「メチル化CpG結合タンパク質2」の版間の差分

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== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
 MECP2遺伝子の変異はレット症候群を、MECP2遺伝子の重複はMECP2重複症候群を引き起こす。さらに、MECP2の変異は種々の精神・神経疾患患者に認められ、広範な疾患の病態に寄与する。
 MECP2遺伝子の変異はレット症候群を、MECP2遺伝子の重複はMECP2重複症候群を引き起こす。さらに、MECP2の変異は種々の精神・神経疾患患者に認められ、広範な疾患の病態に寄与する。
 これらの疾患に関してはマウスモデルのほか、[[霊長類]]モデルも作製されており<ref name=Chen2017><pubmed>28525759</pubmed></ref><ref name=Cai2020><pubmed>32269107</pubmed></ref>、今後は霊長類モデルを用いた研究によりMECP2機能異常に起因するヒト疾患病態のさらなる理解や治療法開発が期待される。


=== レット症候群 ===
=== レット症候群 ===
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 実際のレット症候群患者にみられる高頻度にみられるC末端欠失型ナンセンス変異体を模倣したMeCP2<sup>R168X/y</sup>マウス、MeCP2<sup>R255X/y</sup>マウス、MeCP2<sup>308/y</sup>マウスは、運動機能低下、低活動、社会行動低下、不安様行動などのレット症候群患者でみられる多くの表現型を示す<ref name=Wegener2014><pubmed>25541993</pubmed></ref><ref name=Pitcher2015><pubmed>25634563</pubmed></ref><ref name=Shahbazian2002><pubmed>12160743</pubmed></ref>。点変異型ミスセンス変異を模倣したモデルマウスも作製されており部分的なレット症候群表現型を示す(<ref name=Goffin2011><pubmed>22119903</pubmed></ref>。興味深いことに、Mecp2のN末端とC末端を欠失したMBDとNIDを含む短いMeCP2(正常タンパク質のおよそ半分の長さ)を発現するマウスはほぼ正常に近い表現型を示し、Mecp2欠損マウスにこの短いMeCP2を導入することにより表現型の改善がみられることも報告されている<ref name=Tillotson2017><pubmed>29019980</pubmed></ref>。
 実際のレット症候群患者にみられる高頻度にみられるC末端欠失型ナンセンス変異体を模倣したMeCP2<sup>R168X/y</sup>マウス、MeCP2<sup>R255X/y</sup>マウス、MeCP2<sup>308/y</sup>マウスは、運動機能低下、低活動、社会行動低下、不安様行動などのレット症候群患者でみられる多くの表現型を示す<ref name=Wegener2014><pubmed>25541993</pubmed></ref><ref name=Pitcher2015><pubmed>25634563</pubmed></ref><ref name=Shahbazian2002><pubmed>12160743</pubmed></ref>。点変異型ミスセンス変異を模倣したモデルマウスも作製されており部分的なレット症候群表現型を示す(<ref name=Goffin2011><pubmed>22119903</pubmed></ref>。興味深いことに、Mecp2のN末端とC末端を欠失したMBDとNIDを含む短いMeCP2(正常タンパク質のおよそ半分の長さ)を発現するマウスはほぼ正常に近い表現型を示し、Mecp2欠損マウスにこの短いMeCP2を導入することにより表現型の改善がみられることも報告されている<ref name=Tillotson2017><pubmed>29019980</pubmed></ref>。
 またレット症候群やMECP2重複症候群の[[霊長類]]モデルが作製されており<ref name=Chen2017><pubmed>28525759</pubmed></ref><ref name=Cai2020><pubmed>32269107</pubmed></ref>、今後は霊長類モデルを用いた研究によりMECP2機能異常に起因するヒト疾患病態のさらなる理解や治療法開発が期待される。


=== MECP2重複症候群 ===
=== MECP2重複症候群 ===