「神経型PASドメインタンパク質」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
120行目: 120行目:
 ニューロンが活動すると迅速に発現が誘導され、その後、抑制性シナプスの形成や機能に関わる遺伝子群([[glutamate decarboxylase 1]]/[[glutamate decarboxylase 2|2]] ([[GAD1]])/[[GAD2|2]]), [[ソマトスタチン]] ([[SST]])、[[神経栄養因子]]([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])、[[イオンチャネル]]、その他の転写因子など、多岐にわたる標的遺伝子の発現を協調的に制御する<ref name=Lin2008><pubmed>18815592</pubmed></ref><ref name=Bloodgood2013><pubmed>24201284</pubmed></ref><ref name=Pollina2023><pubmed>36792830</pubmed></ref><ref name=Spiegel2014 />(Lin et al., 2008; Bloodgood et al., 2013; Spiegel et al., 2014; Pollina et al. 2023)。これにより、神経回路の活動レベルに応じた適応的な変化を引き起こす('''図3、図4''')。
 ニューロンが活動すると迅速に発現が誘導され、その後、抑制性シナプスの形成や機能に関わる遺伝子群([[glutamate decarboxylase 1]]/[[glutamate decarboxylase 2|2]] ([[GAD1]])/[[GAD2|2]]), [[ソマトスタチン]] ([[SST]])、[[神経栄養因子]]([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])、[[イオンチャネル]]、その他の転写因子など、多岐にわたる標的遺伝子の発現を協調的に制御する<ref name=Lin2008><pubmed>18815592</pubmed></ref><ref name=Bloodgood2013><pubmed>24201284</pubmed></ref><ref name=Pollina2023><pubmed>36792830</pubmed></ref><ref name=Spiegel2014 />(Lin et al., 2008; Bloodgood et al., 2013; Spiegel et al., 2014; Pollina et al. 2023)。これにより、神経回路の活動レベルに応じた適応的な変化を引き起こす('''図3、図4''')。


 Fos, Npas4, Egr1などの最初期遺伝子(immediately early gene: IEG)のプロモーターでは、感覚刺激によりtopoisomerase IIβ(TOP2B)を介してDNA二本鎖切断(double-strand break: DSB)が形成される。マウス海馬ニューロンをカイニン酸で刺激した2時間後に観察されるDSB部位の大部分(69%)は、NPAS4/ARNTヘテロダイマーが最も多く結合しているNpas4遺伝子座と重なっていた<ref name=Pollina2023><pubmed>36792830</pubmed></ref>(Pollina et al. 2023)。NPAS4/ARNTとNuA4(lysine acetyltransferaseのTIP60を含む)の複合体は、神経活動により生じた二本鎖切断を、DSB修復タンパク質MRE1とRAD50をリクルートすることにより修復する。尚、Npas4プロモーターは感覚刺激により二本鎖切断を受けるが、NPAS4結合部位を含んでいるので、神経活動により誘導されたDSBをNPAS4がフィードバック制御していることになる<ref name=Delint-Ramirez2023><pubmed>37084713</pubmed></ref>。
 [[Fos]]、Npas4、[[Egr1]]などの最初期遺伝子(immediately early gene: IEG)のプロモーターでは、感覚刺激により[[topoisomerase IIβ]]([[TOP2B]])を介してDNA二本鎖切断(double-strand break: DSB)が形成される。マウス海馬ニューロンを[[カイニン酸]]で刺激した2時間後に観察されるDSB部位の大部分(69%)は、NPAS4/ARNTヘテロダイマーが最も多く結合しているNpas4遺伝子座と重なっていた<ref name=Pollina2023><pubmed>36792830</pubmed></ref>(Pollina et al. 2023)。
 
 NPAS4/ARNTと[[NuA4]]([[lysine acetyltransferase]]の[[TIP60]]を含む)の複合体は、神経活動により生じた二本鎖切断を、DSB修復タンパク質[[MRE1]]と[[RAD50]]をリクルートすることにより修復する。尚、Npas4プロモーターは感覚刺激により二本鎖切断を受けるが、NPAS4結合部位を含んでいるので、神経活動により誘導されたDSBをNPAS4がフィードバック制御していることになる<ref name=Delint-Ramirez2023><pubmed>37084713</pubmed></ref>。


==== シナプス可塑性・学習記憶 ====
==== シナプス可塑性・学習記憶 ====

ナビゲーション メニュー