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<font size="+1">原 聡史、[http://researchmap.jp/read0210129 白崎 竜一]</font><br> | <font size="+1">原 聡史、[http://researchmap.jp/read0210129 白崎 竜一]</font><br> | ||
''大阪大学大学院生命機能研究科''<br> | ''大阪大学大学院生命機能研究科''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月17日 原稿完成日:2016年7月24日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [[脳神経]]科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター [[脳神経]]科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br> | ||
</div> | </div> | ||
英語名:floor | 英語名:floor plate 英略語:FP 独:Bodenplatte 仏:plaque du plancher | ||
{{box|text= | {{box|text= 底板とは脊髄尾部から吻側の[[中脳]]にかけて、神経管の腹側正中部に形成される[[グリア細胞]]から成る組織である。[[脊椎動物]]の発生期において、中枢神経系のパターン形成に関わる[[分泌]]因子や接着因子を発現することで、脊髄の[[運動ニューロン]]に代表される神経管腹側で生まれる神経細胞の[[分化]]誘導、底板で正中交差を形成する交連ニューロンの[[軸索]]ガイダンス、さらには[[小脳]]前核神経細胞などの底板付近での細胞移動に重要な役割を果たしている。}} | ||
底板とは脊髄尾部から吻側の[[中脳]]にかけて、神経管の腹側正中部に形成される[[グリア細胞]]から成る組織である。[[脊椎動物]]の発生期において、中枢神経系のパターン形成に関わる[[分泌]]因子や接着因子を発現することで、脊髄の[[運動ニューロン]]に代表される神経管腹側で生まれる神経細胞の[[分化]]誘導、底板で正中交差を形成する交連ニューロンの[[軸索]]ガイダンス、さらには[[小脳]]前核神経細胞などの底板付近での細胞移動に重要な役割を果たしている。 | |||
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[[ファイル:Gray642.png|サムネイル|右|'''図. 底板(floor plate)'''<br>発生期ヒト脊髄の断面を示す。Grayによる。]] | |||
==発生== | ==発生== | ||
底板は神経系の発生初期に、[[神経管]]の腹側正中部に形成される[[グリア細胞]]由来の組織である<ref name=ref1><pubmed>15738958</pubmed></ref>。神経生物学の黎明期から、[[wikipedia:BF Kingsbury|Kingsbury]]らによって底板は神経系の発生分化に重要な役割を果たしている可能性が指摘されてきた<ref name=ref2>'''Kingsbury BF.'''<br>The developmental significance of the floor-plate of the brain and spinal cord.<br>''J. Comp. Neurol''.: 1930, 50(1);177-207. </ref>。 | 底板は神経系の発生初期に、[[神経管]]の腹側正中部に形成される[[グリア細胞]]由来の組織である<ref name=ref1><pubmed>15738958</pubmed></ref>。神経生物学の黎明期から、[[wikipedia:BF Kingsbury|Kingsbury]]らによって底板は神経系の発生分化に重要な役割を果たしている可能性が指摘されてきた<ref name=ref2>'''Kingsbury BF.'''<br>The developmental significance of the floor-plate of the brain and spinal cord.<br>''J. Comp. Neurol''.: 1930, 50(1);177-207. </ref>。 | ||
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=====セマフォリン===== | =====セマフォリン===== | ||
[[セマフォリン3]]クラスの[[Sema3B]]はスリットと同様に底板から分泌されており、正中交差後の脊髄交連ニューロンの軸索に対して反発作用を及ぼすことで、底板への再侵入(再交差)を防いでいると考えられている<ref name=ref32 />。またこの時、同じく底板から分泌されている[[GDNF]]が、交連ニューロンに発現している[[ | [[セマフォリン3]]クラスの[[Sema3B]]はスリットと同様に底板から分泌されており、正中交差後の脊髄交連ニューロンの軸索に対して反発作用を及ぼすことで、底板への再侵入(再交差)を防いでいると考えられている<ref name=ref32 />。またこの時、同じく底板から分泌されている[[グリア細胞株由来神経栄養因子]] ([[glial cell line derived neurotrophic factor]], [[GDNF]])が、交連ニューロンに発現している[[プレキシン-A1]]のカルパインによる分解作用を抑制することで、正中交差後の軸索膜上でのプレキシン-A1のタンパク質発現を安定化させていることが報告された<ref name=ref49><pubmed>22998873</pubmed></ref>。これにより、底板由来のSema3Bが[[ニューロピリン-2]]とプレキシン-A1の受容体複合体を介して、正中交差後の軸索に対して反発作用を及ぼしていると考えられている。 | ||
====接着性因子==== | ====接着性因子==== | ||