いた解析から、マウス胎仔の延髄尾側部では、表層移動する細胞がTAG-1欠損で移動中に[[細胞死]]を起こし、[[外側網様核]]が小さくなることが明らかとなった<ref name=ref38><pubmed>16225856</pubmed></ref>。一方で、[[基底核原基]]から大脳皮質に移動する[[抑制性神経細胞]]の移動には、TAG-1は関与していないことが示されている<ref name=ref38 />。 | ||
胎生期のマウス小脳では、TAG-1は小脳顆粒細胞の前駆細胞表面に発現しており、同細胞の未熟な分化を妨げる働きをしている<ref name=ref39><pubmed>21205796</pubmed></ref>。さらに、アキソニン-1は、ニワトリ小脳顆粒細胞の平行線維のガイダンスに必要であるが、伸長には必要ないことが示されている<ref name=ref40><pubmed>18346270</pubmed></ref>。 | 胎生期のマウス小脳では、TAG-1は小脳顆粒細胞の前駆細胞表面に発現しており、同細胞の未熟な分化を妨げる働きをしている<ref name=ref39><pubmed>21205796</pubmed></ref>。さらに、アキソニン-1は、ニワトリ小脳顆粒細胞の平行線維のガイダンスに必要であるが、伸長には必要ないことが示されている<ref name=ref40><pubmed>18346270</pubmed></ref>。 | ||
===成体での神経系における機能=== | ===成体での神経系における機能=== | ||
TAG- | TAG-1は軸索と[[ミエリン]]の両方に発現しており、傍パラノードの軸索側では、[[Caspr2]]とシス結合してヘテロダイマーとなり、ミエリン側のTAG-1とともに複合体を形成している(図4)<ref name=ref13 /> <ref name=ref41><pubmed>10624965</pubmed></ref> <ref name=ref42><pubmed>12963709</pubmed></ref> <ref name=ref43><pubmed>12975355</pubmed></ref>。この複合体は傍パラノードでの[[K+チャネル|K<sup>+</sup>チャネル]]の集積に必要であり<ref name=ref42 /> <ref name=ref43 />、TAG-1は[[有髄神経線維]]の形成と維持に重要な役割を担っている。なお、傍パラノード以外に、[[シナプス]]でもTAG-1はCaspr2と共局在している<ref name=ref44><pubmed>18179895</pubmed></ref>。 | ||
[[アミロイド前駆体タンパク質]][[APP]]と相互作用することで,マウスの[[神経新生]]を抑制することが知られている<ref name=ref23 />。 | |||
===シグナル伝達系 | ===シグナル伝達系=== | ||
膜貫通領域を持たないTAG-1であるが、いくつかの細胞内シグナル伝達系との関連が明らかとなっている。胎生期のマウス大脳皮質ニューロンを用いた解析から、TAG-1は[[Src]] | 膜貫通領域を持たないTAG-1であるが、いくつかの細胞内シグナル伝達系との関連が明らかとなっている。胎生期のマウス大脳皮質ニューロンを用いた解析から、TAG-1は[[Src]]ファミリーの[[Lyn]]を介して、ニューロンの極性化を制御していることがわかっている<ref name=ref36 />。同じく胎生期のラット小脳顆粒細胞でも、TAG-1のシグナルはLynを介して細胞内に伝達していることがわかっている<ref name=ref45><pubmed>10944523</pubmed></ref>。 | ||
一方で、胎生期のニワトリ後根神経節では、アキソニン-1のシグナルは、SrcファミリーのFynを介して細胞内に伝達するとの報告もある<ref name=ref46><pubmed>8858178</pubmed></ref>。 | |||
==遺伝子変異== | ==遺伝子変異== | ||
===遺伝子改変マウス=== | ===遺伝子改変マウス=== | ||
*2001年に発表されたTAG- | *2001年に発表されたTAG-1欠損[[マウス]](C57BL/6)<br> 日本の研究グループが作製したマウスで、TAG-1遺伝子の第2〜5エクソンを欠失させている<ref name=ref47><pubmed>11178983</pubmed></ref>。野生型と比較して、外観および脳組織の構築に大きな異常はみられなかったが、海馬において[[アデノシン受容体]]が増加しており、[[けいれん]]発作を起こしやすいなど、神経系に機能的な異常がみられた<ref name=ref47 />。<br> また、[[坐骨神経]]線維において、K<sup>+</sup>チャネルおよびCaspr2の発現量が減少しており、行動実験の結果から[[記憶]]と[[学習]]に障害があることが判明した<ref name=ref48><pubmed>18760366</pubmed></ref>。さらに、[[網膜]][[神経節細胞]]の軸索では、ミエリンの形成不全もみられている<ref name=ref49><pubmed>18650339</pubmed></ref>。加えて、嗅球においては僧帽細胞が減少しており、嗅覚行動に異常がみられることが明らかとなった<ref name=ref50><pubmed>26525675</pubmed></ref>。 | ||
*2003年に発表されたTAG-1欠損マウス(C57BL/6J)<br> 英国の研究グループが作製したマウスで、TAG-1遺伝子の第2〜6エクソンを欠失させている<ref name=ref42 /> | *2003年に発表されたTAG-1欠損マウス(C57BL/6J)<br> 英国の研究グループが作製したマウスで、TAG-1遺伝子の第2〜6エクソンを欠失させている<ref name=ref42 />。[[wikipedia:ja:メンデルの法則|メンデルの法則]]通りの頻度で産まれ、見た目は野生型と変わらない。中枢神経系の組織解析では、日本のグループのマウス同様、形態的な異常はみられなかった<ref name=ref42 />。野生型と比較して、代謝機能が低いとの報告がある<ref name=ref51><pubmed>22752552</pubmed></ref>。 | ||
===遺伝子変異と神経疾患=== | ===遺伝子変異と神経疾患=== | ||
TAX-1は第1[[染色体]](1q32)にマッピングされている<ref name=ref52><pubmed>8242070</pubmed></ref>。 | TAX-1は第1[[染色体]](1q32)にマッピングされている<ref name=ref52><pubmed>8242070</pubmed></ref>。 | ||
末梢神経の[[wikipedia:ja:自己免疫疾患|自己免疫疾患]]である[[慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー]](CIDP)患者の遺伝子を用いたSNP 解析から、TAX-1遺伝子がCIDPの難治性・治療抵抗性に影響を与える遺伝子であることが判明した<ref name=ref53><pubmed>19776380</pubmed></ref> <ref name=ref54><pubmed>21696500</pubmed></ref>。 | |||
中枢神経の自己免疫疾患である[[多発性硬化症]]の患者において、TAX-1は自己抗体の標的タンパク質の1つであることが明らかとなった<ref name=ref55><pubmed>19416878</pubmed></ref> | 中枢神経の自己免疫疾患である[[多発性硬化症]]の患者において、TAX-1は自己抗体の標的タンパク質の1つであることが明らかとなった<ref name=ref55><pubmed>19416878</pubmed></ref>。また、[[皮質性振戦]]・[[てんかん]]の原因遺伝子との報告もある<ref name=ref56><pubmed>23518707</pubmed></ref>。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== |